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ペット彼女~リアルの女に用は無い~  作者: 31
1章 ペット彼女のあれこれ
2/12

ハツネ

怒りマークが使えないとかありえない

今日は武田五郎の18歳の誕生日。ずっと前から約束していた念願のペット彼女を買って貰える約束をしていた。


「こ…これが僕の…」


「今日から五郎のペット彼女だ。大事にしろよ?」


ケージの中では5cmほどで見た目12歳程のペット彼女が小さな寝息を立てていた。


「みー…みー…」




目覚めるまでの間、同封されていたペット彼女についての取り扱い説明書を読むことにした。


基本プロフィール

身長 5.2cm

体重 1.5kg

実年齢 推定15~20歳

見た目年齢 12~14歳

性格 従順、元気

知能 高め

運動能力 高め

鳴き声 みー


「みー…?」


「あ!起きた!」


モゾモゾ動いたと思ったら、目を擦りながら立ち上がった。


「み!みー!みみー!」


小さな手をパタパタ振りながら、五郎に満面の笑顔を向けていた。人間さんこんにちはと言ってるようだ。


『軽い挨拶をしたらまずは名前を付けてあげましょう』


「あはは!かわいー!っと名前考えないと…」


「みー?」


肝心の名前だが、五郎の中ではとっくに決まっていた。後はそれを受け入れてくれるかどうかだ。


「よし!今日から君はハツネだ!君も良い?」


「みー!みー!」


喜んでくれてるのを見ると受け入れてくれてるようだ。




『基本的に雑食なので何でも食べますが、個体によって好き嫌いがあるので注意しましょう』


基本何でも食べるとの事なので、今回は数十粒の米に少量のスープをあげてみる事にした。予め買っておいたペット彼女専用の食器に盛り付け、ハツネに持って行った。


「ハツネー!ご飯だよー!」


「み!」


初めて見る食べ物に目を輝かせるハツネ。でもじっと見てるだけで食べようとしない。何でだろう?説明書にはこう書いてあった。


『お許しを貰うまで動かない個体が多いです。食べて良い合図をしてあげましょう』


犬で言う所の待てに当たるのだろう。本来なら躾で覚えさせるものだが、最初から取得してるのを見ると改めて賢いと思う。


「えーと、食べて良いよ」


「みー!」


お許しを貰ったハツネはご飯に飛び付いた。一緒に専用スプーンを置いておいたが、使わないで米粒を手掴みでもしゃもしゃ食べていた。


「ああ…駄目だよ…そんな食べ方しちゃ…」


「みー?」


『食事の躾はしっかりやりましょう』


「スプーンはこうやって使うんだよ」


丁度五郎もご飯を食べてる最中だったので、同じようにスプーンを使ってご飯を食べた。それを見たハツネは真似しようとペット彼女用スプーンを手に取った。


「みー…みー?みー」


たった一回教えただけで、ご飯をスプーンで掬い、汚さず食べる事が出来た。


『上手く出来たら誉めましょう』


「!そうそう!上手上手!」


ナデナデ…はサイズ的に難しいからパチパチと拍手してあげた。


「み!?み~♪」


ハツネは嬉しそうだ。そのまま汚す事なく綺麗に平らげた。




『綺麗好きな個体が多いです』


「お風呂ってどうするんだろ…?」


「みー」


「とりあえず普通に洗ってあげれば良いのかな?」


「み!?みー!みー!」


イヤイヤと首を動かしている。


「あれ?嫌だった?」


『ペットとは言えメスです。女性にとってデリケートな部分には深く干渉しないようにしましょう』


「みっみっ…みー!」


ハツネはテーブルの上を指差している。そこにはさっき食べきったヨーグルトの容器が置いてあった。


「これ?」


「み!」


そうだよ!と言ってるのか強く頷いた。


「じゃあ…はい」


そのままではベタベタなので、綺麗に洗い流してからハツネの前に置いてあげた。


「みー!…みー?み!み!」


中を覗いたハツネは不思議そうな顔をしている。すると今度は水道のある方を指差していた。もしかして浴槽にしたかったのだろうか?


「もしかして水を入れる感じ?」


「み!」


「ちょっと待っててね」


冷水だと体に悪いし、お湯では熱すぎて毒かもしれない。そこで冷水とお湯を混ぜたぬるま湯を使うことにした。


「み~♪みー♪みー♪」


適温だったのか、気持ち良さそうにパチャパチャ遊んでいた。

余談だが、ペット彼女は全てが服の様な物を着てるが、脱がせる必要はないらしい。


「あはは、気持ち良さそうって水はね凄いな…」


これからはハツネの住む家を用意してあげようと切実に感じた。




「みー…」


時計の針は11時を指していた。五郎からすれば大したことない時間だが、ハツネにとってはもう寝る時間なのだろう。眠そうに目を擦り始めた。


「そうか、寝る準備は…」


『タオルやティッシュ等布団の代わりになる物を渡しましょう。もしくは別売のペット彼女用ベッドを用意しましょう』


ペット彼女専用ベッドは中々の高値でとてもとは言わないが、学生の五郎では手が出る物ではない。


「敷き布団は小さいタオルで良いかな。掛け布団はハンカチを使って…枕はどうしよう」


「みー」


枕を考える事に夢中で気が付いてないが、ハツネは渡されたタオルやハンカチを使って寝床を作り始めていた。


「ごめんね。今日はティッシュの枕で我慢してくれる?近い内にちゃんと用意するから」


「み!」


ティッシュ枕を受け取ったハツネは頷いてくれた。これなら大丈夫だろう。




今日は日曜日で学校も休み。五郎は気合いを入れてハツネの住む環境を整えてあげる事にした。

その為にハツネは一度家に置いて、買い出しに出かける事にした。

本来ならハツネと一緒に選ぶのが一番だが、サプライズとして用意したいと言う五郎の維持だ。


「家に家具におもちゃと…揃える物は山積みだな…」


いざ!ペットショップへ!






数時間後…




「ほらハツネ!今日からこの中が君の家だよ!」


「みー?みー!みー!」


大きめの水槽の中には布団にお風呂やトイレと生活空間が広がっていた。

出入りが可能な梯子、昨日作った寝床をより快適に改造した布団、ヨーグルトではなく透明な容器を使った水飲み場にお風呂、仕切りで回りから見えないトイレ。おまけにペット彼女専用のボールやぬいぐるみた言ったおもちゃ。これで基本的な生活には問題無いはずだ。


「布団に水飲み場、トイレにお風呂。これで大丈夫?」


「み!み!みー」


何とハツネは頭を下げたのだ。言葉は分からないがお礼をしてるのだろう。賢いのは知ってたが、ここまでとは思わなかった。


「そう言ってくれると嬉しいな。じゃあこれで遊ぼっか!」


「みー♪」


買ってきたボールを使って二人は遊び始めた。


そしてその様子を離れた所から見てる影が一つ。

その正体は…





「あーつまんない。お兄はあの変な生き物に付きっきりだし…こんな生き物のどこが良いの?」


遊び終えて五郎が居なくなった所を見計らって、五郎の妹である香澄はハツネの居る水槽の中を覗いた。


「みー?…み!?みー!!みみー!!みっ!!」


ハツネと目が合ったと思えば急に怒り始めた。


「え!?何か凄い怒ってるんだけど!お、お兄ー!」



「どうしたどうした」


「ハツネが凄い怒ってて…」


水槽を指差すも、そこにはボールで遊んでいる姿しか無かった。ハツネは五郎に気が付いたのか、元気よくこちらに走って来た。


「みっ!みー!みっ!」


「…どこが?」


「…あれ?」


怒りなど微塵も感じられない態度に、香澄は疑問を抱いた。

いくらなんでも切り替えが早すぎないかと。


「勉強してるんだから無駄な事で呼ばないでよ…ハツネも言い付け守って偉い偉い」


「み~♪」


「言い付けって?」


「おやつを置いたんだけど、3時になるまでは食べちゃ駄目って教えたんだ」


指差す先には白いトレーに置かれたチョコレートがあった。全く手を付けてないのを見ると言い付けを守ってるようだ。


「じゃあ勉強に戻るよ」


五郎は部屋に戻り、再び二人っきりだ。双方喋らず目だけが合う。


「…」


「…みっ」


ハツネは香澄を見たと思えば鼻で笑ってきた。完全にバカにしてる態度だ。


「ムキー!笑ったな!何こいつ!」


確かにペット彼女は女性になつかない事は、香澄も分かっていた。

精々無視されるレベルかと思っていたら、まさかの濡れ衣を着せてきたのだ。


「調子に乗るんじゃないわよこの馬鹿ペットが!」


「み!?みー!!みー!!みっ!!みー!!」


ハツネも何か言い返してるが、香澄には何を言ってるのかさっぱり分からない。みーみー煩い程度にしか感じない。


「丁度良いわ…こうしてやる!」


香澄は水槽に手を入れると、置いてあったチョコレートを全部持っていってしまったのだ。


「み!?みー!!みっ!!みっ!!」


しかもそれを目の前で食べてしまった。


「ペットの癖に人間みたいな生活なんてして…ホント腹立つ」


チョコレートを平らげた香澄は水槽を見ると、小さなボールが何個か転がっていた。さっきまでハツネが遊んでたボールだ。


「ほら、遊んであげるわよ。感謝しなさい」


どこから取り出したのか、おもちゃのパチンコを使ってボールをハツネに撃ち込んでいた。


「みー!みー!」


「ほらほら~!逃げないと痛いよ~!」


ハツネも必死に逃げるが、何発かは当たってしまい、当たる度に悲鳴を上げていた。


「みゅ!み!みゅ!みー!」



そのまま数分が経過した。


「香澄…何やってんの?」


遊ぶ事に夢中になっていた香澄は、背後から近付いてくる五郎に気が付かなかった。

その表情はいつもの温厚な表情ではない。確実に怒ってる顔だ。


「え?…あ…これは」


「みー!みー!」


号泣するハツネ、香澄の手に持つボール、口回りのチョコレート、水槽内の水…この状況から五郎は香澄がハツネを虐めてたとしか思えなかった。


「おーよしよし、もう大丈夫だからね」


「みー!」


「あ、あの…お兄…これは…」


「性格上、仲が悪くなるとは思ってたし、それで衝突しても仕方ないと思ってた。でも、虐め…ましてや虐待レベルの事をしてたら無視出来ないよ」


「あの、お兄…話を…」


「香澄がそんな人だとは思わなかったよ…行こう?ハツネ」


「みー」


「あ…」


それからと言うもの、兄には愛想尽かされるわ親からはこっぴどく叱られるわ散々な目にあった香澄。それでも五郎は「ハツネが許せば許す」との事なので、謝りに行ったのだが…


「ご、ごめんねハツネちゃん。もうボールぶつけたりしないからさ!」


「みっ」


目も合わせてもらえず、全く相手にしてくれなかった。

どうしてあんな事してしまったのだろう?

後悔しても、もう遅い。

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