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エピローグ 2

 エイリールから魔物大侵攻スタンピードの裏で起こっていた出来事を聞き、実際にその現場を見たローレンは、今後の予定を急遽変更する。


 本来の予定であれば、ローレンとエイリールは、このあと連れ立ってフィルフィート国の王都に向かう予定であったが、さすがにそのまま行う事はできなかったのだ。


 何しろ、フィルフィート国とグロウリア国。

 両国の騎士団長が王女誘拐を企てただけではなく、魔物大侵攻にも関与している可能性が高いという事が、エイリールの証言でわかったからだ。


 また、同じくエイリールの証言から、ローレンはバリッシュが第二王子派になったという事を知り、自分の命を狙っていた事を知る。

 この情報の裏は、暗殺者として捕らえた騎士からも得ていた。


 つまり、第二王子とその派閥を排除もしくは抑止を行い、自身を含めたその周囲に平穏をもたらさなければ、自身だけではなくエイリールも危険であると判断したのである。


 エイリールもまた、自国の者が起こした出来事の後処理を放棄して、他国に嫁ぐような事はしたくなかったため、ローレンとエイリールの結婚は延期となった。


 まずは、それぞれ自国を平和にする事を優先したのだ。


 その取っかかりとなるのが今回の出来事であったため、ローレンとエイリールはより多くの情報を求めた。


 そんなローレンとエイリールに最初に協力したのは、冒険者パーティ「アイアン意志ウィル」の面々。

 この冒険者パーティの報告は重要であり、また功績は非常に大きかった。


 まず、今回の魔物大侵攻は、国が管理しているはずの「誘引香」が使用されたかもしれないという事。

 その証拠として、実際に「鉄の意志」が手に入れた「誘引香」を提出した。


 次いで、高ランク冒険者たちを対象にした盗賊団退治の依頼は、騎士団長たちの企みの可能性がある事も伝えられる。


 以上二点が「鉄の意志」の報告であり、功績とは、魔物大侵攻の終盤で高ランク冒険者たちが現れた事。


 本来であれば間に合うはずのなかった高ランク冒険者たちを、魔物大侵攻が始まる前に呼び戻しに向かったのが、「鉄の意志」だったのだ。

 しかも、フィルフィート国とグロウリア国、バーティメンバーを分けて、両国共に。


 その行動によって、「鉄の意志」は、フォードの町とギアの町を救った立役者として認知される。

 ただ、当人たちは突然の持ち上げに困惑してか、自分たちはただ頼まれた通りに動いただけだ、と主張しているのは有名な話となった。


 ただ、その話がきっかけとなって、なんて謙虚なのだろうとフィルフィート国とグロウリア国内で「鉄の意志」の人気は更に高まり、有名になり過ぎたが故に、逆に悪事が働けなくなったそうだ。


     ―――


 ローレンとエイリール。

 フィルフィート国とグロウリア国。


 先に問題を解決したのは、エイリール――グロウリア国の方であった。


 というのも、主犯の一人であるグロウリア国の騎士団長――ディザインは、ただただエイリールを欲しただけであり、その他はせいぜい「誘引香」といくつかの宝物を国庫から拝借し、冒険者ギルドに高ランク冒険者向けの盗賊団討伐依頼を出しただけだったのだ。


 随伴した騎士たちは、ディザインの直属の部下のような存在で、甘言にそのまま乗ったようなモノであった。


 それ以外には特に問題はなく、寧ろローレンとの結婚を推奨していて急かす者の方が多かったくらいだ。

 何しろ、フィルフィート国は隣国であり、グロウリア国よりも強大な国である。


 その国との結びつきが強まるのを喜ぶのは当然の事。


 だが、もう一方。

 ローレン――フィルフィート国の方が問題は長く続いた。


 フィルフィート国の騎士団長――バリッシュが行った事は、ディザインと同じような事であったが、それはフォードの町で行った事。


 バリッシュが第二王子派だという事がわかった以上、ローレンとしてはフォードの町で起こった事だけに注視する訳にはいかない。


 ローレンはバリッシュについて、ひいてはそのまま第二王子派について、全力で調べて対応する事にした。


 今までは相手が弟の派閥という事もあってか、まだ見逃していた部分があったかもしれないが、今後は自身の周囲にエイリールが加わるのだ。


 全力で危険を排除し、平穏を得なければ、ローレンとしてはエイリールを迎え入れる事はできないと考える。

 早急に迎え入れるためにも、早急に問題を片付けないといけなかった。


 そうして、ローレンが本腰を入れてバリッシュと第二王子派について調べた結果――国内を揺るがす重大な事が判明する。


 それは――第二王子は第二王子ではなく、ローレンの弟ではなかった。

 第二王妃が騎士団長と不貞を働いた結果の子だったのだ。


 つまり、第二王子――だった者の父親は、バリッシュである。

 だからこそ、バリッシュは第二王子派であり、我が子を王にするために、ローレン暗殺を企んだのだ。


 ただ、前回のローレン暗殺には関与していない。

 バリッシュは第二王子派である事を隠していたために、表立った協力が出来なかったのだ。


 だがその前回が失敗に終わったからこそ、今回直接関与してきたのであった。

 今回も失敗で終わったが。


 第二王妃と第二王子だった者の結末は、語るまでもない。

 何しろ、現王を裏切ったのだから、まともな終わり方にはならないだろう。

 第二王子派も王家ではない者を担ぐつもりはないと、早急に分解する事になった。


 しかし、これでこの国に王子は一人という事になり、ローレンは確固たる地位になったとも言える。

 能力も高く、国民からの人気も高い上に、既に隣国の王女という相手も居るのだ。


 次期王位と申し分なく、どこからも文句は出ない。

 寧ろ、ここで文句を言うという事は、敵対行動を取るようなものだ。


 といっても、ローレンとしてもこれ以上結婚を延ばされる訳にはいかないため、根回しは同時に行っていたので、新たな乱が起こるような事はなかった。


 こうして、ローレンが国内の問題を片付けるまで、数か月かかる。


 そして、その半月後。再び。

 ローレンはフォードの町へ。

 エイリールはギアの町へ。


 二人は婚約後、両国から盛大に祝福されて結婚し、幸せな人生を送る。

 フィルフィート国とグロウリア国の平和と共に。


     ―――


 エイリールは、再びギアの町へ赴く際、馬車の中から見える風景を見ながら思い出していた。

 それは、二つの町に魔物大侵攻スタンピードが起こった時、誘拐され、助けられたと知った時に聞いた言葉。


「借りを返しただけ」


 借り――という言葉でエイリールが思い出したのは、過去の出来事。

 それは、エイリールがローレンと出会うよりも前の話。


 ローレンを助けた時と似た状況が前にもあったのだ。

 いや、その似た状況があったからこそ、エイリールはローレンに気付いたのかもしれない。


 その状況は、ローレンの時とほぼ同じであった。

 馬車に乗るエイリールが見つけ、駆け付け、助ける。そこは同じ。


 違うのは、ローレンの時は晴れていたが、前の時は大雨であった事。

 それと、前の時に助けた者は、傷も癒えぬままに一言だけ――「この借りはいずれ返す」と言い残して姿を消した事だった。


 自分とバーネットを助け出してくれたのは、きっとその時の人だとエイリールは思う。


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