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冒険者デビューと魔法の鞄

「ヨシオの反射ってこういうスキル効果なのね」

「そうだね、俺も手探り状態だったし、あの男にはちょっと実験させてもらった」

「受け答えに余裕があったから安心はしていたのだけど、アイツの攻撃がヨシオに当たった瞬間は直視出来なかったわよ」

「それはゴメン。説明する暇がなかったからね」

「いいわ、無事だったしね」


 俺を殴って吹っ飛んだ男は気絶しているらしく、仲間らしき人間が担いで連れて行った。

 ギルド内も暫くは静かだったが、またざわざわと煩くなる。

 こちらをチラ見する人は居るが、俺に物申したいやつもいなそうだ。

 もうそろそろギルドカードが出来てほしいなと思ったところで、受付をしてくれたマイヤさんが奥から戻ってきた。


「目を離した隙に何を暴れているんですか。

 喧嘩をしに来たのなら、作ったギルドカードも不要ですよね。このまま破棄しましょうか?

 たく、リズリー様も見ていたのなら止めてくださいよ」

「すいません、ギルドカードは必要です!」

「私も見ていただけだったのは悪かったけど、あっという間だったんだよね。

 二言三言、言葉をかわしたらドカン!

 まあ、勇者にちょっかい出したアイツが悪い」

「そうですか、ヨシオ様は本当に勇者様なんですね。

 はい、出来上がったギルドカードです。

 紛失したら罰金がありますから気を付けてくださいね」

「ありがとうございます」


 俺の名前が刻まれたギルドカードを受け取る。これで何かあったら身の証明が出来そうだ。

 マイヤさんからギルドカードの取り扱いに関する説明を受けた。無くすとどんな危険があるかとか注意点を中心に。


「……あとは、詳細なカードの内容の説明もしますか?」

「良いよ、私からヨシオには説明しておく」

「分かりました。お任せします。

 私からはここまでですね。

 それでは、ヨシオ様のご活躍をお祈りいたします」

「あ、はい。よろしくお願いします」


 マイヤさんがお辞儀をしたのでつられてお辞儀をする。


「ほら、ヨシオこっち来て。

 早速依頼を受けていこう」

「ちょっと待って、なぜ依頼を?

 俺のギルドカードを作ったら、そこで終わりなのでは?」

「何を言ってるの?

 ランクが低い人は定期的に依頼をこなさないとカードが剥奪されるんだから。

 そこは勇者とか関係ないからね!」

「それって一度冒険者になったら抜け出せなくなるじゃん。

 なんとなく騙された感じがするなあ。

 やるしか無い状況だけど、依頼におすすめはあったりする?」

「ヨシオはランクFになったばっかりでどれも簡単なことばかりよ。見れば分かるわ」


 ランクFか。リズさんはランクAだっけ。

 これってお仕事ランクの事だったのか。

 リズさんと一緒にランクFの依頼書を見る。


 【ランクF】

  ①ドブ掃除(たまにスライムが出ます)

  ②薬草採取(たまにコボルトが出ます)

  ③各種雑用(たまにピクシーが出ます)


「リズさん、このたまになんちゃらはいったいなに?」

「どれも魔物が出るのよ。町中とかでも関係なく出てくるわ。

 まあ厄介だけど、子供でも死ぬことはないから。

 全部行ってみる?」

「ええ、なんで全部?

 1個でも依頼をクリアしたら、暫くは依頼を受けなくても良さそうに聞こえたのだけど」

「ちゃんと理解してるわね。まあその通りよ」


 なぜ不満げ。


「じゃあ、私が臭いの嫌だし、②の薬草採取でどうかな」

「分かった、その依頼にするよ。

 この依頼書を受付に持っていけばいいのかな」

「そうね、後ろで見てるから頑張ってね」


 リズさん、たまに保護者みたいになるな。

 受付の人はマイヤさんではなかったが、この人も美人だな。異世界何なん?


「依頼を受け付けてほしいです」

「はい、薬草採取ですね。頑張ってください」


 ポンと受領の判子を押してくれる。

 これだけ?

 俺は依頼を受けたのでリズさんに受領印を見せる。


「リズさん、依頼受けてきたよ」

「はい、ぶ――――っ! 全然駄目で――す!」

「え、何?」

「さて、ヨシオはどんな薬草を集めるのでしょうか?」

「え? あ、そうか」


 初めて薬草採取をするのに、肝心な薬草がどんな草であるかが分からないのか。


「気が付いた?

 薬草と言ってもギルドで必要な薬草は決まってるの。種類や生息地なら受付の人に聞けば教えてもらえるからね。

 別に薬草採取ではなくても、クエストの詳細はきちんと聞くようにすること。

 今回は私が教えてあげるから、さあ行こう!」


 リズさんに連れられて城の外門をそのまま抜ける。

 異世界に来て3日目で、危険と言われている城の外の世界へ行くことになるとは。アキラもここまではまだなんじゃないか?

 城の外から見る城壁はすごく大きい。ここまでしないと魔王に攻められるからかな。まあ中に魔人はいたけど。

 あー、護衛の騎士さんもこのまま外まで付いていくのか。本当に危険もなく終われそうだな。


「依頼書はちゃんと読んだ?」

「えっと、ポーションの材料となるモギモギ草の採取。必要量は5。

 俺はモギモギ草がどんな草で、どこに生えるのか全くわからない」

「最初の判断としてはその通りね。

 では次の判断として、薬草だからそこまではかさばらないのだけど、ヨシオは手に入れた薬草をどうするつもりなの? ずっと手持ちしておくわけ?」

「え? あー? 薬草を入れておく鞄がいるのか」

「そうそう、手ぶらで冒険だなんて何も良いことないわ。

 もしもヨシオが空間属性魔法を使えるのならば、また別の意見になるけどね」


 そう言うと、リズさんは何もない空中に穴をあける。文字通り穴が開いた。


「え、穴が?」

「これが空間属性である収納魔法よ。

 魔法使いじゃなくても、頑張って覚えておきたいわね」


 リズさんは奥が見えず暗い穴に手を突っ込む。中から引きずり出す感じで小物を取り出した。


「はい、ヨシオに冒険者のデビュー祝い。

 魔法のポーチよ。

 小さいけどここに収納魔法がかけてあるわ。

 実は、私が以前作ったお古なのだけど、これが便利なんだから使ってよ」


 見た目が手のひらサイズの四角いポーチを渡される。

 リズさんの魔法がかけてあるみたいだけど、小物を素早く出し入れできるのかな? と思ったら、意外と蓋がすぐ開かない頑丈な作りになっている。


「リズさん、ありがとうございます! 大事に使いますね!」

「なんのなんの! 専任補佐官ですから!

 それと極小領域とは言え、普通のバックパックの倍の容量なら軽く入るわよ」


 胸を張るリズさん。

 バックパックの倍!?

 さっきの穴みたいなのが収納魔法だよな。


「これ、中を覗いてみてもいい?」

「良いわよ、その方が魔法の理解が深まるわよ」

 

 収納魔法を体験したいので、魔法のポーチの入り口を開けて中を覗く。暗い。


「収納魔法の中が見えるわけじゃないんだな。

 これなら持ち物検査されても引っかからないでよな」

「ヨシオ、中に手を入れてみてよ」


 恐る恐る手を突っ込んでみる。


「あ、中に何かが入ってる」

「収納空間から取り出すイメージは人それぞれだけど、基本的なのはタンスみたいにアイテムの種類ごとに引き出しを用意して開けて取り出すイメージよ」

「引き出しって難しいな……。

 何も取る動作もなくぱぱっと目的の物を出せた方が理想だけど、難しいか」

「へーその発想は良いんじゃないかな。

 上手く収納空間と魔力を繋げれば、袋の入り口を開けることもなく、取り出す動作なしに出し入れが出来るようになって時間が短縮できるようになるわ。

 ただ、ヨシオは魔力が無いから、そこまでは無理なの」


 リズさんは空中に穴を開けずに、自分の身長以上の長さがある杖をいきなり取り出して、一振りすると消してみせた。

 リズさんレベルの魔術師ならば、やろうと思ったら出来るのか。ゲームの装備変更みたいだな。


 ピロリロリン!

 

「うおっ! なんか出た?」

 

 ピロリロリンと高めの音が鳴り、視界の左下に小さなコンソールが出てきた。


「あはは、そんなに驚かないでよ」

 

 いきなり出てきた杖に俺が驚いてると思われてるな。リズさんが笑ってるのを見ると、時間は止まっていないようだ。

 俺はチラチラと左下を見る。これが通知か。


 インベントリーリンク設定機能開放のお知らせ(Νew!)


 早速コンソールを開くと、お知らせ通りの新機能の設定変更が出来るようだ。


 【インベントリーリンク設定】

 収納空間0001を在庫管理システムに登録しますか?

 ▶はい

  いいえ


 えっと、「はい」かな?

 コンソールの指示のまま登録すると、画面の表示が切り替わる。


 【在庫管理システム】

   収納魔法0001

    植物図鑑 1

    ダガー  1

    干し肉  36

    水袋   6


 なるほど、さっき収納空間とやらを覗き込んだけど見えなかった内容物が、分かるようになったのか。

 植物図鑑とか、ダガーとかポーチより確実に大きそうなんだが、収納空間の中に収まっている。

 在庫管理システムは何者? と問いかけたら在庫の管理と入出力を一括で担っているシステムらしい、これでコンソール経由ならば俺も道具が取り出せようになると認識する。


 コンソールを閉じて、植物図鑑を出す。

 出すと考えたときには、図鑑の中で調べようとしていた「モギモギ草」のページが開かれた状態で手持ちしていた。


「お、出せた!」

「え?

 まさか、ポーチの入り口を通さなくても出せるようになったの? 早すぎるわ!」

「出来ちゃったみたい」

「うーん、さっきも行ったけど本来は魔力が必要だし、魔力を繋げること自体がかなりの熟練度がいるんだけどなあ。

 どういう原理で繋がっているのかしら」

「へー、これがモギモギ草か。

 リズさん、俺のためだよね。植物図鑑を入れてくれて、ありがとうね」

「ええ、植物図鑑でしっかり勉強してね」

「あとさ、図鑑が取り出せるようになったのも、リズさんが杖の出し入れを見せてくれたおかげだよ。あれが良いヒントになったんだ」

「うー。なぜ取り出せる様になったのかは、後で調べるか。

 杖を見せたのはそんなつもりじゃなかったけど、ヨシオの役に立って良かったわ」


 なんだか納得が言ってないけど、無理矢理に納得した感じのリズさんがいる。

 俺は初めての収納魔法を堪能するため。

 中に入っているアイテムを片っ端から出したり仕舞ったりしていた。

 

 この仕組み、日本に戻っても欲しいよなあ。

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