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初報酬とプレゼント

 次の日の朝、アキラと朝食をとる。

 昨日、リズにサポーターになってもらったこと、初めて冒険者になった話をした。あと王族との晩餐も報告する。


「ヨシオ、ずるいよ〜!

 俺もお姫様と会いたいよ〜!

 なんで俺は呼ばれてないんだ!」

「知らん、会いたいなら王様に言ってくれ」

「王様とか恐れ多いだろ。

 俺もブレイブの旦那に頼んだらその弟子のリズ様だけでも会えるのかな?

 出来るなら、その妹さんを紹介してほしいなー」

「おい、このファッションロリコン!

 そんな危ねえやつを王様は絶対呼ばねーわ」

「冗談だよ。

 良いさ良いさ、俺には聖女ちゃんが一緒に魔王退治に来てくれるんだ。

 きっと天使のように可憐な子なんだ」

「聖女? 聖職者のお姉さんか?」

「姉か妹かは分からんが、教会に行くと会えるとか聞いたぞ。行ってみたら?」


 教会か、そういや王様から新しい教会を立ち上げろって言われてたな。

 まあ色々と星月神の情報を集めていかないとな。


「何となくだが、アキラの前に出会うと話がこじれそうだから辞めとくわ。

 ただでさえリズは、自己紹介するまで俺とアキラの区別がついてなかったし」

「その情報はいらねえ。お姫様とは完全に脈無しじゃねえか」

「まあ気さくな人だから打ち解けるのは早いと思うぞ。

 というか昨日の感想それだけ?」

「ヨシオが帰りたい帰りたい言ってる割に、異世界満喫してるよなーって思ってさ。

 レベルも俺より上だしさ。

 ただな……、背丈だけはこの勇者アキラ様を超えることはなかったようだな!」


 アキラも既にレベルアップによる身体成長の話を聞いていたか。

 うぐぐぐ……。俺もこっちに来てからレベルアップによる急成長で背が少し伸びたみたいなのだが、まだアキラとの身長差は大分ある。


「見てろよ、俺はランクE冒険者様だぞ。

 どんどんレベルを上げて、アキラを雲の上から見下ろしてやるよぉ!」

「は? こっちは天上界で待ってるわ!

 高みを目指してみろ、ヨシオぉ!」


「お前達うるさいぞ!」と食堂のおっちゃんに怒られた後、綺麗に謝罪をハモらせる俺らだった。


「「すいませーん!」」


 ――


 朝食を済ませアキラと分かれて、まずは護衛騎士をしてもらったライズさんを探す。

 昨日の薬草採取の報酬を貰うため冒険者ギルドまで一緒に行ってもらうためだ。

 どうせ城下町まで行くのなら、もう一度王立図書館を目指したいな。

 もはや迷子とは無縁になったこの俺に怖いものはない。


「今日もよろしくお願いします」

「ヨシオ殿よろしく」


 ライズさんと合流し冒険者ギルドに向う。

 リズは宮廷魔術師での作業の引き継ぎがあるらしく、終わってから会いましょうと連絡があった。

 ライズさんと一緒に冒険者ギルドでの受付処理を行う。


「はい、騎士ライズ様の証言が確認できました。

 仮決済書と引き換えに報酬の受け渡しとなります。

 モギモギ草55本、寸分違わず納品されましたので銀貨11枚を納め下さい。

 依頼達成及びランクアップおめでとうございます」


 冒険者ギルドで受付の人にお辞儀をされる。

 俺は銀貨とランクEへと記載が変わったギルドカードを受け取り冒険者ギルドを後にする。


「ふぉー、これが労働の対価か。

 俺の冒険者人生始まったな」

「おめでとう、ヨシオ殿。

 初日の依頼でランクアップだ。胸を張っていい」

「この銀貨10枚も、リズに返さないとな」

「ヨシオ殿、ただお金を渡してもリズリー様は受け取らないはずだ。

 その銀貨で何かプレゼントをしたら喜ぶであろう」

「なるほど、ライズさんありがとう!

 この後は王立図書館に行こうとしていたんどけど、何かお店があれば入ろうかな」

「よし、王立図書館までは私も付き合うぞ」


 ライズさんと、色んなお店に行き。銀貨10枚の資金内でも買えるアイテムを見繕う。


「プレゼントって、難しいっすね。

 なんだか高貴な人にあげて良いのだろうかって思ってしまうと」

「そうだな……、少し考えを変えてみるのもどうか。

 相手は第三王女であるリディアディリア・リズリー・イラデベルポート様ではなく、宮廷魔術師に所属する女性の方へ渡すつもりで考えてみると良いのではないか」

「うーん、確かに俺はリズに渡したいわけだし……。

 それならば、2軒前の店に一度戻りませんか?」

「魔道具屋か? そうだな、同行しよう」


 俺は魔道具屋に入る。

 暫く物色した後、小さな石がはめ込まれたネックレスを手に取った。


「こういう石とかが付いてる装飾品は、貴金属やアクセサリーの専門店の方が良いのかなと思ったんですよね。

 でも、何かしら魔法に役に立つのならこういうのも良いかなと思ったんです。

 デザインも俺好みで、センスが良いとおもうし」

「ヨシオ殿、その考え方はとても素晴らしいと思う。

 ただな、魔道具とは値が張るのだ」


 手に取っていたネックレスはいくらなんだろう。

 値札を探すがどこにもない。店員のお爺さんをちらっと見る。


「なんだい? 今度は買うのかい?」

「これを、買うといくらになりますか?」

「そうやのう、ほらこっち貸せや」


 店員のお爺さんが渡せと手を出すので、俺は持っていたネックレスを渡す。


「あーこりゃ、魔力が尽きかけとるな。

 お前さん新人冒険者か? 予算は?」

「銀貨10枚です……」


 魔道具は高いと聞いたので、答える声が思わず小声になる。


「かー、全く足りんわ!

 これな、フルパワー時なら金貨50枚の品やぞ。銀貨なら5000枚や。

 だがこれな、魔力がもう切れかけとるわ。それなら商品にすらならん。もう廃棄や、廃棄。

 でもワシャ金にがめついからな。

 ゴミ箱に捨てるぐらいなら銀貨10枚のほうが好きや。

 どや、今の話を聞いたら買うやろ」

「うーん、お得のような。そうでもないような」


 呪われていたりしないのなら買っても良いのかな。

 正直、何度も見ていたらこれしか無いと思うほど気に入ってはいるんだが。

 迷ってる俺にライズさんが背中を押す。


「私はお得だと思うぞ」

「どうするんや?」

「……よし、買います!」

「ああそれがええ。まいどあり!」


 おっちゃんに銀貨10枚を渡し、ネックレスを受け取る。


「デザインがどうとか言ってたな。

 その銀細工はうちの娘が若い時に作ったものや。……褒めてくれてありがとうな」

「いえいえ、こちらこそ良い買い物をさせていただきました。

 では、ありがとうございました」


 店を出て、ネックレスを眺める。

 小さな緑色の石がはめ込まれた、銀細工のネックレスだ。

 この石は翡翠だろうか。この世界での名称は分からないが。

 石の魔力がわずかだと言うが俺には良くわからない。


「ライズさんはこの石の魔力はわかります?」

「いや正直魔法には疎いのだ。そもそもこれはなんの魔道具なんだ?」

「は、確かに……」

「ヨシオ殿もわからず買ったのか。

 アキラ殿の話だと勇者は鑑定持ちらしいので、ヨシオ殿も調べていたのばかり思っていたぞ。

 渡すとしてもその前に一回は調べたほうがいい」

「そうします。

 あ、魔道具の名前なら分かりますよ」


 俺はネックレスを魔法のポーチへ収納し、コンソールを開く。


 【在庫管理システム】

   収納魔法0001

    植物図鑑 1

    ダガー  1

    干し肉  30

    水袋   3

    空の袋  3

    ギルドカード(ヨシオ) 1

    増幅のネックレス 1


 増幅のネックレス? これか。


「分かりました。これは増幅のネックレスですね」

「筋力増幅とかそんな効果か?」

「この場合は魔道具だし魔力増幅だと思いますが」

「決めつけで失敗することも多い。良くないぞ。

 これは更に詳細な鑑定がいるな」

「そうですね、アイテム詳細とか見れないかな」


 コンソールを開き、増幅のネックレスの詳細が見れないかな考えてみる。在庫管理システムがたらたらーと詳細を表示した。


 【増幅のネックレス】

  使用者はネックレスを身に付けた状態で使用する。属性へのイメージを強く持つことで親和性を上げ、様々なボーナスを得ることが可能。イメージの強さによりボーナス値も変動。


  付随するパラメータ

  使用回数:2/120(0〜65535)

  属性強化値:1〜20(固定化可能)

  推定資産価値:金5


 え、マジかよ。金貨5枚? 銀貨500枚なのを銀貨10枚に負けてくれたのかよ。この世界の人達、俺に優しすぎるだろう。

 属性強化値や固定化は想像つかないので分からないけど、良いアイテムなのかな?

 確かにあと2回で使用不可なのか。

 魔力が尽きかけてるとはいえ、本当に良く売れ残っていたもんだ……。


 ん? 使用回数の「2」の数字が点滅している、変更可能なのか?

 え?

 これはいいのか?

 所持品の設定でも俺なら自由に変えることが出来るのか?


 ここは思い切って使用回数を変更することにした。

 そういや、右のMAX値が母数の120を超えてるのがバグってるなあ。

 試しに1000とかに変更して、コンソールを閉じてみる。


 使用回数:1000/120(0〜65535)


 コンソールを解除し収納からネックレスを取り出す。

 俺自身は見た目から魔力を感じることが出来ないため、使用回数が本当に増えたのかが分からない。

 あー、やべ。魔力が溢れすぎて壊れるかもしれないとか考えてなかった!

 今見る限りは、壊れそうな気配はない。

 ふー、助かったか。


 ん? 気持ち石の艶が良くなった気がするし、銀細工部分の輝きも増した気がする。これも魔力が充填されたおかげかな。


「ヨシオ殿!

 これは私でもわかるくらいにネックレスから魔力の輝きが漏れているぞ。

 今ここで何かしたのか」

「え、ええ。

 ちょいと、ネックレスの魔力の回復を、ははは……」

「なんと、そういうことが出来るのか……?

 優れた達人は普通の道具ですら、優れた道具に変えるという。

 これが勇者の持つ力。実に素晴らしい!」


 ネックレスの設定値を変更したことがライズさんにバレてしまった。

 変に誤解しているから、勇者の力ってことで誤魔化せそうだけど。後々勇者の伝説みたいな本が出たときに、このことが記録されそうだよなあ。


 取り敢えず、銀貨10枚のネックレスに付加価値が付けられて良かった。

 リズに気に入ってもらえれば良いけど。

 ライズさんの反応を見る限りは、魔力が漏れて光りすぎるみたいだし、使用回数記載上限の120回へと設定変更し直しておいた。

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