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そんな感じでのんき旅。
基本的には相変わらず、足の向くままの行き当たりばったり。
タリシュネイア王国から始まった俺たちの旅路。
リヴァイス大陸の盟主エルサニア王国。
芸術が華盛りのエルシニア王国。
商業だけではなく多種多様な方面での発展っぷりを誇るリグラルト王国。
それらをそれなりに波瀾万丈しながら旅してきて、
そして今は、大陸北方の魔法のワンダーランド、アレノマ王国。
この広大なアレノマ王国内に点在する魔導国家群を、
いつものノリでのんびり訪ね歩く予定だったのですが、
最初に立ち寄ったニーケの街で早速いろいろありまして、
慌しく出立し、今は街道をあてどなく歩いている次第。
ってことで、次の行き先を決めねばならぬわけで。
「地図の上では、ここから一番近いのはベルナエリの町、でしょうか」
「人口が魔導国に集中する傾向にあり道程の補給地点に乏しいアレノマ王国で、ほぼ中央に位置するベルナエリは各魔導国を結ぶ中継地として重宝されている町と聞いております」
「そこを拠点として魔導国巡りをするのが、アレノマを旅する者たちの一般的なスタイルだそうですよ」
なるほど、アレノマ周遊の拠点に最適な町なのですね。
それでは、目指せベルナエリってことで。
「余裕があったら、ベルナエリの北にあるアルビ村にも寄ってほしいな」
「知り合いの召喚者アマツさんがこの世界に降り立ったのが、アルビ村のすぐ側にある"北の魔境"と呼ばれている深い森」
「特に用事とかがあるわけじゃないけど、せっかく近くまで来たことだし、立ち寄ってみるのも良いかも」
なるほど、了解です。
モルガナさんの"導き"ではなく、あくまでリクエストってことなら、
変なイベントに巻き込まれることもないでしょうし。
それで、アマツさんって、どんな方なんです?
「アマツさんは……明るくて人懐っこいイケメンお兄さんタイプ、かな」
「エルサニア勇者系とは違うルートで召喚されて、一緒にこの世界に来たイオタさんとご結婚」
「旅で知り合った冒険者ギルド職員のナナミリスさんとご結婚」
「某国から監視員として派遣されていたメリシェラさんとご結婚」
「"北の魔境"で知り合った、竜のレミュさんとご結婚」
「ダンジョン探索で知り合った、精霊のヴェルモさんともご結婚」
えーと……もしかしてアマツさんって、噂以上のジゴロ系な召喚者さん?
「いや、ご本人は"ヒモ系召喚者"って自称しているけど」
「まあ、ご家族全員凄く幸せそうではあったし、決して悪い人ではないよ」
家族円満であるなら、仔細も多妻も全然問題無し、と。
そもそも問題があるような人なら、モルガナさんの友人には成り得ませんよね。
って、あれ?
奥さまのレミュさんが、アレノマの"北の魔境"ご出身の竜……
「正確には出身というわけではなく、人間界での居場所があそこだったそうだけど」
「そういえば、シジマさんのフィアンセのアネッサさんも竜だったね」
「もしかしたら、ふたりは知り合いかも」
いや、フィアンセではなく、ソウルフレンド的な……
とにかく、一度アネッサさんに連絡を取って詳しい話しを聞いた方が良いかも。
聞くところによると竜さん界隈って、かなりのしがらみ社会のようでしたし、
うかつな行動でおふたりに迷惑を掛けることだけは避けねば。
「アネッサさんの現住所、アネスの町だよね」
「私の『転送』で連れていく?」
どうしよ、お申し出はありがたいのですが、
一度でもサイノさんの『転送』に頼っちゃうと、
歯止めが効かなくなりそうで……
「それがシジマさん流の旅へのこだわり、かな」
いえいえ、そんな大層なもんじゃなくて、
例えば、誰かがピンチで可能な限り急いで行かなきゃならんとか、
どうしても外せない急なおめでたイベントにお呼ばれされたとか、
そういう状況でなら躊躇せずに『転送』での移動をお願いするのですが……
『そういう難しいことは、ベルナエリに行ってから考える!』