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エンディングとコンテニュー

 コンソールが出たので思い出した。

 なんで俺はLoadを忘れていたんだろう。

 迷子になった時点でLoadすべきだった。

 本当のバカは殺されるまで分からないってやつか。

 コンソールが開いたことで俺の意識は戻っている。


 あまり解説したくないのだが、今目の前に自分の足が見える。

 謎の男が言っていた「首を落とした」ってのを理解したくはないのだが、こういうことだよな。


 俺はいま生首ってことだ。


 って、自分の死因なのに、冷静すぎるだろ。

 パニックになるどころか、クリアな気分だ。


 試しにコンソールを解除しようとしてみたが無理だった。

 この状況は既にエンディングを迎えてる。露骨なバッドエンドで、俺が死んでいる事実が変わるわけじゃないからか。

 コンソールにこの場をなんとかする設定はないか問いかけてみた。

 黒い画面に次の文字が浮かび上がる。


 [StatusChange]

 LP(0x7EF01801):0 (1-65535)


 0の数字がチカチカしている。

 イマイチ意味がわからないな、コンソールが日本語化してくれるといいのに。

 そう思うと文字がすーっと別の文字に変わる。


 【ステータス設定変更】

 残機:0 (1〜65535)


 結果を見てむせた。(実際は時が止まっているので気持ちだけ)

 なにこれ、残機って俺ってゲームキャラなの?

 いや待てよ、思い出せ。

 そうだ、LPだ。

 城で解析魔法の中にこんな項目あったぞ。

 アキラは10を超えてた。確か俺は1だった。

 1だった残機が0になってゲームオーバー。

 そっかー、勇者って命が複数あったりするのか。

 さてと、残機を増やしてみるか。

 とりあえずゲームを意識して残機を99にしてみた。これ以上なく命のカンストだ。

 あれ、設定上は6万まで命があるのか?

 そんなにあっても意味ないだろ。

 よし、残機も増やしたし、コンテニューだ。


 そう思いながら俺はコンソールを解除した。

 

「なに! 俺は確実に首を落としたはずだぞ!」


 はい、綺麗に落とされましたよ。


「俺の腕が鈍ったとは思えん。次は心の臓を貫く!」


 そう宣言した直後、俺は男の姿を見失った。いや、既に目の前にいる。瞬時に俺の眼前に移動したんだ。身体能力の差が有りすぎて感知出来ないんだ。


「うぐっ!」


 熱い! 痛い! 焼けるように痛い!

 男が持っていた剣が俺の体の中にねじ込まれていた。あれ程長い剣先の部分が全て俺に差し込まれていた。


「確実に葬る!

 魔術! フレイムピラー」


 刺された痛さもあり、男が発した言葉の意味がわからなかった。

 理解するために思考を使う時間すら俺には与えられなかった。

 突然、俺の全身が炎に包まれたからだ。

 喉が焼けているからか、叫び声も出てこなかった。死ぬ。


「なぜ、これで死なないのだ。しぶとい奴め。勇者を甘く見ていたな。

 このままワシの限界を超えて最大限に火力を上げつづける!」


 男の目が真っ赤に光り輝き、炎の勢いが更に増した気がした。

 元々人が耐えられる限界はとっくに超えていた。

 生と死を繰り返しながら、神経が悲鳴を上げ続けていた。

 開け! 画面開け!

 この地獄から抜け出したいとコンソールを再び開いた。

 はー、死ぬかと思ったわ。

 コンソールに表示された残機は64に減っていた。あの一瞬でもう35機も死んでるとか。

 このペースで死んでいたら、残機が99あっても足りない。

 くっそー。謎の男にやられっぱなしで悔しいけど、この状態から抜け出せる気が全くしない。

 ただ、コンソールはこの場を何とかする手として残機を増やそうって提案したんだよな。


 いや、諦めて前の時間に帰ろう。

 Load画面出して?


 【ロードする】

  0007:


 ロード先が1個しかない。

 嫌な予感しかない。

 0007ってどんな場面なんだよと考えたら、Load画面が変化する。


 【ロードする】

  0007:ヨシオの復活後


 わかりやすくなったが……。

 これは残機を増やした直後ってことだよな。

 コンテニューしたら、オートセーブが働いて過去のセーブが消えたらしい。謎の男に出会う前のセーブが欲しかった……。


 ロードすることは諦め、ふと今まで見たことのない表示を見逃していたことに気づいた。


 スキル:炎熱耐性1%を手に入れた(New!)

 スキル:刺突耐性1%を手に入れた(New!)


 そして、続けて表示されるステータス設定変更の項目に炎熱耐性と刺突耐性が追加される。


 【ステータス設定変更】

  残機:64 (1〜65535)

  炎熱耐性(%):1 (-32767〜0〜32767)

  刺突耐性(%):1 (-32767〜0〜32767)


 注目すべきは先程手に入れた炎熱耐性と刺突耐性だ。

 1%ってなんだろう。

 設定変更する方法は分かるのだが、%を増減することによる影響までコンソールは教えてくれない。

 耐性が割合分増加すると捉えていいのかな。

 マイナス耐性だと、設定した割合分だけ弱くなるってことだよな。

 100%に設定したら、完全に耐えることが出来るってことだろうか。

 俺は迷わず100%に設定変更をしようとしたが、最高値を見ると3万を超えている。

 耐性が100%を超えるってどういうこと?

 よくわからないので、刺突耐性の数値は100にし、炎熱耐性はMAX値の32767へ設定して、違いを確認することにした。

 準備オッケー、コンテニューだ!

 俺は万が一耐性が効いていない事があった場合を考え、歯を食いしばる意識をもちながらコンソールを解除した。


 あ、熱く……ないぞ!

 剣が刺さっているが全く痛くなくなった!

 炎熱耐性と刺突耐性が効いてる!

 これで動ける。逃げ出せる!


「ば、はかなあああああああ!

 ワシの魔術が逆流!

 魔力なぞ微塵も感じないのに、ワシ以上の力が流れ込む!

 お、抑えきれん!」

「え?」


 謎の男は突然全身が炎に包まれた。

 その炎は天まで届きそうな柱の様に見えた。恐ろしいほどの熱量というエネルギーの固まりが男を焼き尽くす。

 もしかして、先程まで俺が炎に包まれていたのがこの炎の柱なのか。そりゃガリガリ命削るわ。 

 呆れながら見ていたら、炎越しに男が膝を折る様子が見えた。


「この力……魔王様へ……伝えなけれ……」

 

 そのまま男は倒れこむ。

 炎の柱はエネルギーを使い果たしたのか、急激にその勢いを失い消えていた。

 男は多分死んだよな。普通、命は1つなんだし……。

 例え複数残機が有ったとしても、あの炎を喰らい続けたなら無意味だろうな。


「炎が上がったのはこっちだ!

 誰かいるぞ!」

「おい! 立っているお前、何者だ!」

「倒れてるやつも調べろ!」


 兵隊がわらわらと集まってきた。

 天まで届く炎の柱だ。かなり目立ったことだろう。

 兵隊の数人はすでに剣を抜いており、俺を警戒しているように見える。

 俺は両手を上げて抵抗しないパフォーマンスだ。


「よく見ろ怪我人だありゃ。

 血だらけだし……。

 馬鹿な! 剣が刺さったままじゃねえか!」

「うげ、よく生きてるな……」

「心臓貫いてないか……?」


 言われて視線を下に回すと、剣が刺さったままだった。刺突耐性100%で痛くはないのだが、放置していい状態ではない。内蔵にどう刺さっているのかも自分ではわからない。

 もしかして、このせいで今も残機がガリガリ減ってる最中なのかもと思った。

 コンソールを開き残機を確認すると17まで減っていたので65535に設定した。これで次のエンディングには程遠くなった。

 コンソールを閉じて兵士さんにお願いする。両手は上げたままだ。


「出来れば、今すぐにでもこの剣を抜いてほしいです……」


 俺はふらふらとよろめいて倒れる。命は削るが痛くはない。ただの演出だ。

 兵隊は緊急度を分かってくれたのか、すぐ駆け付けてくれた。


「回復魔法用意しとけ、引き抜くぞ!」


 剣を抜くときに鮮血がほとばしる。

 それと同時に熱い衝撃が体を走る。


「ぐわああああ!」

「回復魔法、すぐに!」


 俺は痛さにたまらず叫ぶ。

 切れて血が出たら痛い、当たり前の事だ。

 もっと丁寧に抜けよ!

 切られる事には耐性が無いんだよ!

 それにしても、ここまででかなりの出血をしたわけで、炎に包まれ血管ごと蒸発しているはずだから、まだ俺の体にあんなに血があったということに驚く。

 切られた痛みによる麻痺なのか、血が一気に抜けたことによる貧血なのか、最後にかけてもらった回復魔法とやらの影響なのか、どれにしても判断は付かないが、急激に眠くなってきた。


 ここの片付けは任せて少し休むか……。

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