勇者である友と勇者扱いの俺
「ヨシオ! 死ぬな! ヨシオ!」
「……アキラ……、耳元でうるせーよ」
ベッドの中で目が覚めた。小ぶりの部屋で、ベッドが2つ置いてあり、片方は使われていない。
誰かが運んでくれたのだろう。
運ばれた先が牢屋の中とかじゃなくて良かった。
直接的では無いため実感が無いが、俺が先に襲われたという事実があったとしても、男一人を殺しているからな。
「良かった、ヨシオ、生きてた!
お前がいなくなったら俺はどうしたらいいんだよ。
俺のせいで異世界に巻き込んだのに、お前の両親に申し訳立たねえよ」
「大丈夫、俺はもう死なねーから。
むしろ今回のことで、俺はアキラの残機が10しかないことに不安を感じているよ」
「残機って何のことだよ。
まあ良いや、ヨシオ、お前お手柄だったらしいな!」
「お手柄? それこそ何のことだ」
「魔人だよ、魔人! 俺らの敵で魔王のしもべ!
お前が倒した相手は王都に潜入していた魔人だったんだよ。
昨日来たばかりの勇者が、魔人を見つけ出し倒したって街中で噂になってるぞ!
俺が魔王軍へ勇者の力を見せつけようと計画立ててたのに、ヨシオに先を取られちゃったな」
「魔人、魔王軍。……そうだ!
俺が勇者と思われていて、その魔人とやらの男に殺されたんだよ」
「俺と間違われたのか?
……マジかよ、それこそスマン。迷惑かけたな」
「気にするな、俺とお前の仲だろ」
「わりい。
後、現場に居た人へ聞いてみたんだが、魔剣に串刺しされたけど、炎の魔法でぶっ倒したらしいな。日ノ神様が降臨したとかそんな噂もあるぞ。
物凄い大魔法だったらしいじゃねえか。
魔力0なのにどうやったんだよ。
チートか? チートスキルに目覚めたのか?」
「チートスキルなんて無いさ。
あの時は敵の自爆みたいなもんだよ。
その魔人も勇者を殺すつもりで本気だったんだ。
だけど、魔法が暴走して炎が魔族自体を取り込んだんだ。あっけなく自滅したみたい」
耐性で倒したって言うと俺ですら意味がわからない。
状況だけ伝えてみると、本当ぽく聞こえるから、今後は同じように説明していこう。
「なんだ、そういうことか。
刺されて生き残れただけでも幸運なのに、本当にラッキーだったんだな。
いや、マジ生きてて良かった……」
「アキラ、泣くなよ……」
「わりいわりい、んじゃ城にヨシオが起きた事を報告しに行くから抜けるわ。
ヨシオはまだ寝ておけよ!」
コンソールのことは言っても良かったけどまだ内緒にしておいた。
アキラという人間を16年間知っているので、あいつにならコンソールの話をしても問題はない確証はある。ゲームにも詳しいこともあるし。
ただもう少しだけ、自分の中でコンソールの力を整理をしてから伝える言葉としたかった。
俺が魔人に襲われた件に関しては、兵隊さんや城の人には説明無しに寝ちまったんだよな。
ただその後、時間が経ってもこの件に対して事情聴取が行われなかった。説明しないのもどうだとおもったので、兵士を捕まえて、アキラに説明したように敵の魔法が暴走した話をしておいたのだが。
「なるほど! 流石、勇者様だ!
何も武器がなくとも、敵の魔法を利用して勝利を掴むとは恐れ入ります!」
「いや、俺は勇者じゃないんだ」
「ご冗談を。勇者様が先日この国へ勇者召喚で参られたのは、兵のみんなは全員知ってますぞ!」
「それは確かにそうなんだけど、称号が……」
「では、今の話を広めて来るのが私の使命です!
失礼します!」
「ちょっ、ま……って、異世界人は速すぎる」
俺の制止も聞かず、兵士は去っていった。
これは話に尾ひれが付いて大袈裟になりそうだな。
俺は部屋に戻って暫くすると医者が様子を見に来た。
その時に剣で刺された傷を見てもらったが、回復魔法をかけたこともあり、どこにも傷口は見当たらなかった。
結局倒れた理由として、医者が医療鑑定魔法というのを既に俺にかけていたようで、原因としては貧血らしい。良く食べて良く寝るようにと指導される。
魔人が持っていた魔剣は証拠品として押収したようだ。あれが体に刺さっていた身としては、見なくて済むから良いか。
医者が部屋から出ていったので、寝っ転がりながらコンソールを開く。
レベルアップのお知らせ(New!)
1->37
お、おう。魔族の男を殺したからか。
なんか、たくさん上がったな……。
これ事後連絡だよな。
レベルが上がっただろう瞬間を想定すると、まだ倒れる前のはずだ。レベルアップのエフェクトやサウンドでもあれば分りやすいのに。
さて、レベルを上げることで何か変わっているはずだが、さっぱりわからんし、アキラが暇な時にでも確認してみよう。
もう一つ、レベルアップよりも気になってるロードの状況を見たい。ロード画面を開いてくれ。
【ロードする】
0009:目覚めた後
0010:医者の診察後
0007が既になく、その後オートセーブされたはずである0008も消えていた。、なるほどな。戻れるのは直近だけか。
ただ、もう一度0007に戻って魔人とのバトルを再開したいかと聞かれても絶対拒否するけどな。
0008のセーブデータは何だったのかは気になるところだけど、おそらくは魔族の男を倒した直後とかだろうか。
その後はすぐ寝たわけだし。
まさか、寝ることでこれまでオートセーブしていたのが消えるのか?
これは明日の朝にでも確認してみなければ。
最後に耐性の確認だ。
状況から耐性を100%に設定変更したことで、攻撃的な状況から耐えることができる。
炎熱だったら、燃えることもなく、熱くもなくなる。
刺突だったら指すような攻撃に対して痛みから耐える力だと俺は判断したが……。
もしかして、刺される前なら刺されるという事象に耐える効果とかがあったりして……。
いやー、無いよな。それって、耐性というより絶対防御だし。
そうそう、魔剣が体内に刺さりっぱなしだったときも、残機がゴリゴリ減っていたから絶対防御じゃないよな!
で、耐性を32767にした場合の考察だが、攻撃を反射してるとしか思えないんだよね。これは恐ろしいな。
試しに刺突耐性もMAX値にしておこうか。
急に刺されたとしても、ボヨンと反射したら笑っちゃうかもしれないけど。
物理現象に対しての反射って、実際はどうなるかは想像に及ばないな。
コンソールを解除すると、時が動き出す。
ずっと考え事をしていたが、ここまで0秒だ。
もしかして、コンソールを開いている間は、ずっと思考を続けていられること自体が、既にチートなのではないかと俺は考えた。