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 高級店に関しては、むさくるしいヤツらに頼んだので、時間ができてしまった。

 う~ん。暇だ。


 こうなるのなら、セイギちゃんと一緒に冒険者ギルドにでも行けばよかった。

 今更行く気はない。


 とりあえず、本屋が目に入ったので入る。

 新聞は、相変わらず一面が王女と王子の話ばかりだ。


 他に目ぼしいものはないかと店内をぶらつき、探偵推理ものを一冊買う。

 寝る前に宿屋で読もう。

 ついでに、この辺りの地図も見ておいた。


 本屋を出るといい時間だったので、昼食を取る。

 漂う匂いに負けて、屋台で焼きそば。


 やはりソースが絡んで美味い。

 キャベツの甘味も感じられる。

 個人的な意見かもしれないが、冷めた焼きそばも好きだ。


 食べながら、このあとの事を考える。

 特にこれといって予定はないし、宿屋ファミリアに戻るのも早い。


 ……ギアの町の方にも行ってみるか。

 行ってある程度話を聞いて戻れば……晩御飯には間に合うだろう。


 そうして橋を渡ってギアの町に入る。

 中で聞いた話は、俺の予想通りというべきか、フォードの町で聞いた内容と似たようなモノだった。


     ―――


 晩御飯は、もちろん宿屋ファミリアの食堂でいただく。

 本日の献立は、ロールパン、野菜ごろごろシチュー、から揚げ、オニオンスープ。


 単体でも十分魅力的なのだが、シチューに付けたロールパンの美味い事美味い事。

 じっくり味わいながら堪能していると、対面に座る、俺と同じメニューでありながら、その量は三倍くらい違う晩御飯を堪能しているセイギちゃんが話しかけてくる。


「ほへで、はふにんさんは、なにをしていはんへふか?」

「セイギちゃんは、口の中に何か入っていないと喋れないの? きちんと咀嚼しきってから話すという事を覚えようか」


 ごっくん、とセイギちゃんが一気に飲み込む。


「それで、アクニ」

「何をしていたかって? 知り合いに用件頼んで、本屋寄って、あとは適当にぶらついただけ」

「……伝わっていたのなら、飲み込ませる必要あったんですか?」

「マナーの問題かな?」


 ぶすぅーっと、セイギちゃんが頬を膨らませる。

 おかしいな。今は何も食べていないはずだけど。


「まあまあ、一つ勉強になったって事で。それで、セイギちゃんに頼んでおいた話を聞きたいんだけど?」

「……それは別に構いませんけど、その前に一つ」

「何?」

「アクニンさんに、私以外の知り合いって居たんですか?」

「俺ほど社交性がある男に、知り合いが居ない方がおかしいでしょ」


 疑いの目で俺を見るのはやめろ。

 もちろん、知り合いは居る。


 この町に、とは限らないけど。


「とりあえず、俺の知り合いの話じゃなくて、セイギちゃんからの話を聞きたいんだけど?」

「ああ、そうでしたね」


 互いに食事を取りながら、話を聞く。


 フィルフィート国の王子「ローレン・フィルフィート」と、グロウリア国の王女「エイリール・グロウリア」の出会いは、約一年前。

 その頃、フィルフィート国の上層部……正確には、王族には一つの問題が起きていた。


 どこのどんな国にだって必ず起こる、後継者問題だ。

 フィルフィート国の王子は、二人居る。


 第一王妃の子で第一王子、ローレン。

 第二王妃の子で第二王子、コーラン。


 本来であれば、容姿端麗、公明正大、物腰は柔らかくて民からの人気も高く、何より第一王子であるローレンが次期国王第一候補。

 そこに文句を言う者は当然居る。


 己を利益優先とか、そんな理由で。

 世の中そんなモンだ。


 で、そんなヤツらに担ぎ上げられたのが、当然第二王子。

 主に軍部に関わっている一部の者たちのあと押しを受けて。


 それで第二王子が有能であるなら問題ないように見えるのだが、そうじゃない。

 俗に言って、端的に言って、馬鹿でワガママ。


 第二王妃が甘やかしに甘やかしているそうだ。

 もうね。狙いが透けて見える。


 もちろん、そんなヤツらが思慮深く行動する訳もなく、短絡的にローレン暗殺を狙って襲撃。

 結果として、暗殺は失敗したが、襲撃は成功した感じ。


 襲撃を受けて深手を負い、ローレンは護衛もやられて一人で逃げるしかなかった。

 そこでローレンを助けたのは、訪問目的でフィルフィート国の王都に向かっていたエイリール王女一行。


 エイリール王女は馬車の中から、木にもたれかかるローレンを発見し、馬車をとめて自ら駆け寄って助け出したそうだ。


 ローレンはそれで救われ、エイリール王女に恋をした。


 そこから先は、まあ想像通り。

 ローレンは傷を癒しつつ、自身の派閥の協力を得て、襲撃を企てた者たちとその裏に居る者たちを排除。


 第二王子も、そこからは大人しくなったらしい。

 それで、そこら辺の事を片付けたローレンは、エイリール王女に猛アプローチを始め……今に至る、と。


 ここまでの流れの話は、この二国ではかなり知れ渡っているそうだ。


「なるほど。だから、セイギちゃんでもここまでの事がわかったのか」

「その言い方だと、普通ならわからなかったって意味に聞こえますけど?」

「そうでしょ。セイギちゃんに諜報能力はないし」

「そんな事はありません! 私だって、やればできます! お姉ちゃんも、私はやればできる子だって言っていました!」


 身内のひいきじゃないか?


「へえ~。なら、他にもなんか情報を仕入れてきたんだろ?」

「………………」

「そこで目を逸らすのは、自白しているようなモノだぞ」

「……あっ! そういえば」


 思い出さないといけないような内容なのか。


「盗賊の一団が残っているっていう噂があるんですけど、どうやら本当みたいですよ」

「その根拠は?」

「冒険者ギルドで募集をかけていました。明後日出発ですが、距離的にこの一大イベントには間に合わないらしく、その分、報酬を上乗せしているそうです」


 ………………。


「セイギちゃん。いくつか確認したいんだけど、それってどういう理由で本当だと判断したの?」

「駐留している騎士団からの情報だと言っていました」

「騎士団が? ……なら、どうして騎士団は動かない?」

「それは私も思ったんですけど、今はなんでも人数が足りないみたいです」

「ああ、そういえば、そんな話があったな。一部を残して王子の出迎えに向かったんだったな」

「そうです。それで、少し前に周囲の掃討を行ったそうですが、全地域を回った訳じゃなく、いくつか回れていない場所があって、その内の一つに盗賊の一団が巣食っているのを、残った騎士団が発見したそうです」


 なるほどな。大体の状況は読めた。


「セイギちゃん。もう一つ確認だけど、その募集って、高ランクしか受けられないんじゃない? たとえば、Bランクからとか」

「そうそう、そうなんですよ! 私も受けたかったのに。……よくわかりましたね、アクニンさん」

「まあな。それで、どれくらいのBランク以上が参加すんの? 俺の予想だと、大多数だと思うんだけど?」

「押し付けるような形で申し訳ないと騎士団からかなりの謝罪金が出ているそうで、それが上乗せ報酬として追加されて破格の金額らしく、アクニンさんの言う通り大多数だそうです。まあ、元々Bランク以上なんて数が少ないですから、人数的には少ないですけど」


 でもまあ、戦力的には大幅ダウンだろうな。

 ランクが上になればなるほど、その力は増していく。

 ましてや、冒険者平均であるCランクと、その上であるBランク以上では、隔絶した差がある。


 ……さて、わざわざ高ランク冒険者を外に出すんだ。

 何か狙いがあるのは、間違いなさそうだな。


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