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冒険者登録と新人いじめ

「到着したわ。ここが冒険者ギルドよ」

「結構おっきい建物なんだな」

「そうね、みんな図体がデカいし建物もそれに合わせてデカくなるのよね。

 ヨシオは何というか、ヒョロいわ。

 もっとレベルを上げた方がいいわね」


 リズさんは母親がご飯をもっと食べなさいみたいなノリで言ってくる。

 レベルを上げるとまさか身体が大きくなるのか。

 え、今レベル37だけど、以前より少し大きくなったりしているのか?

 アキラの身長を追い越してたらやばいな。と一人でニヤける。


「ほら、ぼーっとしてないで中に入ろう。

 入ったらまっすぐ受付に行くからね」

「分かった、付いていくよ」


 ギルドの中も広い。中も人で溢れている。兵隊のようにおそろいの装備に身を固めているわけではなく、各々が独自の装備に身をまとっている。派手な鎧を着ている人もいれば、闇に溶け込みそうな真っ黒い装備の人もいる。

 これが冒険者達か。

 確かに男の人も女の人もみんなデカい。


「ほら、あんまりジロジロ見ないで。

 受付はこっちよ。

 受付のお姉さんは……。ああマイヤね。ちょっと良いかしら?」

「あらAランクのリズリー様、お久しぶりです。

 はい、要件が有りましたら何なりとお申し付けください」


 え、このマイヤって受付の人、凄い美人だな。

 副業でモデルをやっていてもおかしくないぞ。

 そしてリズさんは顔が効くんだな、Aランクってのが特別な役割だったりするのかな。

 そのままリズさんに俺を紹介してもらう。


「マイヤ、この人のギルドカードを作りたいの。

 お願いできる?」

「はい、冒険者ギルドへの加入ですね。

 登録には10銀貨が必要です」


 リズさんは懐から10枚の銀貨を出す。

 は、もしかして登録する俺が出すべきだったか。


「リズさん、出してくれてありがとう」

「気にしないで。これくらいはした金だし、ヨシオが出したとしても国のお金でしょ」

「あぁ、そう言われるとそうか」

「はい、確かに10銀貨受け取りました。

 ではこの書類に記載をお願いします」


 受付のマイヤさんがそう言うと、紙ぺらを渡してくる。

 出身地、名前、年齢、レベル、ジョブ、特記すべきスキルを記載するようになっている。

 うーん、貰った紙が既に日本語翻訳されてるぞ。ここに日本語で記載しても良いのだろうかと迷いながら、出身地に「日本」、名前に「ヨシオ・エフダ」と記載する。

 正面で記載が終わるのを見ていた受付のマイヤさんは、日本と書いたのを見た後、少しだけ首をかしげるも、特に何か口出しをする様子もない。


「ヨシオ、ジョブのところは勇者よ」

「え? マジで……あ、本気で?」

「本気よ。説明が省けるって話をしたでしょ」

「そうでした。いやさ、自分から勇者だって名乗ることに抵抗があってさ」

「なんでなのよ、ヨシオはもう勇者をしているでしょ?」


 日本人感覚だからか、自ら勇者を名乗るのは子供っぽい感じがするのだが、ここは言われた通り勇者と記載する。


「リズさん、特記すべきスキルってなんだろう」

「そこは特になしでいいはずよ」

「はい、リズリーさんの仰る通りです。

 ここは皆に知って貰いたい不利なスキルがある場合だけ記載をすることになっています。例えば呪われたスキルがある場合ですね。事前に申告しておかないとパーティを組んだときに揉める事になりますから」


 迷子癖がありますとか?

 それはスキルじゃないか。

 

「んー、ヨシオは泳げる?

 例えば泳げない時とかね、かなづちスキルが付くわ。

 ただ泳げないなら訓練すれば良いけど、呪われているのなら話は別ね。そんな人と海エリアや地底湖エリアに行くと死が待っているから、事前申請しておくべきだわ」

「そもそもの呪われたスキルが解らないんだけど、まあ今はいいや、また今度教えて」

「確かにそうね。

 ヨシオは解析で不利になるようなスキルは無いことが分かっているから記載不要よ。

 たまにスキル化されていないだけの潜在スキルってのがあるけど、そういう事象自体が稀だから気にしなくていいわ」

「分かった。不利なスキルは無しで……。

 マイヤさん、書き終わりました」

「はい、エフダ様ですね。属性を記録しますので、この薄い板に血を1滴流してくださいね」

「えぇ……、血なの……?」

「そうそう、こうやってサクっとね」

「いてっ!」


 俺がもたもたしていたので、リズさんが俺の手を掴むと、どこから出したのかナイフで俺の指に切れ込みを入れる。

 1滴で良いはずなのに、金属の板にぼたぼたと血が流れた。


「リズさん、いきなりやめてくれよ」

「はいはい、すぐ終わったでしょ?

 回復魔法をかけて上げるから」


 そう言うと俺の血が出ている指をパクっと咥えると、口の中がピカーっと光って指を離してくれた。

 確かにナイフで切ったところは傷跡も無く、痛みも引いている。


「な、なんで指を咥えるのですか!」

「あはは、魔法を使う時に触れていると治りが早いのよね」

「あのーヨシオさま?

 これで手続きは終わりなので、裏のアーティファクトでギルドカードにしてきますね」

「はい、よろしくお願いいたします」


 マイヤさんはなんだか呆れた顔をしたまま裏手へと消えた。

 暫く待つしか無いかと思っていたら、いかつい男から声をかけられた。


「ようよう兄ちゃん、そんなヒョロいなりで何しに来たんだよ。村のお使いか?」


 ひょっとして、俺絡まれました?


「こんにちは、今日はギルドカードを作りに来ました」

「なんだぁその言葉使いはよぉ!

 お前みたいなヒョロいやつが冒険者だなんてな、同じように見られるのが俺はたまらなく嫌なんだよ」


 あああ、行きに言葉使いの話をしていたのに、やっちまった!

 って、また言われた。俺ってそんなにヒョロヒョロなのか。

 筋トレでもした方が良いのかなぁ。


 ――


 このやり取りを見て、リズさんが後ろから声をかけてくれる。俺はリズさんへ一言「俺に任せて」と言い、男との話に戻る。


「悪いことは言わねぇ、痛い目に会いたくなければここでギルドカードは受け取らずに回れ右してお家に帰りな!」

「悪いけど、ここでほいほいと引き下がるつもりは無い。お前こそ大人しくしておいた方が怪我しなくて済むと思うぞ」

「相手の力量も計れない馬鹿め。ならばこいつをくらいな」


 そういうと男は物凄いスピードのパンチを繰り出してくる。このスピード地球ならばボクシングのヘビー級チャンピオンが目指せるだろ。

 だが特に俺は慌てることも避けることもしない。

 レベルが37に上がったことで機動力があがった。機動力には動体視力の向上も含まれており、男のパンチの軌道が見えるようになったんだ。

 5歳児ステータスのときならば、あっけなくふっとばされていただろう。


 だが、俺に避けるという考えは無い。

 男の拳は俺の顔面へと吸い込むように突き刺さる。

 大きなパンチの衝撃音と共に、派手に壁めがけて吹っ飛んだ。

 ただ、吹っ飛んだのは、俺を攻撃した男の方だった。

 

 実はこのやり取りは初めてじゃなく何回か繰り返している。

 1回目は俺がおろおろしていたら、リズさんに助けられた。

 その上、俺が女に庇われた事自体が男の怒りの沸点に達したらしく、その後結局殴られた。

 正直、俺はひょろいし、女に助けられる様な情けないところは仕方がないのだが、最後の男に殴らせてしまったことが一番まずい行動だった。


 突属性の反射。


 反射でボヨンと跳ね返るとか、そんなギャグマンガみたいな話じゃなかった。

 俺を殴った男はロケットのように吹っ飛んだ。

 冒険者ギルドの壁を突き破って、その隣の家と、更に奥にある建物を衝撃でぶち壊す。

 男の腕は肩口から吹っ飛んでなくなり、男が吹っ飛ぶ衝撃に巻き込まれた人達は何故自分たちがそうなったかを理解する暇もなく空を飛ぶ。玉突きのように何人も重ねて弾き飛ばして、とても軽症では済まない怪我が増えていく。

 冒険者ギルドは瞬く間に地獄へと変わったのだ。


 俺は震える全身を抑えながら直近のロードへ戻る。

 冒険者ギルドで男に絡まれ、リズさんに声をかけられる直前までは前回とあまり外れないよう真似をした行動をとった。

 予め、コンソールから刺突耐性の数字を200%にまで落とし、いい感じの勢いで男をふっ飛ばした。

 今回はたまたま男に殴られた事で、刺突耐性に設定した数値の大きさが攻撃を反射する力に変わることが分かった。

 反射として認められるのは刺突耐性が200%から。その場合相手の攻撃を100%相手に向かって跳ね返しているように感じる。

 それ以上に数値を増やすと、増やした分だけの反射の力が増していく。

 耐性値を32767%で設定した時は、相手の力を326倍にして反射していることが想像できる。

 ボクサー並の500キロのパンチ力だと仮定しても反射後は163トンの重さの威力になる。

 そりゃ、ただのパンチもロケット並になるわ。


 このことで分かったけど、魔人の攻撃を反射した時も推定326倍の威力で反射していたんだ。

 そりゃ炎の柱は天まで伸びるし、魔法を使った魔人ですらぶっ倒す威力になるよ。

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