096, 0-54 幕間・家出令嬢の救助
・セリーナ=ハルフォードの救助
前回のあらすじ
実況のゴブリンさ~~ん!
洞窟に入るとジョニーが走り出す。
「おい、ジョニーどうした!」
ジョニーは、私の問いに答えることなく洞窟の奥へと消える。
耳をすませば女性の声が聞こえる。
ジョニーは女性を助けるために走り出したようだ。
私もジョニーを追うために走ろうとするも松明の炎が揺れてうまく走れない。
仕方なく早足で進めば道が分かれている。
右に進むと行き止まりだった。
引き返し進めば広い空間でジョニーが女性を保護していた。
女性をよく見れば頭部に獣の耳が生えている。獣人だ。
「ジョニー、その女性は・・・」
女性はひどく怯えているのかジョニーに縋り付く。
「ゴブリンに囚われていた女だ。女性の方がいいだろう」
ジョニーは女性の手を丁寧に外し、私の方へ促す。
だが、女性はジョニーを信頼しているのか拒む。
「アナタがいいです。おぶって下さい」
(最初に駆けつけたジョニーを信頼しているのだな・・・)
「お前が頼りにされているのだからお前が面倒を見るべきだ」
ジョニーは数瞬ためらいを見せるも、女性に背を向ける。
女性は勢いよくジョニーの背に抱きついた。
洞窟の出口に向かいながらジョニーと話をする。
「急に走り出したからどうしたのかと思ったぞ」
「『お~い、誰か~』と呼ぶ声が聞こえたからな」
「私も女性の声は聞こえたが、何を言っていたのかまではわからなかったぞ。ジョニーは耳が良いんだな」
「いや、集音の魔法を使っていただけだ」
「集音の魔法?」
「周囲の音をよく聞きたい、とイメージするだけだ。森に入ってからはずっと使っている」
「なるほど。便利そうだな」
「使いたいなら練習するといい。使う魔力は少なくし、徐々に増やしていけ。多すぎると鼓膜が破れるからな」
「ジョニーはそういった知識はどこで学んだのだ?」
「俺は知識の神・ビブリチッタ様の孤児院で育ったからな。子供の頃はよく本を読んで過ごした。わからない文字があるとシスターに聞きに行ったのはいい思い出だ・・・」
「そうか・・・」
(ジョニーは孤児だったのか・・・)
悪いことを聞いてしまったと会話が途切れると、獣人の女性が空気を読んだのか明るい声で話し始める。
「アナタはジョニーさんというのですか?」
「ああ」
「私の名前はヘルガです。これからよろしくおねがいします」
「街までは送ってやろう」
(気丈な女性だな)
「私の名前はセリーナという。ジョニーならば助けになってくれるだろう」
「はい!」
「いや、街まで―――」
「頼りにしてますジョニーさん!!」
洞窟を出るとヘルガは「少し待って下さい」と言い、洞窟の裏へと隠れる。
少し待ち、姿を見せたヘルガは服を着ていた。
「その服はどうしたんだ?」
「拾いました」
「そうか、拾ったのか。運が良かったな」
「はい!」
獣人特有の感覚で見つけたのだろう。
ゴブリン達が集めていたものかもしれない。
「あっ・・・あぁ・・・」
「どうしたヘルガ!」
「少し目眩が・・・」
「ジョニー!背負ってやれ!!」
「・・・ああ」
倒れたヘルガにジョニーが背を見せれば、ヘルガはジョニーに飛びついた。
ヘルガはジョニーに惚れてしまったのかもしれない。
私の考えは当たっていたようで帰りの馬車の中、ヘルガはジョニーに抱きついている。
(これは応援してやらねばな・・・)




