035, 0-15 幕間・生意気男子の不安
・デュークの不安
前回のあらすじ
エルフとけっこん。どうすればできるの?
目が覚めると見たことのない天井だった。
(ここは・・・そうだ!俺たちは孤児院に来たんだ!!)
俺は昨日のことを思い出す。
(ジョニーは悪魔なんかじゃなくて、俺も悪魔じゃなくて、アデラを守るんだ!アデラはどこだろう・・・)
周りを見ると男の友だちはいたけど、女の子はいなかった。
みんなを起こして部屋を出てみる。
やっぱり見たことない場所で、なんだか不安になった。
俺たちが部屋の前で不安に思っていると男の人がやってきた。
「皆さん、おはようございます。私はこの孤児院と隣の教会を管理している神父です。隣の教会は知識の神・ビブリチッタ様の教会です。皆さんには今日からこの孤児院で暮らしてもらいます。一緒に挨拶に行きましょう」
知らない人だけどすごく安心できる声でみんなで付いていくことにした。
少し歩くと机と椅子がある広い部屋に出た。そこにはアデラたちと、知らない子供たちと、昨日見た女の人とジョニーがいた。
女の人は俺たちに向かって言った。
「私はシスターです。皆もそう呼んでね。困ったことがあったら神父様か私に相談して下さい。皆でお勉強をしましょう。それから・・・お手伝いをしてもらえたら嬉しいかな。皆よろしくね」
シスターの挨拶が終わったあと神父様が言った。
「それでは少し待っていて下さい」
神父様とシスターが部屋を出ていってジョニーが付いていった。ジョニーはどこに行くんだろう?
すると知らない子供たちが俺たちを囲んで一人が話しかけてきた。
「俺はクリフ。お前たちはなんていうんだ」
俺たちはクリフに自分たちの名前を教えた。
アデラの方を見るとアデラたちも知らない女の子たちに囲まれていた。
クリフは言った。
「今日からみんな友達だ。後で一緒に遊ぼうぜ」
俺たちはクリフたちと友だちになった。
友だちが増えたらなんだか安心してお腹が減ってきた。
そんなとき神父様とシスターとジョニーが戻ってきた。神父様とシスターはお鍋やお皿を持っていてジョニーはパンが入ったかごを持っていた。シスターが「ありがとう」と言ってジョニーからパンのかごを受け取って並べ始めた。ジョニーはお手伝いをしていた。
俺たちは椅子に座る。神父様が「では食べましょう」というのでご飯を食べることにした。ジョニーは手を合わせてよく聞き取れないことを言った。村でもやっていた。何をやってるんだろう。ジョニーは悪魔じゃなかったけどよくわからない怖い子供だった。
ご飯を食べたあとクリフが言った。
「よし、俺たちが街を案内してやる」
街の女の子の一人がジョニーに話しかける。
「私はキャスっていうの。ねぇ、あなたも一緒に行きましょう」
「俺は行かないよ。お手伝いがあるから」
キャスは何度か誘おうとしてアデラが止めに入った。不満げなキャスもアデラの必死な様子に誘うのをやめた。ジョニーはどこかへ行ってしまった。
「どうして止めたのよ。行っちゃったじゃない!」
怒るキャスにアデラは村であったことを話し出す。でもアデラは話すのが苦手だから俺が途中から代わりに話すことにした。ジョニーが2回目の火を付けた話をしたときキャスが言った。
「火付けよ、火付けのジョニーだわ!」
その日からジョニーは火付けのジョニーと呼ばれるようになった。
俺たちはクリフやキャスに街を案内してもらうことになった。
孤児院を出て最初に驚いたのはでっかい壁が見えたからだ。本当にでっかくて右を見ても左を見ても壁が見えて街を囲んでるみたいだった。
「あの壁のお陰でモンスターは入ってこれないんだ。空を飛ぶモンスターはでっかい弓で撃ち落とすんだ」
クリフがそう教えてくれた。モンスター・・・聞いたことある。
『この辺りにはいないけど、この世界にはモンスターっていう怖い生き物がいるのよ』と母さんが言っていた。
「モンスターってどんな生き物なの?」
「実は俺もよく知らないんだ。街から出たことないし。でも俺のとーちゃんとかーちゃんは街の外で畑仕事をしてモンスターに殺されちゃったんだ」
そういうクリフは悲しそうには見えなかったけど、本当はすごく悲しいんだろうなってなんとなく思った。
街の色んな場所を見てから帰るとご飯が用意してあった。俺たちはご飯を食べて体を綺麗にしたあと部屋に戻る。
アデラと一緒じゃなくて、なんでだろうと思っていると、男と女の子で部屋は別れてるとクリフが教えてくれた。
少しするとジョニーがやって来た。そんなジョニーにクリフは言った。
「おい火付けのジョニー、お前村で火を付けたんだってな。なんでそんなことしたんだよ」
俺はクリフが殴られると思った。でもジョニーはそれを聞いてなんでか嬉しそうにしていた。部屋を出ていくジョニー。結局ジョニーは戻ってこなくて俺たちは眠ることにした。
次の日も次の日もジョニーは部屋に戻ってこなかった。ジョニーはみんなと同じ部屋じゃなくて一人だけ別の部屋で眠ることになったという。ジョニーは一人で寂しくないのかな。
そんなジョニーに向かってクリフは火付けのジョニーと呼ぶ。火付けのジョニーと呼ばれたジョニーは嬉しそうにどこかへ行く。
村の俺たちは怖かった。クリフはそんな俺たちに「ジョニーなんて怖くない」と言う。でも俺は知ってる。ジョニーはよくわからない怖い子供だって。
俺はいつかクリフがひどい目に合わされるんじゃないかって不安になった。だからみんなでジョニーがどこに行くのか様子を見ようと言った。
火付けのジョニーと呼ばれたジョニーはシスターのところに行って甘えていた。普通の子供みたいに見えた。それを見たクリフは「やっぱり怖くないだろ」と言う。
でもシスターに甘えていたジョニーがこっちに気づいてニヤニヤしていた。なんだかすごく不気味だった。それを見たクリフは「もうあいつに関わるのはやめよう」と言った。俺たちは火付けのジョニーに近づかないことにした。
何日かたった頃「今日はお風呂に行くんだ」とクリフが言う。お風呂ってなんだろう。
お湯につかってゆっくりする場所だと神父様が教えてくれた。
綺麗な服と布を持ってみんなでお風呂に行く。お風呂は男湯と女湯に別れているとクリフが教えてくれた。なんだかちょっと不安だけどみんな一緒なら大丈夫だ。
でもジョニーは違うみたいでシスターに付いていこうとして止められていた。
「ジョニーはあっちよ」
「僕、シスターと一緒に入りたい」
「困ったわね」
でもシスターと一緒に入るってことはアデラと一緒に入るってことで俺はそれは嫌だなと思って止めようとすると神父様が止めてくれた。
「ジョニーのことは私に任せて、あなたは女の子たちをお願いします」
不満げなジョニーと俺たちを残して女の子たちはシスターと一緒に女湯に入っていった。
みんなで男湯に入ると神父様がお金を払っていた。俺たちは神父様を待っていたけどジョニーはお風呂を知ってるみたいに服を脱いでかごに入れたあと布だけ持ってドアの向こうに行ってしまった。
街の子供やジョニーの真似をして村の俺たちも服を脱ぎ付いていく。
ドアの向こうはみんな裸でお湯につかってない人たちは体をこすっていたけど白い変なものをつけていた。あれはなんだろう。
「これは石鹸だ。こすると白い泡が出てきてそれで体を拭くとすごく綺麗になるんだ。お風呂に入る前に体を綺麗にするんだ」
白い石みたいなものが石鹸だとクリフが教えてくれた。村で使ってた石鹸とは違うな。そう思ったけどジョニーは石鹸を知ってるみたいだった。体を泡だらけにしてなんだか楽しそうにしている。
俺たちも石鹸で体を洗ってみるとすごく汚れが出てきた。毎日体を綺麗にしてるのに不思議だな。
体が綺麗になったあとお湯につかる。ちょっと怖かったけどみんな気持ちよさそうにしてるしジョニーも気持ちよさそうにしてた。だからきっと大丈夫だと思って入った。でもすぐに頭がボーッとしてきて不安に思って神父様に聞いたらすぐに出なさいと言われた。
ボーッとするのが治ったあと、みんな気持ちよさそうだからまた入って、またボーッとしてを繰り返した。お風呂はとっても気持ちよかった。
外に出ると少ししてシスターやアデラたちも出てきた。アデラはいつもと違うように見えた。そんなアデラを見るといつもよりすごくドキドキした。
いつもよりすごくドキドキしてその日は眠れなかった。なんだか不安になってクリフに相談してみようと思った。クリフは6歳で俺たちより一個上だ。母さんが教えてくれなかったことを知ってるかもしれない。
「デュークはアデラのことが好きなんだろ」
「俺はみんなのことも好きだよ」
「そういう好きとは違うよ。デュークはアデラと夫婦になりたいんだよ。結婚したいんだよ。そういうのを恋って言うんだってさ」
俺はアデラに恋をしていた。
恋をしていると気づいてからアデラを見るときのドキドキは強くなった気がした。でも孤児院に衛兵さんがやって来るようになった。その衛兵さんはイケメンでアデラはキラキラした目で見ていた。俺はすごく不安になった。




