137, 0-82 幕間・精霊女王の就寝
・フニャフニャ=ムメ=ヒャワヒャワの就寝
前回のあらすじ
金髪縦ロール
「ふふんっ!遅れてきたのが運の尽き・・・もうお前は要無しなのです!」
ビシっと指を突きつけ言ったメーリに金髪縦ロールの女性は言い返します。
「あなたがそんな料理を作れる訳ありません・・・インチキです!」
「見苦しいですよこの駄肉!」
「その呼び方はおやめなさい!」
「駄肉は駄肉なのです!」
「このへっぽこ!」
「駄肉!」
「おたんこなす!」
「駄肉!」
「まぬけ!」
「駄肉!」
「駄肉しかないんですの貴女は!!」
「駄肉は駄肉で十分なのです!!」
(不毛な争いですね・・・)
私はメーリに近づき――耳元で声を小さく訊ねます。
「(彼女はどなたですか?)」
「ひゃわっ!(み、巫女さま、耳に息が・・・)」
メーリは顔を赤らめ笹穂耳を隠す。
「(すみません、メーリ。耳は敏感みたいですね)」
「(大丈夫です。巫女様がお望みならいつでも・・・あっ、いえ、あの・・・あの女は駄肉・・・じゃなくてその、カテリーナです。巫女にはお世話係の巫女見習いが一人つく決まりなのに、あいつは議員の父親のコネを使って毎日やって来るのです。『お料理が出来ないお世話係など聞いたことがありません』って馬鹿にしてきて・・・、嫌なヤツです)」
「(そうですか)」
目の前で内緒話をしたせいかカテリーナは涙目で言いました。
「も、もうわたくしはいらないのですね・・・。女王様、今までカテリーナは幸せでした。どうか・・・研究を成功させてくださいっ!」
「待ってくださいカテリーナ。せっかく来たのですから一緒に食べましょう」
「みっ、巫女さま何を?!」
カテリーナを呼び止めると、メーリは焦った様子。
「この料理、私が作ったんです。ぜひ食べて、感想を聞かせてください」
「女王様がお料理を?!」
目を見開いて驚いたカテリーナは――メーリに視線を移して半眼に閉じ、あきれた様子で言います。
「お世話係の貴女がお料理を作ってもらうとはどういうことですの?」
「ち、違うのです。私もちゃんと作ったのです。でも、今日はたまたま失敗してしまって。だから・・・もうお前は、来なくていいの、です・・・」
メーリは目をそらし――だんだんと声を小さくして言いました。
食事の準備はどうやら重要な仕事らしく、俯くメーリを見ていられなくなり――シチューをよそってスプーンを添え、カテリーナに言います。
「メーリはお料理が少し苦手なだけで優秀な娘ですよ。さぁ、喧嘩は止めて食事にしましょう」
「巫女さま~っ!」「女王様!」
「さぁ、みんなで食べましょう」
「食べますっ!巫女様のお料理!おいしいです!」
「女王様がそうおっしゃるのでしたら・・・お、美味しい。これは本当に女王様が・・・」
「駄肉は疑うのですか?」
「い、いえまさかそんな!とても美味しいので驚いて・・・。女王様、私はこれからも・・・お食事を作りに来てもいいのでしょうか?」
「もう駄肉は――」
「ええ、来ていただけると助かります」
「あ、ありがとうございます女王様!ええ、ええそうですとも。女王様は大事な使命がおありなのですから、ここは正式にメーリと交代して――」
「どさくさに紛れて何言ってるですか!」
「あら、貴女がお料理できないのは事実ではなくて?」
「そ、そんなの・・・明日こそ、必ず・・・」
「無理に決まってますわ」
「うぅ・・・、やっぱ嫌なヤツですこいつ!巫女様、こいつ追い出しましょう!」
「出ていくのは貴女の方ですわ!」
「巫女見習いは私です!お前じゃ――」
犬猿の仲というやつでしょう。結局、カテリーナが帰るまでずっと喧嘩は続きました―――。
「片付けは私一人でやります!」と頑ななメーリに頼み――私は自室で休むことに。
ベッドに入り、明日の予定を考えているとノックの音が―――。
「なんですか?」
そう、ドアに向かって声を掛けると――恐る恐るといった様子でゆっくりとドアは開き、その影に隠れてメーリが言います。
「巫女さま・・・今日、一緒に寝てもいいですか?」
「ええ、いいですよ」
いつも一緒に寝ていたのでしょうか――近づいてくるメーリはネグリジェ姿で窓から差し込む朧げな光を頼りに歩く姿は美しく、けれど不安げな表情で――二人では少し狭さを感じるベッドで身を寄せる。
「ずいぶん元気がないですね。どうしたんですか?」
「巫女さまも・・・やっぱり料理ができたほうがいいですか?」
弱々しく言うメーリの頭を撫でて―――。
「お世話係がメーリで、私はよかったと思っていますよ」
「本当ですか?」
「ええ、それよりメーリこそ、今の私でいいのですか?以前の私のほうがよかったのでは?」
前世の記憶を取り戻す前の私――流石に私が転生するためにこの体の持ち主が死んで、というわけではなく、前世の記憶が戻ったことで今生の記憶と人格が失われたのでしょう。そうだとしても、この娘が慕っているのは以前の人格であるのですから―――。
「そんなことないです。今の巫女さま大好きです。前の巫女さまに巫女様っていうと『女王様とお呼び!』っておでこペシッってされて・・・。えへへ、あれはあれでなんだかドキドキしたんですけど、『痛いの飛んでけ~』や、頭なでなでのほうがいいです」
(SMプレイでしょうか・・・いえ、事実女王様なわけですからプレイではないですね)
「それに、前の巫女さまは絶対一緒に寝てくれたりしませんでした。追い返されました」
(一緒に寝ていたわけではなかったのですね・・・)
「はぁ~~~巫女さまイイ匂いがします。巫女さま~~~」
私の胸に顔をうずめ匂いを嗅ぐメーリの頭を撫でながら――私は思います。
(明日は追い返しましょう)




