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ペット彼女~リアルの女に用は無い~  作者: 31
1章 ペット彼女のあれこれ
3/12

ミサキ

「私、お金無い人嫌いなの。将来性が無いって言うかー?まあそういう事だから」


平凡サラリーマンの本田徳郎25歳。本日数年間付き合ってた彼女にフラれました。


大事な話があると言われた時点で、こうなる事は何となく予測していた。分かってたとは言え、いざ言われると心に来る物がある。そのまま彼女は行ってしまい、一人残された俺はトボトボと家に向かった。


帰ったは良いが、特に何かする気も起きず、何となくテレビをぼんやり眺めていた。


『では最近話題となっているペット彼女についての特集です!』


「ペット彼女か…」


そう言えば同僚が飼い始めたとか言ってた気がする。手はかかるが、金をかける価値は十分にあるとかなんとか。


しかしペットか。付き合ってた頃は一度も考えた事もなかったが、こうして一人になった以上、そういうのを飼うのもありかもしれない。それに犬猫に比べて安上がりだし、財布にも優しいときた。


「一回飼ってみるか…」







日曜日、朝一で徳郎は近くのペットショップに行った。


「色んな種類が居るんだな」


ペット彼女のコーナーに行くと、多くの個体が一斉に鳴き出した。


「みゅー!みゅー!」「きゅっ!きゅっ!」「ちっ!ちー!」「ぷいー!ぷーい!」


手をパタパタ振っている個体、エヘエヘ笑ってる個体、可能な限り可愛く鳴いてる個体、近くの個体と組体操でアピールする個体と様々だ。彼女らなりの生存競争なのだろう。


そんな中、アピールに参加しないでオロオロしてる5cmすら無さそうな個体が目に入った。


「ぴー、ぴっ、ぴー」


一応短い手を振ってはいるが、どこかぎこちない。他に比べると随分大人しい個体だ。


元気な個体も悪くないが、躾の手間とかを考えたら大人しい方が後々楽かもしれない…


こいつにするか


「この子下さい」


「ぴ!?」


この個体もまさか選ばれるとは思ってなかったのか、驚いた声を上げた。


「はい!ありがとうございます!ではこちらへどうぞ」


ペット彼女について簡単な説明を受けた後、ケージに入れられたさっきの個体がやって来た。


「ではこちらになります!大事に育てて下さいね!」






基本プロフィール

身長 3.4cm

体重 0.8kg

実年齢 推定6~10歳

見た目年齢 8~10歳

性格 臆病

知能 非常に高い

運動能力 高い

鳴き声 ぴー



「ぴー…」


ケージの中から一向に出てこない。おまけに、手を近付けたりすると奥に逃げてしまう。


「警戒してんのかな…凄いなつきやすいって聞いてたんだが」


そこで説明書を読んでみる事にした。


『臆病な個体は警戒心が強いです』


『手を近付けて暫く待ちましょう。自然と打ち解けます』


手を試しに近付けてみると、案の定逃げてしまう。だが今回はそのまま放置だ。右手で携帯を弄りながら待ってみた。


「ぴー…」


10分経過、まだ警戒してる。


「ぴー…?」


20分経過、少し警戒が解けたのか、ケージからちょいちょい顔を出し始めた。


「ぴー」


30分経過、俺の手を凝視しながら、ツンツンとつついている。


「ぴっ」


40分経過、手の上に乗っかり、キョロキョロペタペタと動く。大分警戒も解けたのだろう。


「ぴー!ぴっ!ぴっ!」


60分経過、警戒心は無くなったのか、ぴーぴー鳴き始めた。構って欲しいのだろう。

ここで構うのも良いが、飼い主としの役割を果たすのが先だ。


「まずは名前…名前か…」


「ぴっ」


近くから紙とペンを取り出し、考えていた名前をいくつか書き出した。


「何個か候補があるから好きなの選べ」


命名

ミサキ

カノン

ココロ

ミドリ


これは元カノと子供を作った時にと思い、考えていた名前だ。今となってはもう必要ないが、まさかこんな形で役に立つとはな。


「ぴー…ぴ!」


選ばれたのはミサキだ。


「じゃあよろしくな。ミサキ」


「ぴ!」





PM13:00 ご飯の時間


多少の説明は受けていたが、生き物を飼う事自体が初だ。そこで先人の知恵を貰う為に、コンビニ弁当を食べながら色々と調べてみる事にした。


「結構ちゃんと整備してる人が多いんだな…」


大きめの個体なら野放しにしてたり、小型なら家を建てたりと色々工夫が見られた。中には水槽を使って飼ってるなんて物も出てきた。


「ぴー…」


そんな中、ミサキは弁当の回りをウロウロしていた。昼時だし、お腹が空いたのだろう。


「コンビニ弁当の余り物だけど食うか?」


基本雑食となってるので、弁当に入ってるブロッコリーとコーンを目の前に置いてみた。


「ぴ!ぴー」


ミサキはペコリと頭を下げるとチマチマ食べ始めた。


「ははっ。ありがとうってか?」


その後、ほとんど汚すことなく綺麗に食べきった。



PM15:00 お風呂の時間


「痛くないか?」


手で洗うと誤って潰してしまう恐れがあったから、予備で買ってあった柔らかい歯ブラシを使って洗っている。風呂にはまだ早いとは思ったが、もう外出する予定も無いから誤差みたいなもんだ。


「ぴっ♪ぴ~♪」


ミサキも気持ち良さそうで何よりだ。


「ほれ、綺麗になったぞ」


「ぴー♪」



PM16:00 日曜大工の時間


あの大きさて野放しにしておく訳にもいかないので、何か家になるものを作ってやる事にした。

ちなみにミサキはその辺に転がしといたラップの芯に乗って転がったり、穴の中に入ったりして遊んでる。何が気に入ったのか知らんが、作業中に構わなくて良いのは楽だ。


「水槽ねえ…あったかな」


残念ながら、押し入れを探してもそれらしい物は見つからなかった。

代わりと言ってはだが、ガキの時に使ってた虫籠が出てきた。


「ちと小さいけどこれで良いか」


後は…餌皿があれば十分だな。トイレはティッシュを数枚重ねた物で良いだろ。どうせ大した量も無いだろうし。


「ほれ、今日からここに入りな」


「ぴー!ぴっ!ぴー!」


壁をよじ登って虫籠の外に入れた辺り、出入りは問題無さそうだ。

何故か置いてあったティッシュを引き裂いてたが、まあティッシュ程度また入れれば良いと思い放置した。

と言うかナチュラルに壁をよじ登るな。お前はヤモリか。






あれから数日、ミサキと一緒の生活が続いた。俺が帰ったら必ずテーブルに座ってぴーぴー鳴いてくる。何と言ってるかは分からないが、お帰りなさいと言ってるのだろう。

他にも、引き裂いたティッシュで布団を作ってたり、ガチャガチャのカプセルで玉乗りしたりと、飽きる事ない日々が続いた。


だが今日は仕事が忙しく、随分と遅くなってしまった。時計の針は日付変更直前を指してした。


「ふーただいまっと」


こんな時間だし、流石にミサキも寝てるだろう思っていたら。


「ぴー!ぴっ!」


ミサキはテーブルに座って待っていたのだ。しかもそこには缶ビールにスルメイカが置いてある。ミサキが用意してくれたのだろう。


「これ、お前が?」


「ぴ!ぴーぴっ!ぴっ!ぴー!」


台所を見ると戸棚が開いていた。ここから出したのだろう。それにしても、こんな小さな体のどこにそんなパワーがあると言うのか。


「ははっ…ありがとな」


明日も早いが、折角の好意を無下には出来ない。一本だけならと思い飲む事にした。


ミサキと一緒にスルメイカを食べていると、ふと元カノの事が頭に思い浮かんだ。


「そういやあいつからはこんなの一度も無かったな…」


別に亭主関白の様な事をしたい訳じゃない。ミサキがやった酒やつまみの用意も望まない。ただ、たまにでも良いから「仕事お疲れ様」の一言だけでも良いから欲しかった。


でもいつからかLIMEは無視される事が多くなり、会うことも減った。時には金をせびる事も多くなってきた。それでも何時かはまた振り向いてくれると信じていた。


浅はかだった。


結局俺の事はただの金づるにしか見てなかったのだ。本人に情けない。そう思うと、俺の眼から水が流れてきた。


「ぴー」


「お、ありがとな」


俺のネガティブな感情を読み取ったのかは知らんが、ミサキはスルメを手渡してくれた。たったこれだけなのに俺は堪らなく嬉しかった。


結局二人でスルメイカを全部食べきり、ビールも調子に乗って2本も追加で空けてしまった。途中、ミサキが空缶に潰されそうになったが、それも含めて良いか気分転換になった。


よって、このせいで体重が増えたのは仕方ないと言えよう。

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