042, 0-22 幕間・謀略女王の煽動
・ルクレーシャ=クロトーの煽動
前回のあらすじ
女王様とお呼び!
「女王様とお呼び!女王様とお呼び!」
私は鞭で公爵令嬢を叩く。ひも状のやつじゃなくて乗馬用の棒みたいな鞭だ。
別にSMプレイじゃないからね。勘違いしないでよね。
奴隷にした公爵令嬢には「私は奴隷です」って書かれた首輪をつけて、後宮で人質の世話でもしてもらおうかな?と思って命令したのに、凄い反抗的で困ってるのだ。だから仕方なく鞭で打つ。
鞭打ちって結構ひどい怪我をするって本に載ってたけど、私はまだ8歳。大して力はないからあまり効果がない。
「い、痛い。やめなさい!こんな事して・・・ただで済むと思っているのですか!王様に言いつけてやるんだから!!」
(王様ってまさか・・・)
そういえば『王は死んだ』と私が言った時、公爵令嬢はグリゼルの魔法で『う~う~』唸ってたっけ。王様が死んだこと、まだ知らないみたい。
仕方がないので、教えてあげる。なんと言っても私は可愛い聖女様。愚者を導くのも私の務め。
「王は死んだ。私がこの手で殺した。女王様とお呼び!女王様とお呼び!」
そして鞭で叩くことも忘れない。でも今度は、文句を言うこともなく様子がおかしい。
「そんな・・・嘘よ・・・王様が死ぬなんて・・・王様、私の王様はどこ!王様!!」
(私の王様って・・・。王様に憧れて侍女長になったって聞いたけど、まさかそんな王様に思い入れがあったなんて・・・)
その後、いくら鞭で叩いても「王様!王様!」と繰り返すばっかり。まあ、別に本当に奴隷として働かせたかったわけじゃないし、適当に拘束しとけばいっか。
公爵令嬢が連れて行かれた後、私はグリゼルの前で果物を落とす。
「果物が落ちるのは、地面に引きつけられる力が働いているからです。これを重力といいます・・・」
ドヤ顔の私。キョトンとしているグリゼル。
駄目だった。イマイチ伝わらなかったみたい。
仕方がないので何時もの如く、うろ覚えの知識を根気強く伝えれば、ウンウンと頷くグリゼル。
私が重力について伝えているのは「お空を自由に飛んでみたい」と思ったからだ。せっかく魔法がある世界にいるんだから、魔法っぽい体験してみたい。
最初は、風の魔法かな?と思ったけど、強風に煽られて飛ぶとか嫌だ。そこで思いついたのが重力。
この世界、空を見ればお月様もあるし、太陽もある。海もあるそうだし、今いるルービアス大陸の外にも大地があるって話だ。
ただ、大陸の外との交流はない。これはやっぱりモンスターのせいみたい。船を使って陸地の近くでお魚獲るぐらいは出来るけど、長期航海とか無理だって。
命知らずの馬鹿が数百年に一度ぐらいの頻度でたどり着く。出ていく方は記録がない。帰ってくるとか、無理だからね。
だから、前世と同じように球体かどうかはわからないけど、重力はあるだろうなって思ったのだ。
私の適当知識でもグリゼルは理解できたみたいで、ふわっと浮き出した。抱っこしてもらい、空を飛ぶ。
「スゴい!スゴいよグリゼル!飛んでるよ!!」
私は興奮してはしゃいだ。そんなスゴい空飛ぶグリゼルは、今メイド服を着てる。
地味な侍女服のグリゼルじゃなくて、有能メイドなグリゼルさんを見てみたい!と思って着てもらった。でも私のイメージとはちょっと違う。
私がイメージしたメイド服は、海外ドラマとかでイギリスのメイドさんが着てるようなメイド服だったのに、グリゼルが着てるメイド服はメイド喫茶のフリフリなメイド服だ。
1200年ぐらい前にいた異世界転生者が伝えたんだとか。碌でも無いね。
「メイド服着て!」と命令した私の前に、恥ずかしそうに現れたグリゼルちゃん。
そんな彼女に「それじゃない」とは言えず「スゴい似合ってる!可愛いよグリゼル!!」と言ってしまったのが始まり。その日からローテーションで様々なメイド服を着ている。
でも、幼かった可愛い少女グリゼルちゃんも、今では綺麗な黒い髪を三編みにして後ろでまとめた、エメラルドグリーンの瞳を持つ美人さんだ。何を着ても似合う。
私も髪や目の色に合わせて、赤や黒のフリフリドレスを着ている。
美人なグリゼル。カワイイ私。最強だね!
そんな美人メイド魔法使いグリゼルは言う。
「この魔法はあまり魔力効率がよくありませんね・・・私でも30分が限界です」
そっかー。魔力がなくなると回復するまで魔法使えないって言うし、遊びで使うのは無理かな。
でもグリゼルはやっぱりチートキャラ。飛行魔法は無理でも、なにかに使えると思ったのか数日後、黒い球体みたいな魔法を作り出してくれた。
物に当てると消滅する、なんかスゴい怖い魔法が出来た。普人相手なら痙攣魔法があるから別にいらないと思うけど、グリゼルが強くなってくれれば私も安心できる。
そんなグリゼルと一緒に、私は王様が集めていた芸術品とやらを売ることにした。
最初は絵画かなんかかと思ったら、ドワーフ製の銀細工だった。王妃様が好きだったみたい。
芸術品を管理してた人は「ああ、それを売るなんてとんでもない・・・」と言って渋ってたけど、私が見つめてあげると、プルプルと震えて倒れた。
グリゼルの方を見ると「私は何もしていません。可愛いルクレーシャ様に感動したのでしょう」と教えてくれた。
う~ん。カワイイは正義のはずなのに、まさか私の可愛さがこんな事態を招くとは・・・。悩殺級の可愛さは罪だね。
芸術品を売って出来た資金で、暗殺部隊改め、忍者部隊に物資調達を命じる。
なんか色々工作活動とかしてもらうし、暗殺だけじゃないから名前を変えた。
忍者服とか用意しようかと思ったけど、それじゃバレバレだから普段通りの服で動いてもらう。
私は女王様だから、普通に国費も使えるんだけど、これは出来るだけ内緒に集めたい・・・。女の子には秘密があるんだよ♡
そして、東と西の公爵勢力を煽る。
敵はこんなに兵を集めてますよ、とお互いの勢力に吹き込む。
忍者部隊にいる人達は貴族だし、勢力に合流して噂を流し放題だ。
そんなこんなで半年後、王都東側の平原に東西合わせて10万人の兵が集まった。
玉座の間で近衛騎士隊長のライナスさんが部下から報告書を受け取る。
「会戦が始まりました。言葉合戦で反逆者は『理由なく幽閉された我が娘を取り戻せ。正義は我にあり』と言い、モース公爵様は『若き女王を守るため我らは反逆者と戦う。正義は我らにあり』と仰ったそうです」
東の公爵も西の公爵もおじいさんだ。そんな二人が可愛さを競うとか意味不明なんですけど・・・。
仕方がないので私は言ってやった。
「私だけが正義だ」
そんな私にライナスさんが言う。
「女王様だけが正義です」
う~ん。ライナスさん、まだ私に惚れてるみたい。モテる女はツライな~。
そして数時間、適当に正面からぶつかって、意味もなく数千人が死んで、会戦は一時中断する。
これは東と西の公爵が無能ってわけじゃない。
この世界、こんな大規模な戦いは初めてなのだ。




