えんぴつを削る
なろうラジオ大賞4参加作品です。
「2Bのえんぴつと筆が有ったら、貸してくれない」
隣の文学部の部長、水橋 薫が私の所の絵画部に訪ねてきた。
「いいわよ。はい」
水橋 薫は気になる存在だ。隣なんだから、気楽に出入りしたいと思っているのだが、部員の東大寺南大門の金剛力士像に似た岩渕 清美や、ウマズラハギとあだ名がある沼田 恵美のブスの巣窟と言われているメンバーのガードが固く、交流したい思いはままならない。
文学と絵画なのだから、相性がいいはずだ。もっと、知りたい。もっと、話がしたい。
もっと、お茶したい。
「ありがとう」
思いがけず、向こうから来た。チャンス到来。
「何を描くの、見学していい?」
「うん、構わないよ」
水橋さん、何を描くのだろう。わくわくしながら隣へ移動。突き刺さるような視線が気になるが、水橋さんの絵画のほうがはるかに気になる。
水橋さん紙を敷いて、ていねいにえんぴつを削りだした。
木の部分が削られ、ポロポロと床にこぼれる。出たシンをていねいに削る。
また、木の部分を削り、シンを削る。
水橋さん神経質なのか、それにしては木の削りカスをポロポロと・・・・。ズボラなのかな、ていねいなのかなぁ・・・・。
一向に、絵を描く気配がないのが気になる。
どうやら、えんぴつ削りは終わったようだ。
と、水橋さんは紙を二つ折りにして移動。付いて行くと、ドアの前。
水橋さんは、ドアのカギ穴に二つ折りしたえんぴつのシンの粉を筆で押し込んでいた。
「これで、滑らかになる。なんか、シブくてさあ、困っていたんだ。さあ、これでスムーズになるぞ」
「・・・・・」
絵を描くとかじゃ、無かったんだ。
ヘンに期待したのが、肩透かしをくらった感じだ。
カギ穴などに、えんぴつのシンの粉をかけるとスムーズになります。
油類は良くありません。ベタベタするし、乾くとねばりつく感じとなります。
柔らかいえんぴつのシンの粉、黒鉛がいいです。
本編は『3るの怪』スピンオフ作品です。