136, 0-81 幕間・精霊女王の料理
・フニャフニャ=ムメ=ヒャワヒャワの料理
前回のあらすじ
ᛃᛟᚹᚨᛁᛋᛁᚾᛏᚨᛁᚲᛁᛃᛟᚢᚲᚨ
随分と長く話し込み――暗くなり始めるとメーリは言います。
「巫女様、そろそろ帰りましょう」
「どこに住んでいるんですか?」
「祈りの場を出てすぐの家です」
神殿――祈りの場を出る。
先程、侵入者が騒いでいたときに見た景色――都市の中という事ですけれど、色とりどりの草花に溢れ、小川まで作られている。
高い壁に覆われ閉ざされている広い敷地に住んでいるのは女性だけ――乙女の花園という名前はぴったりですね。
「あそこです!巫女様と私の家です!」
「一緒に暮らしているのですか?」
「お世話するのが私の仕事なのです!!」
メーリが指した先を見ると――女王が住むとは思えないようなこぢんまりとした2階建ての一軒家。
見た目は前世のコンクリート住宅のよう。開き戸の玄関扉を開け土足で入るメーリに続く――。
リビング、ダイニング、キッチンを一緒にした広い部屋――家電製品のように見える物は魔法具でしょう。
「今から御飯を作ります・・・。今日こそは・・・やるのです!」
「今日こそは?」
「任せてください!!」
少し不安ですけれど、メーリはなかなか優秀な人物のようですし、大丈夫でしょう。
メーリが料理を作っている間――私は鏡の前に立つ。
(美人ですね)
この世界にいるエルフという種族、前世のアニメで登場した美形種族のようで――目鼻立ちの整った知的な顔と琥珀色の瞳。
輝くストロベリーブロンドの髪はセミロングでストレート、柔らかく滑らかな触り心地。
白いローブを脱げば――ノースリーブの白いドレスにすらりと伸びた手足。
ドレスなど当然着たことはないので、少し苦労して脱いでみると――下着は前世の女性用下着と同じように見える。
私が自分の下着姿を見ていると―――。
「み、巫女様!?なにを・・・おふろ・・・お風呂はあっちです!」
右手で奥のドアを指し、左手で目を隠すメーリ。けれど、指の隙間から覗いています。
「ただ服を確認していただけです。メーリ、着替えはありますか?」
(出来ればドレスではなく、もっとラフな・・・、ズボンがいいですね)
「お、お着替えですか・・・。あっ!あります!待っててください!すぐに持ってきます!!」
走り、階段を上るメーリ。ドタバタと音が聞こえたと思えば――飛ぶように戻ってきました。
「これです!この中に入ってる服を着てください!!」
「それは、魔法の袋ですか?」
「そうです!いろいろ入ってます!」
強く握りしめていた袋を受け取り、手を入れてみると――中に入っている服の形状や重さ、素材も何となく分かる。
(魔法、凄いですね・・・。けれど――)
「あの、メーリ?もっと普通の服はありませんか?」
「これ、普通の服です!いつも巫女様は着ています」
「チャイナ服やセーラー服、バニーガールの衣装をですか?」
「き、記憶が戻ったんですか巫女様!!」
「いえ、戻ってはいませんが・・・これは、違いますよね」
魔法の袋を返すと――バツが悪そうにメーリは受け取る。
「偉大な異世界転生者様の知識を元に制作された服です。異世界ではこういった服が人気なのです。私はすごくいいと思うんです。でもみんな着てくれなくて・・・巫女様もきっとお似合いになると思うのですっ!!」
(異世界転生者・・・オタクですね絶対)
エルフだから精霊魔法が使えるはずだと言い、自分の好みの服を人気だと広めようとする。もしかして下着も異世界転生者が・・・?あまり、偉大な人物とは思えませんね。
ドレスとローブは洗濯の魔法具に入れ――2階の自室に入る。
8畳ほどの部屋には机と椅子に本棚、シングルサイズのベッド――ウォークインクローゼットに入り、シャツとズボンを選ぶ。普通の服ですね。
どうせ服を脱いだのだからとそのまま一階の浴室へ――魔法具を起動すれば――浴槽はすぐにお湯で満たされる。
(文明レベルは前世と変わらない?木製の家具に家電製品のような魔法具。服も前世と同じものは再現できている・・・。神官兵とやらの腰には剣がありましたけれど・・・、料理はどうでしょう・・・食文化からなにか―――)
この世界について考えながら湯に浸かり、お風呂を出ると――真っ黒な物体が載ったお皿を持つメーリ・・・。
「ごめんなさい巫女さま・・・今日もダメでした・・・」
(いつも、失敗してるんですね・・・)
冷蔵の魔法具を開けて中を見ると――前世のそれと変わらない食材。
(これなら・・・)
鍋で野菜と肉を煮ている間、フライパンにバターを溶かし玉ねぎを炒め小麦粉を加える。鍋のアクを取り、玉ねぎを加え塩胡椒で味付け。アクを取りながら混ぜ――ミルクを加え、小麦粉を足してとろみをつけながら煮込んで味見し、味を整える。
(コンソメがないので薄い気も・・・まぁ、いいでしょう)
クリームシチューの完成です。
「メーリ、料理ができました。パンは――」
後ろを振り返り言うと――メーリは、信じられないものを見るような目で言いました。
「み、巫女さまが・・・お料理を・・・?!」
「料理くらい誰でも・・・」テーブルの上にある黒焦げの料理を見て――「誰でも、とは言いませんけれど、作れる人は多いですよね」
「でも巫女さま・・・今までお料理作ったことないです・・・」
(失敗しましたね。これは、誤魔化せないかも・・・)
「そうですか?でも出来ましたよ」
明るい調子でそう言って味見用の小皿を差し出すと――メーリは「か、かんせつ・・・いただきますっ!」と言いシチューを飲む。
「おいしいです。お料理上手です巫女さま~。すごいです!」
「パンはありますか?」
「パンはこの棚に、これをこの魔法具で温めるんです。私にもこれは出来ます!」
「では、お願いします」
テーブルの上に料理を並べる。
食前の作法はないのかメーリは何も言わずに食事を始める。
私も料理を食べようとスプーンを持つと――玄関扉が開く。
「お、遅くなって申し訳ありません女王様!すぐに食事の準備を――食事・・・お料理がある?」
メーリと同じ白いローブ姿。けれど大きな胸がバストラインを強調し、どこか扇情的に見える。榛色の瞳をした金髪縦ロールの女性・・・金髪縦ロール、いるんですね。
「まさか、メーリが料理を・・・」
この世の終わり――といった様子で、その女性は呟きました。




