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王立図書館と神への手がかり

「ここが王立図書館だ」

「来た、とうとう来た……」


 俺はやっと王立図書館へ辿りついた。

 冒険者ギルドも大きい建物だと思ったが、ここは更に大きいな。


「では、今日はすまない。

 用事を頼まれていてな、私がヨシオ殿に付き添えるのもここまでだ」

「ライズさん、ありがとうございます!

 プレゼント選びまで付き合ってもらって助かりました!」

「なに、リズリー様に喜んでもらえるといいな。

 帰りに困った時は王城に繋いでほしいと受付に言ってくれ。

 連絡用魔道具を貸してくれるはずだ。

 帰り用の護衛騎士もすぐ来てくれる」

「分かりました。もし何か起きそうだったら城へ連絡します」

「では、後日また会おう!」

「ライズさんもお元気で」


 王立図書館の扉の前に立ったが、どう見てもこの扉はデカいし、厚さも半端ないだろ。

 扉を開くために、最低筋力値が必要とかないか?

 今の俺の筋力は確か27だ。

 この数値が一般人の筋力とどう違うのかは分からないが、試すしかない。

 ヨシオ開きます!


「……自動ドアかよ」


 しかも横開きだった。

 魔道具で動いてるだろうから原理までは分からないが、中央から左右に分かれる日本でもおなじみの自動ドアだ。

 違うのは日本みたいに扉の向こうに誰かいないかを気を付けられるようなガラス製ではないぐらい。

 とりま図書館ハイテクだな。


「こんにちは、ここへは初めてですかぁ?」

「え? あ、はい。初めてです」


 扉を抜け、中に入ると女性に話しかけられる。

 語尾が少し伸びるおっとり具合だ。

 んんん? 俺こういう場所は初めてなんですって空気感でも出していたのだろうか。


「入り口でぇ、どう開けて中には入ろうかと迷われていましたからぁ、お声をかけさせていただきましたぁ。

 わたくしは、ここで司書をさせて頂いているシスティ・ランリアイスと申しまぁす」

「システィさん、こんにちは。俺はヨシオ・エフダ。

 先程、システィさんの的確な分析通りのお上りさんでございます」

「あらまぁ、王都は初めてでしたかぁ?」

「まだこの国に来て4日目ですね。わからない場所だらけですよ。

 ところで、どうやって入り口の向こうの俺が見えたのですか?」

「はい、わたくし空間把握スキルを持っておりますのでぇ。

 扉があろうがぁ、壁があろうがぁ、隠蔽スキルを使ってようがぁ、5メートル以内の範囲でしたら何でもお見通しなのですぅ」

「おお、こんなところに先駆者が……」


 少し周りをみて誰もいないのを確認する。

 スキルの話をするので少し気になったのだ。


「俺も空間把握スキルがあるんですよ。お仲間ですね」

「あららぁ、お仲間さんでしたかぁ。これは嬉しいですねぇ。

 そうそう、ここ図書館ではかなり有用なスキルなのですよぉ」

「ほうほう、どの様にスキル運用をしていくのですか?」

「見つけたい本がぁ、すぐ見つかるのですぅ。

 範囲内の全ての本がぁ中身も含めて把握できますからねぇ、たまに頭爆発しちゃいますけどぉ」

「え、そんな使い方が?

 ははは、爆発は困りましたね」

「私もぉ、これに気づいて5年ですぅ。最初は戸惑いましたよぉ。

 あらあら? 次のお客さまがいらっしゃいましたねぇ。

 えっと……」

「おれ、ヨシオです。またお話が出来る機会があったら聞かせてください」

「そうでした、ヨシオさんでしたぁ。

 はぁい、またお話しましょう」


 俺はそのまま図書館の奥へ歩いていく。

 空間把握はおそらく俺の方のスキルが上位だとは思う。全把握だし。有効範囲は50メートルを超えて更に見えるようだし。

 ただ、人が近くに来たことを先に感知したのはシスティさんが先だった。

 普段から、お客さんが来ることを意識しているからかもしれないけど、それはそれですごい。

 常日頃と色々全把握しているのも疲れるとか、現代日本人はスルースキルがうまいとか。

 サボるとしたらそんな理由か、俺は手を抜いたままスキルを使っていた。それじゃ宝の持ち腐れだ。

 場面を考えてスキルが正しく使えるように意識していこう。


 本を読みに来たけど、先程システィさんの言ってた本のスキャンを実験してみるかな。

 また挙動不審なところを周りから見られるのは拒否させていただきたい。空間全把握スキルを全開放するイメージで距離を広げる。自分の限界での半径178メートルまで広げることが出来た。

 ん、何だこの正確な距離は。あ、思い出した。この数字は知力値だ。

 これだけの範囲に広がると、図書館はまるっと全部収まるな。

 図書館にいるのは入り口付近に4人、カウンター奥に6人、俺より奥の区画に12人、別室が12部屋あるな、そこに全部屋入れて8人。今日の利用者は俺を入れて31人か、思ったよりも少ない。


 今自分がいる場所が一番人がいないからこのままスキャンを開始しよう。

 まずは背表紙スキャン。


 じょ、情報の渦が、どんどん頭に流れてくる。

 情報に溺れる……。やめ、辞め!

 俺は咄嗟にコンソールを開いた。

 時が止まり、一時的にスキルの影響から逃れる。

 このまま生身のままでスキャンをしたら倒れてしまう。

 そりゃシスティさんも頭が爆発するよ。

 

 コンソールを開くと気分が一気にクリアになった。先程情報過多で知恵熱出ていたとは思えないほどだ。

 そもそも、ここでは時間を止めることになっているが、それでも思考が出来ている状態がおかしかった。脳で考えているのなら脳の電気信号も時間停止と共にストップしてしまい考えることも出来ないよな。

 なのでコンソールを開いてるときは肉体ではないなにか世界の理とは切り離された現象により思考していたようだ。

 頭痛に悩まされず情報を集めよう。

 まずは在庫管理システムを考える。


 【在庫管理システム】

   収納魔法0001


 この在庫システムにさっきスキャンした内容を繋げれば良いんだ。

 図書館の在庫を管理してやる!

 俺はまず図書館カテゴリーを作成する。


 【在庫管理システム】

   収納魔法0001

   王立図書館


 空間全把握スキルと映像超記憶スキルを使い自作の見取り図を作った情報を在庫管理システムに登録する。

 次は本棚ごとに入口側から順に番号を振って、サブカテゴリとして王立図書館の下のカテゴリに作りまくる。

 その後は本棚ごとにスキャンした内容を在庫管理システムに登録すれば完成だ。

 と考えてるだけで在庫管理システム自体がやりたいことを汲み取って形にしてくれる。

 ん、待て! おい、そこはまだ! いや、システムが止まらない!

 スキャンは途中で止めたし、そこまでの記憶はあるから背表紙のスキャン数を完璧に覚えているが、それ以上の情報が集まっていたので混乱する。

 こいつ……。在庫管理システムが勝手に図書館をスキャンしてやがる。

 おい、どうやってるんだ!

 と考えたら、全貌を把握した。

 俺は王立図書館というカテゴリを作ったが、図書館という閉鎖空間が1つの収納空間であるとみなされたのだ。王立図書館にある本が在庫管理システムによって俺の管理化となった。

 一冊ずつスキャンすることなく、自動で情報収集が出来るわけだよ、楽過ぎだろ。


 在庫管理システムにアクセスし図書館の中から星月神の情報を探す。

 本のタイトルをキーワード検索できるかな? ……うん、出来そうだ。

 キーワードは「星」「月」「神」で全本棚を検索。


 星が400冊、月が8000冊、神が15000冊見つかる。


 え、こんなに本があるの?

 ああ、羊皮紙の本もあるからページ数が少ないものもあるのか。

 あと絵だけで構成された本も多い。抽象的なんだよなあ、流石にここから必要なことを読み取るのは骨が折れるぞ。もう本なら何でも置いてるだけだろここの図書館。

 さっき抽出した本をベースに本内の文字列検索出来ないか? ……グレップ検索と言うのか、出来そうだぞ。

 キーワードは「星月」「星神」「月神」と、後何かキーワードは無いか……、「夜神」だ! 星や月ならそれは夜のことだ。


 来た、1200冊ほどの本が検索に引っかかった。

 あとは実際に該当する本を手にとって全部読むだけだ。

 ……って、あれ?

 検索できたってことは、このままコンソール上で読めるのでは。

 

 検索結果の1冊目を在庫管理システム上で読むと念じる。

 頭になにか入ってくるぞ!

 いや、これ頭じゃないのか。まあいいか。

 俺は映像超記憶スキルがあるので、ページをパラパラと捲りまくって全部のページを記憶してしまえば効率的だと考えていたんだ。今ならそれすらも原始的な行為に思える。

 今やっているのはテキストデータや図形のデータをどんどん頭の中にダウンロードしている感覚だ。ページの落丁も無いし何倍も早い。

 1冊目の内容だが、星月の動きの研究資料だった。天動説を中心に考えられている。

 異世界って創造神様が作ったわけだし、本当に天動説に従っていたりするのかな?

 実は宇宙の仕組みは全く同じで、宇宙を彷徨えばどこかに銀河系があって地球とも繋がっていたりもするのかな?

 帰還の書で帰られるとは言っているけど、そのうちロケットでも作って帰れたりしないだろうか。

 とりあえず、1冊目は特に必要のない情報だった。


 そうやって、1冊ずつ見ていくと歴史書には古き時代に月神という存在がいることになっていた。

 星月神と正確に記載している本も出てくるが、神の一柱としての名前だけの登場が多い。星月神が何かとか星月神の神殿が有る様な記載を期待したが特になかった。


 夜神の検索結果としては、あれは夜の神ではなく「闇神」と扱うべきだと記載されている本があった。

 その闇神とやらは世界を滅ぼし、日ノ神の選んだ勇者がそれを倒す物語として記載されている。

 これがおとぎ話なのか、事実をもとにした話なのか、実際に本を手にとっていないのもあって、いつ書かれたどんな本なのかもわからない。データ管理するとこういう弊害があるのか。

 いや、在庫管理システムに登録されたんだ。

 収納空間を利用するように手に取れるのではないか?


 コンソールを解除して、魔法のポーチから植物図鑑を取り出した時と同じ要領で先程閲覧していた闇神を記された書籍を取り出す。

 重いっ!

 縦横が1メートルをも超える大きさの本が急に現れた。

 重さも5キロ? いや10キロぐらい?

 腕の力だけでは本を落としそうになったので、バランス崩して尻もちをついてしまったが、俺の体全身を使って本が落ちないように守った。

 ふう、今度から本を取り出すときはテーブルの上でやることにしよう。

 ここの別室が余っているようだから、そこを借りてからでもいいな。

 とりあえず、近くのテーブルへ本を持っていく。


 本から年代が分かるかと思ったが、そう簡単には行かないか。

 ページは厚さを均等に保った薄い羊皮紙で丁寧に作られていた。ハードカバーもなにかの硬い板のようなものを動物の皮で覆い綺麗な状態を保っていた。

 表紙も装飾品で飾られており、豪華になっている。重いのもこういう外枠のせいもあるか。

 古そうな装丁の本ではあるが埃もなく新品のように綺麗だ。昔の本を最近転写でもして作り直したのだろうか。

 結局、本を直接見ても素人だ。年代がどうとかまではわからない。本がここまで綺麗すぎると、むしろ作られた直後のような感覚だ。


 内容を見返し、闇神が居た場所や、どう悪いことをしたのかを確認する。

 一度、闇神が居たという場所へ足を運んだ方が何か分かるだろうな。

 後は勇者がたどった道筋を覚える。この情報は後でアキラに教えてあげよう。

 絶対魔王退治に使えるはずだ。

 在庫管理システムを使い、取り出した本を元に戻す。

 これって大丈夫だよな。

 システムを通して元にあった場所へときちんと戻されているんだよな……?

 勝手に自分の収納へ入れていないかが心配で、何度も魔法のポーチを確認する俺だった。

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