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 翌朝。今日の髪のセットは……八十点、という感じ。

 朝食は、宿屋ファミリア恒例の食堂でのバイキング。


 今日の気分で選ぶと……トーストにバターとハチミツを塗り、サラダにドレッシングとオニオンスープ。

 ベーコンを二切れ、サラダの上に乗せる。


 朝食を食べていると、セイギちゃんが大きな欠伸をしながら、こちらに来るのが見えた。

 トレイには山盛りのロールパンとベーコン。サラダ少々にコーンスープ。


「おふぁようごじゃいます、アクニャンさん」

「確かに俺は猫の方が好きだが、だからといって猫になってはいないぞ」

「朝から何を言っているんですか? アクニンさん」

「セイギちゃんの語彙力について」

「……朝だからですかね?」

「……朝だからじゃないか?」


 それで完結して、俺の対面に座ったセイギちゃんが、いただきますと言ってから食事を始める。


「……というか、セイギちゃん」

「なんでふか?」

「もう少しバランスよくというか、サラダの量も増やせば?」

「育ち盛りですから」

「なら尚更サラダ食えよ」


 駄目だ、コイツ。

 そのまま食事を続けるが、先に食べ終わるのは当然俺の方。

 エチケットは大切だと、サーブルの上にある紙ナプキンで口元を拭ってから、食事中のセイギちゃんに声をかける。


「それで、セイギちゃん。昨日はどうだったの? なんかめぼしい情報でもあった?」


 セイギちゃんは考えながら口の中にあるロールパンとベーコンを咀嚼し、ごくんと飲み込んでから答える。


「いえ、これといって特には」

「使えねー」

「はあ? 頼ってきたのはアクニンさんの方じゃないですか!」

「頼ってませんー! まっ、セイギちゃんだし、仕方ないか」

「ムカッ! なら言わせてもらいますけど、そもそも情報情報と言いますが、どういう類のを求めているのかを教えてくれないと、集めようがないですし、答えようがないと思いますけど?」


 なるほど。確かにそうだ。


「まさか、セイギちゃんに諭される時が来るとは」

「ふっふ~ん!」

「じゃあ、素直に称賛する代わりに、サラダを追加してやろう」


 残っていたサラダを、セイギちゃんのサラダの上に乗せる。


「行儀が悪いですよ! アクニンさん」

「なら、俺が責任をもって食べるさ」

「いえ、いただきます」


 食べるんかい。

 まあ、別にいいけど。

 最後にコーンスープを飲み干して、朝食を終える。


「まっ、セイギちゃんはそのままでいいさ。じゃ、俺、行くとこあるから、今日も自由行動って事で。あっ、王女さんと王子さんの馴れ初めってのも少し興味あるな。じゃ」

「え? 今日もですか? でも、そういう話、私も興味ありますね。なら、今日は冒険者ギルドに行って……」


 最後まで聞かずに、席を立ってトレイを片し、食堂を出る。


     ―――


 ……さて、宿屋を出たものの、これからどうするべきか。

 出来る事なら、昨日入れなかった高級店に行きたいが……まあ、昨日の様子だと、ありゃ入るのが難しそうだ。


 予約客以外入れないだろう。

 そもそも、予約の取り方もわからん。


 紹介とかだと手が出せないし……金を積んで入れるなら簡単なんだが……それも無理だろうな。

 儲かっている分、逆に厳しそうだ。


 とりあえず、何かしらの情報でもないかと、もう一度高級店に向かう。

 夜なら夜、昼なら昼の情報が得られる場合もある。


 そうして高級店に辿り着くが、昨日とは違う筋骨隆々の男性が、入口の前に陣取っていた。

 しっかり守っていらっしゃる。


 さて、どうしたものかと思っていると、高級店から出て来る者たちが居た。

 身形から判断すれば冒険者のようだが……どこかで見た顔だ。


 ………………。

 ………………。


 ああ、思い出した。

 俺はこれで入れるかもしれないと、笑みを浮かべて高級店から出て来た者たちのあとを追う。


 大通りで事を起こして警備兵とか呼ばれるとのちのち面倒なので、向こうに動いてもらうために堂々と。


 出て来た者たちは、しばらく大通りを進んだあと、突然路地裏に進む。

 おっ、ようやく俺に気付いたか?


 俺も路地裏に入ると、取り囲まれる。


「てめぇ、何者だ?」

「あとをつけて、何が狙いだ?」

「俺たちが『アイアン意志ウィル』だと知って……」


 取り囲んだのは、あとを追っていた者たち。


「よお、また会ったな」


 ついでに言えば、むさくるしいヤツら。

 ラフールの町で新人冒険者たちに絡んだところをセイギちゃんに邪魔され、俺がボコってお小遣いをもらったヤツらだ。


「て、てめぇ! まさか俺たちを追って」

「そんな訳あるか。偶々だ。偶々。だが、ちょうどいいタイミングではある。まさか、お前らみたいなのが、あの高級店と関わりがあるなんてな」


 そう言うと、むさくるしいヤツらは面倒そうな表情を浮かべる。


「別に隠してた訳じゃないだろ? あんな堂々と表から出て来た訳だしな。しかもこんな朝から出て来るんだ。何かしらの関係者なんだろ? 用心棒か?」

「チッ。てめえには関係ねぇだろ」


 そう吐き捨てて、むさくるしいヤツらはこの場から去ろうとする。


「おいおい、勝手に帰んなよ。そもそも、そっちが絡んできたんだろ?」

「てめえだとわかっていたら絡んでねぇよ!」

「そう邪険にするなよ。ちょうどいいタイミングだって言っただろ。寧ろ、俺は感謝しているんだぜ。お前らがあの店の関係者である事に」

「……あの店になんかしたら、てめえを絶対許さねぇからな」


 むさくるしいヤツらの内の一人。多分リーダーっぽいヤツがそう返してきた。

 ……ん? もしかして、俺今脅されてる?


「へぇ~、随分と過激な反応をするじゃないか。ただの用心棒って感じじゃないな。もっと関係が深そうだ」

『………………』


 憶測を言うと、全員がだんまり。

 認めているようだが、そこは突っ込まない。

 寧ろ、それだけ深い関係なら……手間が省けるかもしれない。


「なら、お前らに頼もうか。初対面の俺より詳しく聞けるかもしれないしな」


 そう言うと、むさくるしいヤツらが身構える。


「そう警戒するなって。別にあの店に迷惑かけようだなんて思っちゃいないさ。ただ、あの店に出入りしたであろう人物の事が聞きたいだけだ」

『………………』

「……俺の強さの一片を見せた訳だし、俺的には力ずくで事を起こしてもいいんだが?」

「……チッ。わかったよ。話は聞いてやる。だが、もし迷惑になるようだったら」

「だから、そんな気はねぇって言ってんだろ」


 聞く気にはなったようなので、騎士団が出入りしたか、また、もし出入りしていたのなら、どんな感じだったのかを聞いてきてくれと尋ねる。


「……まあ、それぐらいなら」

「なら、報告よろしく。あっ、宿屋ファミリアが定宿だから、そこに来てくれ」

「……お前、『ファミリマニア』かよ」

「またそれかよ。それを言うなら、お前らのパーティ名が『アイアン意志ウィル』って立派な名前なのがウケるんだけど」

『うるせえよ!』


 吐き捨てるように言われたが、むさくるしいヤツらを見送る時は、よろしくね、と手を振っておいた。


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