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裸の王様  作者: 蛇蝎
8/8

終わりに

 ここまで読み進めてくださった方には、もうお分かりだろう。


 小生が「裸の王様」を書いた理由は、

 誰かを引きずり下ろすためではない。

 ましてや、優越感に浸るためでもない。


 刺すためだ。


 だがそれは、殺すための毒ではない。

 眠りを破るための毒である。


 裸の王様は、愚かだから裸なのではない。

 王様は多くの場合、とても努力している。

 書き、考え、悩んできたからこそ、評価が欲しい。

 だからこそ、称賛が沁みる。


 問題は、その称賛が

 「問い」を駆逐してしまった時だ。


 疑問を向ける者は空気を壊す存在になり、

 分からないと言う者は敵になり、

 合わないと感じた読者は排除される。


 そうして残るのは、

 理解者しかいない世界だ。


 だが、それは本当に理解なのだろうか。


 迎合ではないのか。

 沈黙ではないのか。

 数字と礼儀と空気の集合体ではないのか。


 裸の王様は、

 「裸だ」と言われないことで安心する。

 だが同時に、

 二度と服を縫い直せなくなる。


 小生が最も恐れているのは、そこだ。


 創作は、本来、孤独な行為だ。

 分かられない時間の方が、圧倒的に長い。

 否定されることも、合わないと言われることもある。

 それを引き受けて、それでも書く。


 それが、創作だ。


 だから小生は、

 称賛だけの王国を「優しい世界」とは呼ばない。

 そこは安全かもしれないが、堕落の園だ。


 蛇蝎は、死を招く毒を持つ。

 嫌われもする。


 だが毒とは、

 良薬にも劇薬にも化ける。


 厚い鎧で身を守る者も、

 毒の塗られた矢じりに掠れば命を落とす。

 一方で、蛇毒由来の薬が人を救うこともある。


 「裸だ」と言う言葉は、残酷な猛毒だ。

 だが時に、それは

 唯一の誠実さでもある。


 もちろん、暴言は違う。

 人格攻撃は論外だ。

 だが、問いを問いとして差し出すこと、

 疑問を疑問として述べること、

 合わなかったと正直に言うこと。


 それらまで封じた瞬間、

 創作は信仰になる。


 信者しか残らない王国に、

 未来はない。


 小生は、王様を引きずり下ろしたいのではない。

 服を縫う場所へ連れ戻したいだけだ。


 そして、これは他人事ではない。


 この文章を読んで、

 胸が痛んだなら。

 反発を覚えたなら。


 それは、あなたが考える側だからだ。


 蛇蝎は刺す。

 だが、刺された場所から血が流れるなら、

 そこは、まだ生きている。


 裸の王様でいるか。

 服を縫う人間に戻るか。


 選ぶのは、

 いつだって、書いているあなた自身だ。


 ――以上をもって、

 蛇蝎の「裸の王様」を終える。


 炎上するなら、それでいい。

 沈黙されるなら、それもまた答えだ。


 それはつまり、所詮は井戸の中の王様だった、というだけの話である。


 今日も蛇蝎は、

 静かに毒針と牙を研いでいる。


 次に、刺すべき言葉のために。

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