038, 0-18 幕間・エロシスターの嫉妬
・リリスの嫉妬
前回のあらすじ
この本には世界の壊し方が書かれています
運命の神・ファタリーノ様の教会ではマザー・ウィニーが私を迎えてくれた。
ファタリーノ様はビブリチッタ様と比べると信徒の数も多く、随分と賑わっているように見えた。
「やあ、あんたがリリスだね。ビブリチッタ様んとこのボウヤから話は聞いてるよ」
「ボウヤ?」
「神父のことだよ」
年齢を考えればおかしな事ではないけれど、神父様をボウヤ呼ばわりするだなんて・・・。
「さあ、まずはあんたが何を出来るのか教えとくれ」
私は、子供達に文字の読み書きや簡単な計算を教えたり、料理や掃除、本の管理などビブリチッタ様の教会での手伝いを話す。そして魔法が使えると思い出し、それも伝える。
「魔法はどのくらい使えるんだい?」
「それが・・・9歳で使えるようになったんですが、あまり使ったことがなくて・・・。神父様が特別な事情で魔法を使えるようにしてくれたので、隠れて水やお湯を作って掃除に使うぐらいです」
「そうかい、じゃあ念の為に私に意識を向けてみな」
「意識を向ける?」
「難しく考える必要はないよ。魔法はイメージさ。あんたが普段やってるみたいになんとなくでいいのさ」
私は言われた通りなんとなく意識を向けてみる。すると、マザー・ウィニーの中にある魔力が何となくわかる気がした。
「あれま、あんた魔力干渉できるのかい。よかったね、ビブリチッタ様の教会は本揃えるのに金がかかるのに信徒が少ないからね。魔力感知で金を稼げない世代は本を管理するだけで寂しくなっちまうからね。こりゃ次も安泰だ。うちは次の神父もシスターもいなくて困ってるのに、あんた一年と言わず、ずっとうちにいないかい?」
そう言われて私は困ってしまう。私はビブリチッタ様の信徒なのだ。
「ただの冗談さ、真に受けなくてもいいよ。商工会長が人を送ってくれるというからね。大丈夫だよ。取り敢えず今日は自由に教会を見て回りな。私も魔力干渉出来るから、明日からは魔力感知や回復魔法のやり方でも教えてあげるよ。うまいやつは一発で出来たりするしね」
そう言って笑うマザー・ウィニーは頼もしくて、やっぱりこういう人が暗闇をなくせる人なんだろうと思えた。
次の日から、教会や孤児院の手伝いをしつつ、魔法を教わる。
教会を訪れた軽傷の人に協力してもらい、回復魔法を練習し、魔法を使えるようになりたい人には魔力感知の練習をさせてもらう。
最初はうまくいかなかった魔力感知は一度コツを掴めば一瞬で出来るようになり、回復魔法も十分程度で骨折を治せるようになった。
埋葬や火葬のお手伝いをして、その時に使う魔法の練習もする。
そうして一年経った頃、ビブリチッタ様の教会に帰る日が来た。
「今までありがとうございました。マザー・ウィニーからは多くのことを学びました」
「そうかい?結局、私が教えられたことなんて魔法ぐらいだったと思うけどね」
「そんな事はありません。信徒さん達はマザー・ウィニーをとても信頼しています。マザー・ウィニーの人柄あってこそです。私もそんなマザー・ウィニーから――」
「そんなに褒めても何も出やしないよ・・・全く真面目な娘だねぇ。そんなんじゃ嫁の貰い手もないよ。なんなら私が紹介してやろうか。あんたのそのデッカイおっぱいなら男なんてイチコロさ」
「それは余計なお世話です!!」
「なんだい想い人でもいるのかい?まぁいいさ。誰にでも運命の相手ってもんが一人はいるもんさ。恋人でも出来たら見せにおいで」
「はい、その時は必ず」
マザー・ウィニーに別れを告げ、ビブリチッタ様の教会に帰ると、教会の前に一人の衛兵がいた。
「やぁリリス・・・いや、シスターかな」
「久しぶりねエリック。いえ、その格好なら衛兵さんね」
そうして私達はシスターと、衛兵さんとお互い呼び合って何度も笑ったのだ。
最初の一年はとても幸せだった。たまに彼がやってきて、近況を話してくれる。犯罪者を殺したと嬉しそうに話す彼に少しびっくりしたけれど、彼の生い立ちを考えれば自然なことに思えた。
でもいつからだろう・・・彼が名前を呼んでくれないことに不満を覚えるようになったのは・・・。
彼が他の女性と親しげに話をしていると、とても胸が苦しくて、いけないことだとわかっているのに相手の女性に嫉妬してしまう。
そんな日々が長いこと続いて、夜遅くに教会の扉を叩く音で目覚める。
神父様と一緒に表へ出れば、馬車でスヤスヤと眠る子供達と、馬車から飛び降りて私に抱きついてくる男の子がいた。
必死な様子で抱きついてくる男の子を抱きしめ返し、頭を撫でながら安心できるようにと笑顔で言葉をかける。
「よっぽど辛いことがあったのね。もう大丈夫よ」
男の子は一度だけ私の顔を見て、私にしがみついたままスヤスヤと寝息を立て始めた。
とても強くしがみついたまま眠ったのか引き離そうとしても難しくて、起こすのは可哀想なので、その夜は私の部屋で一緒に眠ることにした。




