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●流麗なる南方大雪&電流少女(ライトニングエレクトロ・ガール)としてのテレジア(2)

「あんたたちこれからどうするの?」



「「アキハバーラにて紳士のたしなみをしてきます」」



僕と大雪、声が揃った。


それを見てテレジア、


「エロゲ買うのね」


「何故ばれたし」


わざと大仰なふりをして大雪は言う。それだけ見ていれば、ヴィクトリア朝時代の貴族のようにも見えんことはない。絵になる。


ときに、僕ら三人をじっと見つめる視線がある。僕はそれを見つめ返したりはせんのだが、大体の視線の意味の検討はつく。


僕ら三人は、こうしてよく駄弁りあう仲だ。友達というもの。


で、イケメンで熱意にあふれ、紳士的な大雪と、美少女の学年一の才媛テレジアの組み合わせは、映える。いうまでもないですね。


僕はそれに比べたら平凡もいいとこなので、まあ僕のような人間がひとりいれば、マッチ箱効果とでもいおうか、この二人の超凡さが際立って見えるのだろう。


そういうわけで、我ら三人は、集まって話をしてると、その場に居合わせた人間からひそひそ声を立てられることになるのだ。


こういう経験はなかなか僕の平凡たる人生においては覚えがなかったことなので、ある種のロールプレイ的には面白い……面もある。こればっかりだったら嫌気もさすが。


そんなことをかつてこの二人に言ったら、どうやら僕もある種の変人として扱われているらしく、僕のマッチ箱仮説はあえなく崩壊した。


ふうん、どうせオタクとかムッツリメガネとか、そんな手合いか、と思っていたら、なんかいろいろな通り名が出来ていたらしい。ホントにこの現実にあるんだ、通り名。二つ名。ラノベの中だけだと思ってたよ。


「狂気の変態」

「知に狂ったケモノ」

「精神解体屠殺場」

「グラース家の再来」

「ネクロノミコン職人」


なんか皆楽しんでつけたね、この名前群。


こころある人は、いじめではないか、と僕に言ってくれたが、僕は「名声より悪名こそ世に轟ろけれ」と、詩を読むかのように、僕の座右の銘を言ったら、もうなーんもいわんくなった。


まあ、そういうわけで、僕は有名人らしい。とはいうもののたかが大学なんぞの狭いコミュニティで囁かれるような噂など知れたもの、こんなんにマジになってるようじゃ就職できないぜ、みたいな感じでいたら(実際そのように言った)、余計に広まった。何故だ。


そんなわけで、僕、大雪、テレジアは、「なんかすごい連中」として、妙に別格的扱いを受けている。


誤解してほしくないのは、僕はともかく、大雪やテレジアは、各々ちゃんと人づき合いをしているということだ。あ、いや、大雪は確かに紳士的にあたりに接するのだが、テレジアはどうかな……怪しくなってきた。


「ときに君友達いるのかい」


僕はテレジアに聞いた。


「うわ、お前、きっついこと聞くね」


大雪は呆れた。


「な、なにをいうのかしらねこのメガネ! 私にかかれば友達の百人くらい、すぐにおにぎりを献上してくれるわ!」


なんてわけのわからない言葉を吐いて(多分テンパっているのだろう)、ぷんすかしておられる。


転じて、


「まあそれなりに付き合いはあるわよ。社交が上手くなければ世渡りは出来ず、世渡りが出来なければ出世は出来ないしね」


「わーお打算的」


「自分がそうありたい人生のため、コミュ力をアップさせておくことの何が悪いのかしら?」


「超正論なんだけど、なんかやっぱ君キャラ通りだね」


「ブーメランって知ってる?」


「……そうか、そうきたか」


まあ、そうである。


僕ほどその手のやさしさに欠けている人間はほかにいない。


「大体どうして友達とか言い出したんだ?」


大雪がきく。


「いやあんまり意味はなくて……」


「そんな十代の重大な問題を軽々しく言わないで!」


「……あんまうまくないね、その駄洒落」


点数としては六十点くらいだろうか。


「十代はガラスの少年時代なのよーっ!」


「付けたしは基本的にくどい類のものだけど、その必死さがちょっとおもろい。で、どしたの。なんで君、そんなに食いついてくるの」


まあ、大体想像つくけど。


大雪も、


「それ以上いうてあげなさんな」


と僕に耳打ちする。


要するにさびしがり屋なんだな……。


ただまあ、こういう感じで「優等生の女王」をやってると、普通にしてたらツーカーな友達は出来にくい、というのは、他でもない僕が知っている。


けど、「寂しくない?」とかきいたら、絶対烈火のごとく怒りだすのがこういうひとだし、僕自身もその手の言い方がひじょーに嫌いなので。


ま、テレジアはちょい悩んでいるようだけど、それから、このご時世、コミュ障非リア充は生きる価値なし、みたいに言われているようだけど、僕からしてみたら、これそんなに悩むことかな……と思う。


むしろ、ここまで追い込む世間の方が、若干病気だと思う。


自由に生きたらいいじゃん。


……ということを、かいつまんでテレジアに言ってみた。そしたら、


「普通はそこまで開き直れないものよ」


「開きなおっているわけではない。素直になっとるだけ」


「それが普通じゃないのよ」


「じゃ逆に聞くけど、普通じゃないということにとらわれすぎるのは、幸せなことなのだろうか?」


「……」


「僕は僕だ」


それを聞いていた大雪、ふと考え込むようなそぶりを見せている。


「大筋においてはお前の言うとおりと思うんだがな……」


「でも見過ごせないポイントがある、と」


「何回も言われただろうけど、『お前ひとりで生きてるわけじゃない』って」


「それはよくわかっているよ」


「でも『ひとりにならざるを得なかった』ひとの悲しみってのはどうなんだ? 俺、そこ気になっちゃうのよ。ていうか放っておけんのよ、そういう人」


「何? 大雪、私を憐れんで付き合ってたわけ?」


「違う違う。おまえさんはきちんと自立してるが、世の女の子たちには、自分がぼっちであることで精神的に木枯らしやせ細りになり、どんどん『世界にひとりぼっち』感覚を育んでいくのがいるのよ。あるものはメンヘラになり、あるものはしっと団になる」


「男は?」


「男もだけど、まあこれは偏見かもしれんが、経験上女の方がサバイバル感は強いかな。で、俺はそういう人をどうにかしたいと思ってる。偽善だと思うか?」


僕は言う。


「えらい人は言いました。しない善よりする偽善、と。まあそれが僕は偽善だとは思わんけど。実際に救われている人間がいるわけだしね……そこまでの致命的フェータルな人種を僕は指したわけじゃないさ」


「あいやわかってる。ただ、俺の立場として、いちおう、な」


「こいつがモテるわけよねー。祐、あんたも見習いなさい」


「えー」


「ちょっとあんた!」


「さすが外道メガネ!」


テレジアは憤り、大雪は笑っている。


そんな感じなのが、僕ら「友達」の、ごくありふれた日常だ。……やっぱ理屈っぽい?

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