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裸の王様  作者: 蛇蝎
5/8

少年の末路

 

 現代のなろう界隈の王様が裸だと気付くことは、難しくない。


 本当に難しいのは、

 それを口に出すことだ。



 「裸だ」と言った瞬間、

 その者は、物語から追放されてしまうからだ。



 王国の異物になる。



 空気を壊した者。

 流れを止めた者。

 場を白けさせた者。


 もし声を上げた少年が同じなろう作家であれば、評価は一瞬で反転する。



 まず貼られるのは、レッテルだ。

 何度も言うようだが、

 嫉妬・アンチ・逆張り・売名・性格が悪い・空気が読めない。


 その内容が正しいかどうかは、

 ほとんど検討されない。


 なぜなら、

 検討すること自体が「王様が裸かもしれない」という可能性を

 一度は受け入れる行為だからだ。




 だから人は、

 言葉の中身ではなく、

 言った人間の人格を殴る。


 「あの人は前から攻撃的だった」

 「どうせ自分の作品は評価されていない」

 「有名になれなかった僻みだ」


 人格を腐らせれば、

 言葉を聞かなくて済む。


 とても合理的だ。


* * *


 次に起きるのは、

 沈黙の圧力だ。


 誰も表立って反論しない。

 誰も明確に擁護しない。


 ただ、距離を取る。


 フォローが外れる。

 RTが止まる。

 感想が来なくなる。


 まるで、

 そこに居なかったかのように。


 これは処刑ではない。

 もっと残酷な、

 社会的不可視化だ。



 そして、

 ここが最も皮肉な点だが――


 「裸だ」と言った者は、

 勇者にはならない。


 童話の少年のように、

 称賛されることはない。


 なぜなら、

 現代には「無垢な子供」という

 免罪符が存在しないからだ。


 全員が大人で、

 立場があり、

 利害を持っている。


 だからこそ、言った者は吐いた言葉に責任を持たねばならない。




 「それを言って、何が得なの?」

 「誰かを貶したかっただけでは?」

 「建設的じゃない」


 この言葉は便利だ。


 裸だと指摘すること自体を、

 無意味な行為に変換できる。


 だが、

 問い返したい。


 建設とは、誰のための建設なのか?


 王様のためか?

 群衆の安心のためか?

 空気の維持のためか?




 「王さまは裸だ! 王さまは裸だよ!」

 言った者は孤立するだけ。


 そしてある者は、

 二度と感想を書かなくなる。


 ある者は、

 当たり障りのない言葉だけを使うようになる。


 ある者は、

 界隈そのものから去る。


 王国は元通り、称賛だけの声になる。



* * *




 ここで、忘れてはならないことがある。


 「裸だ」と言った者は、

 王国を壊したかったわけではない。


 むしろ逆だ。


 服を着てほしかった。


 ちゃんとした言葉で、

 ちゃんとした評価で、

 ちゃんとした読書の上で。


 だがその願いは、

 最も誤解されやすい。



 裸の王様の国では、

 真実は危険物だ。


 扱いを誤れば、

 自分が燃える。


 だから多くの者は、

 最初から口を閉じる。


 実に賢明だ。



 ――だが。


 その沈黙の上に立つ王国は、

 いつまで保つのだろうか。




 次に語るべきは、

 もっと厄介な存在だ。


 王様でも、

 群衆でも、

 告発者でもない。


 「裸だと、気付いている王様自身」


 彼は、

 本当に何も分かっていないのか。


 それとも――

 分かっていて、黙っているのか。


 次章では、

 その内側に踏み込むことにしよう。

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