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日本への帰還とその方法

 次の日の朝、俺はアキラと朝食を取りながら、昨日の晩に考えていたことを話していた。


「俺さ、日本に帰ろうと思ってるんだよね」

「え、マジで? 俺と魔王倒す約束反故にすんの?」

「約束したのアキラだけだろ……。

 何だよ歓迎パーティでの魔王を倒す口上は、よくあんなに話を盛れるな」

「あれな、めちゃ気持ちよかったぜ。

 色んな人が俺に期待してるのが分かったわ。

 だから、一緒に魔王倒そうぜ」

「無理、俺じゃ魔王退治なんか何も役に立たねえよ。

 非力貧弱雑魚雑魚5歳児ステータス!」

「ったよ、んじゃ俺が女神様にもらったチートスキルでサクッと倒してくるから、ヨシオは城で待ってたらいいだろ?

 王様も追い出すわけでもなく来賓者扱いなんだしさ」

「このままでも寝食については困らないんだろうけどさ……。

 何かしら目標持って行動しないと腐っちまうよ」

「そっかー、でも帰る方法なくね?」

「いや、それがあるみたいなんだよ。

 昨日の勇者様歓迎パーティの後でブレイブさんに聞いてみたんだよ。

 呼べるなら実は帰せるんでしょ? って。

 そうしたら、勇者召喚の書と対となる帰還の書を使えば帰えることも可能だって」

「あっさり教えてくれるんだな。

 俺がこの話を聞いて日本に戻ったらこの国どうするつもりなんだ?」

「それが簡単な話じゃないだよ。

 2つ問題があってさ、1つはこの城に帰還の書が無いこと。

 勇者召喚の書と対になってるから、この世界に存在はしているらしいんだけど……。

 勇者召喚の書自体が創造神の信託を受けて見つかったみたいなんだよ。だから神様が再びお告げをくれない限り、俺が一人で探さないといけない。今のところヒントはなし。

 もう1つはMPの問題。

 勇者召喚の儀で使用した魔力が宮廷魔術師20人分で、帰還の書を使った儀式でも同じ量のMPがあれば出来ると推測出来るってさ。

 ちなみに俺のMP0ね。俺だけじゃ使えないし、アキラのMPでも余裕で足りないってさ」

「詰みまくってるじゃん。

 魔王を倒してからさ、帰還の書を探すのを手伝ってやるから、ヨシオは城で待っとけよ」

「お姫様じゃねーんだから。

 あ、そうか。

 魔王を倒したご褒美として、創造神様が信託とやらで帰還の書の在り処を教えてくれる可能性もあるのか」

「その女神様だよりだと、それこそ今すぐどうにかなる気がしねえぞ。

 せっかくの異世界に来たんだし、ヨシオも期間の書を探すついででこの世界を楽しめばいいんだよ。

 流石に何が起こるかわからんから無茶はするなよ」

「まあ、そうするよ。

 ああそれと帰還の書を見つけても一人じゃ帰らないよ。アキラを見ていると魔王と戦いたいみたいだしな」

「まあそうだな。むしろ俺は魔王を倒したあとも異世界に骨を埋めてもいいぐらいだぜ。

 まあ、見つけたら教えてくれてくれ!

 朝食も食ったし、俺はこれから武術訓練に行くけど、ヨシオも来るか?」

「訓練は辞めとくよ、城でもぶらついてみるわ」

「分かった、じゃあ俺は行くわ。

 ステータス低いんだし城の中で迷子になるなよ。また後でな」

「そこまで5歳児じゃねーよ!

 まあいいや、アキラも勇者1日目頑張れよ!」


 アキラは訓練だというのに楽しそうにしている。そんなアキラの誘いは断り、食事が終わったあとは給仕の人に任せて席を立つ。

 一応、城の中は自由に歩いていいみたいで、一人でぶらついていても咎められることはない。

 ただ、お付きのメイドが割り当てられているわけでもないので、どこになにがあるのかすら全く分からない。


「帰還の書と言うぐらいだし、先ずは本が集まっているらしき図書室的場所から探すか」


 定期的に巡回してる兵士に図書室の場所を聞くが、城の書物は機密のため開放していないそうだ。

 街に降りると貴族や研究者が使用する王立図書館が有るそうなので、そこに行ってみるといいと教えてもらった。


 ――


「うわ、5歳児かよ……」


 途中までは人に王立図書館までの道を聞きながら順調に歩いていたはずなのだが、全く辿り着く気がしない。

 ガチで迷ったようだ。

 しかも何だここ、昼間なのに暗いぞ。

 建物と建物の間が狭く日光が入りにくい上に、迷路のようになっていた。


 何とか抜け出そうと、路地を彷徨う。

 人が来ても良さそうなのに誰にも会わない。

 何度か適当に建物の入口の戸を叩いたが反応がないのもまた不思議だ。

 居留守使われてる?

 まさかね、本当に居ないんだろう。


「これだけ歩いてるのなら人がいるだろうに、全然居ないんだが……」

「こんにちは、何かお探しですか?」


 ひっ、と驚いて振り向く。

 何故か今まで俺が通ってて誰もいなかったはずの路地後方から声をかけられた。

 ローブの男。フードを深く被ったせいか顔が隠れている。


「ま、街の図書館に行きたくて」

「ああ、そうでしたか。

 近くですし、私が案内しましょう」

「あ、良いんですか?

 ありがとうございます」

「いえいえ……。

 では、こちらですよ」


 男はそう言うと、くるりと回り今まで通っていた路地を先導する。


「俺、そっちから来たんですよね」

「ここは迷いやすい。曲がり角の選択を間違えたのでしょう。

 ここなら5分もかからず着きますよ」

「そうでしたか、俺、遠くの国から来たばかりで、もう迷っちゃいました」

「ははは、慣れればこんなに路地でも目立つ目印だらけなんですよ」


 男は道なりに進みながら、路地ごとの目立つポイントを解説していく。

 ただ、かなりの早足だ。追いつこうとする俺は走り気味に追い付く。

 異世界人の身体能力は高すぎだ。


「ちょっと、もうちょっとゆっくり行きましょう」

「ふむ、選ばれし勇者だと聞いていたがこんなものか」

「え? 勇者?」

「黒髪黒眼、勇者の特徴、情報通り。

 城で勇者召喚の儀式が行われたのは知っているぞ」

「お前、何者なんだ?」

「さあ? 何者でもないよ」


 ローブの男はいつの間にか武器を構えていた。

 鉄の棒?

 いや、あれは刃物。長剣だ。

 構えていると腰の位置から頭の高さまで長さがあることが分かる。

 日本でもナイフや包丁で刺されて死ぬ事件は多いというのに、あんな長さの剣で切られたら生きていられる保証はない。


 逃げようと思って俺は背後を振り向いた。

 何故だろう。

 正面にいたはずの男が、背後を見ているはずの俺の視界の中に既にいる。

 男が持っていた剣がきらりと日光を反射する。


「何が勇者だ。

 こんなにもたやすく首が落ちたぞ」

「俺は勇者じゃな……ごぼっ……」


 最後の方が上手く喋れない。

 急に視界が下に歪む。

 落下感は無いが、視界が下に落ちていることがわかる。

 そして、頭部に強い衝撃が走ると共に意識が途切れたが、同時に黒い画面が表示された。


 コンソールには一言だけメッセージが刻まれている。


 Ending 0001

 You have been decapitated and died……


 はあ……。

 diedって、俺死んでるじゃん。

 こんなエンディングは嫌だなあ。

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