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異世界転生俺TUEEE~女難の冒険者~  作者: 頭のおかしな神
第二章 孤児院とエロシスター
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037, 0-17 幕間・エロシスターの暗闇

・リリスの暗闇

お父さんとお母さんがどこかへ行ってしまう。でも私はそれを止めることが出来ない。だってこれは夢で、もうお父さんもお母さんも死んじゃってるから・・・。

目が覚めるとそこは孤児院の部屋だった。いつも目覚める部屋だ。私は顔を洗うために洗面所へ向かう。魔法具から出てきた水で顔を洗い、鏡を見ると私の目には暗闇があった。

台所に行くと近所の信徒さんたちが朝食の準備をしてくれていて、友だち数人と一緒に手伝う。みんなでご飯を食べて、そのあと信徒さん達がみんなに勉強を教えてくれる。




6歳の頃、私の両親は流行病で死んでしまった。病気の治療をしていた神父様は知識の神・ビブリチッタ様を信仰する神父様で、親戚のいなかった私は神父様が管理する孤児院に来ることになった。

孤児院に来てもう1年も経つ。私は7歳になったのに、まだお父さんとお母さんの夢を見る。ひどい事だとわかっているけど、もう全部忘れてしまいたかった。みんなみたいに楽しく笑って過ごしたかった。でも私にはそれが出来なかった。

朝起きて、鏡を見る度に私の目には暗闇があって、それをどうすれば消せるのかわからなかった。

神父様に聞いても「祈りましょう」と言うばかり。ビブリチッタ様は祈りを捧げても何もしてくれないケチな神様で有名なのに。

お父さんとお母さんは運命の神・ファタリーノ様の教会で出会った。そんな理由でファタリーノ様の信徒だった。

だから最初は私もファタリーノ様に祈りを捧げていた。でも不思議な事に何もしてくれないはずのビブリチッタ様に祈りを捧げるとほんの少しだけ気持ちが楽になった。



だから私は毎日祈った。

(もう辛い夢は見ませんように)

(どうか楽しく過ごせますように)

(みんなみたいに笑えますように)

毎日、毎日、祈りを捧げた。



8歳になった頃、私の祈りは通じたのかお父さんとお母さんの夢を見なくなって、でもお父さんやお母さんを忘れることもなくて、家族で過ごした楽しかった頃のことを思い出せるようになった。

鏡に映る私の目から暗闇はなくなっていた。もう安心だ。これから楽しく暮らしていけるんだ。

そう思っていたのに孤児院にエリックという男の子がやってきた。その子は家族をみんな殺されてしまったという。孤児院にもモンスターに家族を殺された子供はいる。でもその子の家族を殺したのは人間だという。

その子の目には2年前の私よりもひどい、とても深くて暗い闇があった。



エリックはたまに叫び声を上げて夜中に起きる。そしてよくおねしょをした。それを男の子たちにからかわれて喧嘩をする。エリックは喧嘩が強くて3対1の喧嘩にも勝っていた。

そんなエリックはよく言う。こんな世界は壊れてしまえばいいと。みんな死んでしまえばいいと。私たちは怖くてエリックに近づかなくなり、エリックは一人部屋になった。



私が9歳の頃、神父様がエリックに一冊の本を渡した。

「ビブリチッタ様は知識の神様です。だから世界の壊し方も知っています。この本には世界の壊し方が書かれています。この本をあなたに貸してあげましょう」

神父様が何を言ってるのか私にはわからなかった。本当に世界の壊し方なんてあるのか。そんな本をエリックに貸してしまうなんて。

でもエリックは文字が少しだけしか読めなかった。だから私は安心していた。でもある朝、神父様が私に言う。

「リリス、エリックに読み書きを教えてあげなさい」

「そんなの嫌です」

「リリスは読み書きを教えてもらったのに、エリックに教えるのは嫌なんですか?それは少しわがままですね」

「私わがままなんかじゃない」

「じゃあどうして嫌なんですか」

「だって・・・エリックは乱暴で・・・怖くて・・・」

「ではエリックより強くしてあげましょう」

神父様はそう言うと私の背中に手をおいた。すると私の体の中によくわからない何かがあると気づいた。

「リリス、それは魔力です。力が強くなるイメージをすればエリックよりずっと強くなれますよ。だからもうエリックは怖くないですね。エリックに読み書きを教えて下さい。任せましたよ」

神父様はそう言って教会に向かってしまった。



私は仕方なくエリックに声をかける。

「エリック、私が文字の読み書きを教えてあげる」

エリックは意外な事に素直で、とても勉強熱心だった。

(そんなに世界を壊したいのかな・・・)

勉強の合間に少しずつエリックと話をする。エリックの家族は商人で、親戚もみんな商人で、ある日強盗が来てみんなを殺してしまったと。エリックも刺されたけど、エリックのお父さんが死んでしまう前に魔法で治してくれたと。そう話すエリックの目にはやっぱり暗闇があって、怖かったけど神父様の言いつけ通り読み書きを教えた。



文字が読めるようになったエリックは、神父様に貸してもらった世界の壊し方が書かれている本を読んで、孤児院の裏庭で体を動かすようになった。

正直何をしてるのかわからなかったけど、きっとよくないことなんだと思って心配になりエリックを覗きに行く。

エリックは体を曲げたり、走ったり、木の棒を振ったりしていた。正直あんなことで世界を壊せるとは思えなかった。

だから私はエリックとお話がしてみたくなって、気づけばエリックはみんなとも少しずつ打ち解けていた。

そんなエリックの目から少しずつ暗闇が消えていって、私が12歳になった頃、神父様がエリックに聞いた。

「エリック、まだ世界を壊したいですか?」

「俺は・・・俺はもう世界を壊したくない。俺の家族が死んじゃったみたいな事が起こらないようにしたい」

「そうですか。じゃあエリックは皆を守りたいんですね」

「みんなを守る?」

「だってそうでしょう。エリックの家族に起こってしまった事を防ぎたいのなら、それは皆を守るということです。エリックは衛兵さんになりたいんですね」

「衛兵さん・・・俺、衛兵さんになれるかな」

「エリックならきっとなれますよ。だってエリックは毎日、衛兵さんになる訓練をしているじゃないですか」

「訓練?俺そんなことしてないよ」

「実は私はうっかり本を間違えてしまいました。エリックに渡した本は世界の壊し方ではなく、剣術について書かれた本だったのです。でも丁度よかったですね。衛兵さんになるなら剣術は覚えておいたほうがいいですから。私が本を間違えてしまったことは皆には内緒ですよ」

そう言って笑う神父様。神父様は最初から全部こうなることがわかっていたんだ。

私の暗闇もエリックの暗闇も神父様の言うとおりにしたら消えてなくなってしまった。私も神父様みたいにみんなの暗闇をなくしてあげられる人になりたいな。だから私はシスターになることにした。




私とエリックが15歳の頃、年齢が近い孤児は一緒に孤児院を出ることにした。それぞれの夢を叶えるために。

エリックは衛兵になる訓練をするため領都ヘブリッジへ、私はシスターになるため運命の神・ファタリーノ様の教会へ行くことになった。

私は神父様のもとで十分だと思ったけれど、神父様が「一度、他の教会も見ておくと為になりますよ」と言うので父と母が信仰していた教会を頼ることにした。

「次に会う時、リリスはシスターだな」

「エリックはきっと衛兵さんね」

「それじゃあ俺は行くよ。リリスも頑張れよ」

「エリックもね」

そうして私とエリックは一年間だけお別れすることになった。

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