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ペット彼女~リアルの女に用は無い~  作者: 31
2章 ハツネの気持ち
9/12

変わる世の中

この話だけでも楽しめますが、事前に「ハルカ」を読んで下さるとより楽しめると思います。

今回はタイトルっぽい事が出来たと思います。

「そこのカッコいいお兄さん!私達と遊ばない?」


「いや、ランが居るから遠慮するわ」



「お金は持つからさ!ほら、ね?」


「遊びならアユミで間に合ってる」


用があって出掛けてみると、ペット彼女を胸ポケットや鞄に入れてる男性に女性が声をかけている「普段の光景」が広がっていた。


「世の中も変わったよね…」


「みー」


ペット彼女は日々の生活費も一人暮らしの延長レベルでしかない上、ある程度容姿を厳選可能、加えて飼い主にはべた惚れと来たもんだ。

最近では家事のお手伝いまでしてくれる個体が増えており、正に理想の存在であると言える。


だから世の中の男性は「高い金かけて女と付き合う必要無くね?」と言う結論に至ったのだ。


一方女性だが、最初はただの新種の生物が出た程度にしか思わなかった。これは男性も同じである。

だが時間が経つにつれて、男性達はどんどんペット彼女に夢中になっていき、徐々に相手にされなくなっていった。


当然だが、全ての女性が相手にされない訳ではない。ペット彼女並、もしくはそれ以上の魅力や武器を持ってる人からしたら痛くも痒くもない。


だが、それを持ってる女性が果たして世の中にどれほど居るだろうか?


その結果、結婚率は大幅に減少する反面、男性の家事のスキル等が大幅に上昇した。


となれば当然女性は焦る。良く言えば結婚相手、悪く言えば寄生先が無くなってのだ。


とは言え、男性も女性を見る目が良くなっており、適当に胸を揺らしたり触ったりしても全く靡かなくなった。


なのでこうやってナンパをして必死に接点を作ろうとしてるのだ。



でもそんな事に気を取られてる場合ではない。今日はハツネの布団をもう一度新調するからね。


「じゃあとりあえずハツネの好きな布を探しに…ハツネ?」


「みー…みー…」


ありゃ、胸ポケットの中で寝ちゃった。まあ仕方ないかな。ハツネってば、昨日からずっと楽しみにしてたからね。





回想

昨夜11時


『じゃあ寝る準備しよっか』


『みー』


布団の準備をしてるとふとハツネの布団が目に入った。

僕はそれなりに良い布団を使ってるのに、いくら快適にしたとは言え、お古のハンカチやタオルじゃ可哀想に思えてきた。


ハツネはこれで不満は無さそうだけど、飼い主としては快適な寝床を使ってほしい。


でも専用ベッドは値段がなぁ…


何か良い物は無いかなとスマホで検索…っと、これは?


『お人形布団か…』


手間はかかりそうだけど、限りなく僕と近い布団だね。

ハツネの為にも頑張ってみようかな。

となると布が必要だね…明日調達しないとかな。


『ハツネ、ハツネ』


『み?』


『ハツネの布団を新調したいからさ、布を明日買いに行こうと思うんだけど』


『みー…』


あれ?あんまり反応が良くない…


『一緒に布選びに行く?』


『み!みー!み、みー!』


さっきまでの反応とは違い、物凄い勢いで首を縦に振るハツネ。そ、そんなに嬉しかったのかな…


『み!み!みー!』


『お、落ち着いてハツネ…早く寝ないと明日大変だよ?』


『みー!み!み!』


回想終了





一時間程で疲れたのか大人しくなったけど、普段より遅くに寝たから眠かったんだろう。


それはともかく


ハツネが寝ちゃったから、布を探すのは一先ずお休み。

とりあえずハツネは鞄の中に入って貰って、目覚めるまでは適当にぶらつこうかな。


そう思っていたら、不意に肩を叩かれた。


「どう?そこのお兄さん!私達とお茶でも…」


「ちょっとあかり…いい加減に…」


確かに女性からのアプローチがかなり増えたとは言え、まさか僕に声がかけられるとは思わなかった。


誰だと思って振り向いてむると…


「え…?柊さん?」


「あ」


「あちゃー…」


声をかけてきたのは、まさかのクラスメイトの一員である柊あかりさんと氷川美里さんだった。







そのまま立ち去るのも気まずいので、一度だけ誘いに乗ることにした。

と、言うことで僕達は近くの喫茶店に来た。


「好きなの頼んで良いからさ…さ、さっきのは忘れて…」


「う、うん」


そう言って僕にメニューを手渡した。流石の柊さんでも、クラスメイトに見られるのは恥ずかしかったらしいね。


「とりあえず、まあ、見苦しいとこ見せて悪かったね」


「まあ…ちょっとビックリしたけど」


「う、うん。ごめんね。急に声かけて…」


「それにしても何でナンパなんか…」


柊さんはともかく、氷川さんまで一緒にやってるってどういう事だろう?


「決まってるじゃん!もう高校生も後半だし、私だって彼氏が欲しいからだよ!」


「私はコイツから出かけないかって誘われたから来た。まあ有り体に言えば騙されたって訳ね。あ、約束だから私のも奢ってよね」


あ、やっぱり氷川さんは被害者なんだね。


「うぅ…財布が軽くなる…」


僕はココアを、柊さんはカフェオレを頼んだのだが、氷川さんはアイスコーヒーとそこそこ高めなワッフルを頼んでいた。

氷川さんにはもっと頼め、遠慮するなと言われたけど、流石に人のお金でそこまで望む訳にはね。






注文を終えると、氷川さんと柊さんが話しかけてきた。


「前にさ、C組のお嬢様がちょっと揉めた事は知ってる?」


「断片的になら…」


確か…ペット彼女と揉めて窓から突き落とそうとしたんだっけ?

友人からもあいつには関わるなとか言われたし、僕も正直言うとあんまり好きじゃない。


でもそれが何でナンパに繋がるんだろう。


「うん。その影響もあってさ、ウチらの学校の女子に対する当たりが全体的に強くなっちゃったんだよね…」


「強く…?」


「ほら、君子危うき~って言うじゃん?ペット彼女持ちのほとんどの男子が女子を相手にしなくなったんだよ…」


良くも悪くもただのクラスメイトと、家族並に可愛がっているペット。


どちらを優先するかと言われたら、確かにペットと答えるはず。


「実際武田君だってペット彼女に暴力振るう人には自ら近付かないでしょ?それと同じ」


「…否定は出来ないかな」


ごめんね。僕も実際、ハツネを傷付けるような人には近付きたくないかな。


「まーそう言う事。女だけで寂しく高校生活を終える位なら外で接点を作ろうか、って話ね」


「結果は全滅だけどね…」


氷川さんは大したダメージは受けてないみたいだけど、柊さんはそれなりにダメージを受けていたみたい。

失礼だけど、一体何回失敗したんだろう…






頼んだ品が届いてからも、適当に雑談しながら過ごしていた。

途中で何度か氷川さんがワッフルを渡してきたけど、それは流石に断った。


「そういえばさ、武田君は彼女作ったりはしないの?」


彼女…か


ハツネと出会う前は、作りたいなと思った事は確かにあった。

でも今はハツネと一緒に居るだけで楽しいし、無理に作らなくても良いかなって思ってきた。


だから素直な気持ちを伝えた。


「んー、今はハツネと一緒に居るのが楽しいからあんまり考えてないかな。もし作るならハツネと仲良く出来る人だね」


「あー確かにペット彼女に嫉妬して、殴る蹴るの暴行をする女って増えてるしねー」


「本当にね。人のペットに手を出すとかクズの極みね。あ、一応言っておくけどさ、『私は』人のペット彼女に手を出したりしないからね」


何故かやたらと私を強調していた。


「ちょっとー!それじゃ私が出してるみたいじゃない!」


柊さんもそれは違うと即座に否定した。だが、次の氷川さんの言葉を聞いて僕は戦慄した。


「いや、前にそこそこの怪我させてたじゃない」


「まあ…確かにそうだけどさ…」


「え…」


え…?柊さんってペット彼女に暴力を振るってるの…?

僕は無意識の内に柊さんから距離を取った。


「ほらー!武田君怖がってるじゃん!どうしてくれるのさ!」


「??私は事実を言ったまでよ」


確証は持てないけど、柊さんの慌てようを見てると…

反射的にハツネの入ってる鞄をとっさに隠した。


「だ、出さないからね!C組の時みたいなクズな女じゃないからね!」


「どうだかね…」








「んー?これからどうする?まだ続けよっかなあ?」


頼んだ品を食べ終わり、これからの事の相談を始めた。


「いや…もう止めて普通に遊びに行かない?武田君もどう?」


「そうそう!折角だしさ、奢るから武田君も遊びに行かない?ボウリングとかカラオケとか!後ショッピングやゲームセンターも…」


「うーん…今日はハツネの為のお買い物でもあるから、ごめんね」


今はお昼寝してるけど、いつ目覚めるか分からない。それにハツネは女性が、それも僕と年の近い人を特に嫌ってるらしい。

柊さん達には申し訳ないが、ハツネを刺激しない為にも今回は断らせてもらった。


それにさっきの話を聞いてると、何かあった時にハツネに被害が出そうで怖いしね…。


…が、何故か柊さんは食い下がってきた。


「じゃあそのペット彼女も一緒でも良いから!どっか行こ!お願いだから私らと遊んで!」


何なんだろう。

普段から暴走する事はあったけど、何と言うか普段の暴走とは違う。


目がギラギラしてて、まるで肉食獣に睨まれてるみたいだ。心無しか鼻息も荒いし。


怖い…


「ご、ごめん!もうそろそろ行くから!ごちそうさま!」


「ま、待って!せめて連絡先…」


ここは逃げるに限る!







「…終わった、さらば私の青春…明日には私の醜態がクラス中に…」


「いや、流石に言いふらすような事はしないでしょ」


「ならネットに晒されて永遠におもちゃに…」


「一回も写真撮ってなかったよね」


「…さっきからなーんか妙に武田君の肩持つよね。なにー?好きなの?」


「………………………………いや?」


「何今の変な間」


「うっさい!もう行くよ!」


「いはいいはい!ほっへをひっはるなー!」







「はあ…はあ…何だったんだろう…」


「みー…」


ハツネは眠そうな顔をしながら、鞄からひょっこりと顔を出した。

今の衝撃で起こしちゃったみたいだね。


それにしても彼女か


「みー?」


…もし、ハツネが本当に彼女になったら


『五郎くん!私と遊んで!』


『五郎くん手作りのおにぎりおいしーよ♪』


『一緒に寝てくれる…?』


何か彼女と言うより妹みたいになりそう。


って、僕は何を考えてるんだ。ペットに欲情とかどうかしてるよね。

そもそも妹なら香澄がもう居るじゃないか。


「みーみー」


ハツネが僕の服を引っ張っている。そうだね、早く布を買いに行かないとだよね。


「じゃ、行こっか」


「み!」

いつも読んで下さる皆様に感謝です。

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