殺人事件
1か月前、殺人事件が起きた。
老婆が、何かで胸を刺されて家で倒れているのが見つかった。家からは金目のものがなくなっていた。
その事件の担当になった、警察官Aは、犯人を探すのに行き詰まっていた。犯人の凶器が見つからないのだ。これでは事件が立証できない。
Aはこれまで、しらみつぶしに辺りを捜索した。しかし凶器は出てこなかった。
今日もなんの成果もなく、トボトボ警察署に戻ると、そこで警察官Bに会った。
「どうよ、捜査の方は」Bは同期であり、仕事でどんな困難な事があっても、2人で乗り越えてきた。
「凶器も出てこなけりゃ、何も出てこない」「そうか」Bは残念そうに頷いた。
そのあと、Bと少したわいもない話をし、別れた。
去り際、Bが「そういえばA最近羽振りいいじゃねえか。外車なんか乗って、毎日外食とは。競馬でも当てたか?」
「そんな所だ」私は笑顔で返した。
去っていくBの背中を見つめ、Aはヒヤヒヤしていた。なぜなら、今Aが座っている机の中に凶器が眠っているからだ。