097, 0-55 幕間・痴女銀狼の旅立
・ヘルガの旅立
「銀狼族は滅びる!!!」
(辛気くせぇーな―)
一年に一度、銀狼の神・ウォルバーに感謝する祭りで族長は毎年、銀狼族が滅びると言いやがる。
アタシがガキの頃からずっと言ってるが親父やお袋がガキの頃からこんな調子らしい。
銀狼族、昔は放浪の種族とか呼ばれて大陸中のダンジョンを荒らし回ってたらしいが今ではたった2000人とちょっと。
弱くて滅ぶわけじゃねぇ。銀狼族は強い。強いが、なぜか他種族との間に子供が産まれねぇ。
数が減って集落を作り子供を増やすために頑張ったが数は減るばかりだ。
族長の辛気くせぇ言葉に嫌気が差したアタシは家に帰り荷物をまとめる。
旅に出る、と書き置きをし家を出ると幼馴染のロルフがいる。まぁ、同年代の奴はみんな幼馴染だが・・・。
「ヘルガ・・・ちょっといいか・・・」
「なんだよ」
「あのよ・・・あれだよ・・・」
「はっきり言えよ~」
「俺の子供を産んでくれ!!」
「そんなことかよ・・・。いいぞ」
「えっ・・・いいのか?お前そういう話全然しねぇから―――」
「ヴィムとゴッツの後な」
「はっ?!ヴィムとゴッツ!?あいつらといつ約束したんだよ!!」
「ヴィムは10歳の時でゴッツは14の時だな」
「ま、まじかよ・・・。そんな早くから・・・」
「別に早くもねぇだろ。つってもアタシは旅に出るからな。子供を産むのはその後だな」
「旅?どこに行くんだ?」
「特に決めてねぇけど・・・、他の種族と子供が作れるか試す旅だな」
「そんなもんとっくの昔に無理だってわかってるだろ」
「だからって族長みてぇに滅びる滅びるって毎年愚痴って辛気臭く生きていくのはゴメンだかんな」
「まぁ、俺もあれはどうかと思うが・・・、どのぐらい旅するんだ?」
「1、2年で帰ってくっからその間は別の女と子作りしてろよ」
「・・・最初の子供はお前と作りたかったんだけどな」
「なんだよそりゃ」
「ハハハッ、まぁ俺は変わり者なんだよ」
意味わかんねぇこと言うロルフと別れ、集落を出る。
(とりあえず石の街だな・・・)
獣人の国の王都、つっても獣人の国に街は一つしかねぇ。
後は集落だ。
集落を一つ一つ回るなんてめんどくせぇから街でめぼしい男を適当に押し倒し子作りする。
大抵は乗り気だが、たまに生意気な奴や抵抗する奴はぶん殴って押し倒す。
どいつもこいつも役立たずで子供はできねぇ。
仕方ねぇから別の国に行く。
旅の途中、たまに見かける大型モンスターをぶっ殺し、魔石を行商人に売りつけ路銀を稼ぐ。
小国からエルフの国、ドワーフの国を経由して普人の国まで来たが子供はできねぇ。
(やっぱ銀狼族は同族としか子供できねぇのか・・・)
血が濃くなったからか子供ができにくくなっちまった銀狼族。
(マジで滅ぶかもなぁー)
酒場のある宿屋で酒を飲んでりゃ隣にいる男が胸をチラ見してきやがる。
(とりあえず一発やっとくか)
男の腕を掴んで引っ張ると女が邪魔してくる。
「ちょっとあんた!私の彼に何すんのよ!!」
(女連れだったのか・・・)
「離しなさいよっ!!」
(うるせぇなーー)
暴れる女を担ぎ上げ男を引っ張る。
男は大して抵抗しねぇが女はうるさく暴れる。
部屋に入り、女を縛り上げ床に転がす。
男を押し倒し、上に乗っかり腰を動かすと女が怒鳴る。
(なんか笑えるな)
気分が乗って動きを強め男が情けない声を上げ始めると女がべそべそ泣き出した。
(あ~辛気くせぇ)
女の縄をほどいて部屋を出る。
隣の部屋の扉を開けると泊まっていた女が文句言ってきたから金を渡して黙らせる。
さっきまでいた部屋からガサゴソと音が聞こえる。
てっきり痴話喧嘩でも始まるかと思ったが部屋から出ていく音がする。
窓から外を眺めりゃ女と男はそれぞれ右と左に分かれて行っちまった。
(修羅場もなしかよつまんねぇ・・・)
銀狼族以外の種族には嫉妬って感情があるらしい。
決まった相手以外と子作りすると怒りの感情が湧くそうだ。
子供がたくさん出来ると自分の子供が蔑ろにされるかもしれないっつー危機感から湧いてくる感情と族長は言ってたな・・・。
贅沢な感情だ。銀狼族は子供が生まれなくて滅びそうだってのに・・・。
辛気くせぇ気分を変えようと飲み直すために酒場に降りれば、偶然見つけたゴブリンの群れを退治したとはしゃぐ冒険者達がいた。
ゴブリンなんて雑魚だろうに・・・いや、普人からすりゃゴブリンでも脅威か?
普人は弱い種族だ。だが、そんな弱い種族が繁栄して大国作って、強い銀狼族は滅びそうってんだから強さってのは何なのかわかんねぇな。
つってもゴブリンか・・・。懐かしいな・・・。
ガキの頃はよく遊んでもらったもんだ。・・・そういやゴブリンは雌を孕ませるモンスターだったな。
産まれてくるのは必ずゴブリンってんで銀狼族を増やすには使えねぇけど・・・、ゴブリンのガキを妊娠して集落に戻ってみんなを驚かせてやるか。
結局ダメだったっつって帰るのも辛気くせぇしな。ウケるだろ。
このあたりのゴブリンの情報を集め、適当に保存食や酒を買い魔法の袋に入れる。
そしてカナリッジっつー街の近くの森にある洞窟にやってきた。
服を脱ぎ、スライム皮の防水袋に服を入れ埋める。
魔法の袋だけ持って洞窟に入りゃゴブリン共がグースカ寝てやがる。
(こんだけいりゃ十分だろ・・・)
「女だぞーーー!裸の女が来てやったぞーーー!!」
アタシがデカイ声で呼んでやりゃあゴブリン共は目を覚ました。




