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002, 1-01 奪われた幸せ
前回のあらすじ
チュンチュンチュン
「今日から三歳ね」
幸薄そうな女が俺に話しかけてくる。
近くにいる優男が俺の頭をなでている。
ここはどこだ。困惑する俺。
俺には家族がいた。父と母、妹と俺で4人家族だ。
父と母との関係は良好だが、妹とはよく喧嘩をした。兄妹などそんなものだ。
それでも俺は妹を大事に思っていたし、両親も大事に思っていた。家族も俺を大事に思っていてくれただろう。
俺には友人がいた。親友と呼べるような奴らじゃないが、毎日つるむ友達だ。
学校帰りに遊びに行き、たまにクラスの可愛い女の子も交える。楽しいひと時だ。
きっとそういう日常が、幸せというものなんだろう。
そう、俺は幸せだったのだ。
「きゃーーー」
通学途中に後ろから悲鳴が聞こえる。
振り返ると真っ赤なスポーツカーが歩道に突っ込んできて女性を轢き、こちらに向かってきた。
そこで俺の記憶は途切れていた。
「どうしたの?」
幸薄そうな女が俺に問いかけてくる。
だが俺は、それに応える余裕がない。
俺は幸せだった。それを奪われたのだ。
殺しやがって・・・。よくも俺を殺しやがって・・・。
俺は怒りに震えていた。