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『古狸の荒れ寺と子狸のプレスマン』

作者: 成城速記部
掲載日:2026/02/12

 ひどく荒廃して、住職もいない寺があった。一人の旅の僧が、この寺の近くの農家に泊めてもらって、たまたま寺のうわさを聞いたところ、新しい住職が来ても、皆一夜のうちに行方不明になってしまうのだという。旅の僧はこれを聞いて、はて不思議なこともあるものだ。ここは拙僧が行って、化け物でもいたら退治してやろうと思って、その日は寝た。

 翌日、旅の僧が、その荒れ寺へ行ってみると、本堂に一人のじいさまが寝ていた。旅の僧は、じいさまに声をかけたが一向に目を覚まさない。宿に戻ってしばらくしてまた来てみたが、まだ寝ている。次の日も同じで、三日目にようやく目を覚ました。じいさまが言うには、じいさまの姿は仮のもので、本当は百年も生きた古狸だという。来る住職来る住職を食らうこと七人、近くを通る者をたぶらかすことは数知れずであったが、もう歳をとったので、お前に姿を見られてしまった。これからお前におもしろいものを見せてやるから、それを見たらおとなしく帰れ。見ている間、念仏を唱えてはならんぞ、と言って、とんぼを切ったかと思うと、あたりが急にまぶしくなって、阿弥陀様やら、如来様やら、えーと、まあ、そういう方々がぞろぞろとあらわれて、神々しいばかりであった。いや、仏々しい、かもしれない。旅の僧は、ありがたくてたまらず、思わず念仏を唱えてしまった。すると、今まで見えていたものは全て消えて、あたりはもとの荒れ寺に戻ってしまった。

 すると、荒れ寺の天井から、ぽたり、と、しずくが落ちてくる。はてと見上げると、あっという間に大雨となり、大雨が海となって、白い幟を立てた何艘もの舟と、赤い幟を立てた何艘もの舟との合戦となった。さすがに設定がおかしいので、旅の僧は、なるほどこれは古狸のしわざかと思って、印を結んで九字を切ると、雨も海も舟も消えて、天井から古狸が落ちてきた。古狸は、打ち所が悪かったものか、絶命してしまい、その死体から、数え切れないほどの子狸がわき出たかと思うと、子狸は皆プレスマンになってしまった。

 旅の僧は、この荒れ寺にとどまって、いたんだところを直し、というか、ほとんど新しく建て直し、村人から大層感謝されたという。そのいわくから、この寺は、プレス院と呼ばれていたというが、どこの寺のことか、今となってはわからない。



教訓:子狸だったプレスマンは、宝箱に入れられていたが、何代も後の住職が見たところ、空箱になっていたという。

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