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異世界転生俺TUEEE~女難の冒険者~  作者: 頭のおかしな神
第五章 赤エルフと青エルフ
134/139

134, 0-79 幕間・精霊女王の回避

・フニャフニャ=ムメ=ヒャワヒャワの回避

(研究が終わりました・・・)



いい終わり方ではありません・・・いえ、はっきり言いましょう。悪い終わり方です。研究は、失敗しました。

一つの仮説があり――様々な実験を経て――たとえそれが上手く行かずとも――失敗から学び――後世に誰かが成功してくれる――そうして長年引き継がれてきたプロジェクト。

昨日の実験で導き出された結論―――。

(仮説段階で致命的な間違いがありましたね・・・)

徹夜続きで妙なテンションの中、一人でおこなった遊び半分の実験があんな結果になるとは・・・、どうするべきか。研究チームのメンバーに知らせるべきでしょう。それは当然として、けれど―――。

(どう伝えれば・・・)

せめて副産物があるとか・・・実験データが他の研究の参考になるのなら意味があったのですが・・・、そんな事は一切なく――長年、研究費を食いつぶしてきただけ。




実験の後、現実逃避したかったのか――久しく帰っていなかった自宅へ帰り、夕食をとり、入浴、撮りためていたアニメを整理し、就寝――そして今、研究所へ行くために運転しています。

録画するだけで見なくなってしまったアニメ――HDDを圧迫し、ネットの評価を元に過去作品を消していくむなしさ。

自分ではライトオタクだと思っているけれど――アニメを撮り溜めていると現実で言えば『オタクだったんですか~』と女性に笑われ――ネットに書き込めば『ニワカが!』と罵倒される。

(私はオタクなのか、オタクではないのか・・・)

ええ、もちろん、こんな事を考えているのは現実逃避のためです。

最後に見たアニメは、女子高生が軽音楽部で何故かお茶会を開いていた、日常系というジャンルのアニメ。

その後は確か・・・空から女の子が降ってくるジャンルのアニメが流行ったらしく・・・それは果たしてジャンルなんでしょうかね。

今は異世界ジャンルが流行っているとかもう廃れたとか・・・。

ここは前向きに考えましょう――研究は失敗したけれど、撮り溜めたアニメを見るチャンスだと!




気持ちを切り替えたちょうどその時、前方で異常事態が―――!!

駅近くの交差点で信号を無視し、横断歩道を渡っていた若者と老人を跳ねて、速度を緩めることなく対向車線――つまり私の方に向かってくる真っ赤なスポーツカー。

クラクションを鳴らしながらハンドルを切り――そうして―――そうして、そこまでは覚えています。




「どこなんでしょうね、ここは」

20メートル四方の白い部屋――天井の高さは約3メートルほどでしょう。左右の壁にはガラスのない窓が3つ、奥には祭壇さいだんと壁画があり、神殿のような建物なのかと思えば――部屋の中央には何故か机が一つ、本が数冊積まれている。

「病院ではありませんね」

言葉にし、確認する。ずいぶんと現実感の強い夢――けれど夢だということは、はっきりしています。

なぜなら私の胸部が膨らんでいるからです。まるで女性のよう――そして、股間にあるはずのものも無くなっている。

股間は気の所為――胸は、記憶にない入院生活で太ったとか・・・説明がつかないこともないですけれど・・・。

「光ってますね」

壁画に描かれている4色の球体―――それと似た光る球が空中をただよい、不規則に動いています。

事故による脳損傷か何かの影響でしょうか・・・、いいえ、そろそろ認めましょう。

「異世界転生ですね、これ」

どうやら私は事故で死に、女性に生まれ変わったようです。

まさか、アニメを見ずに実体験するとは・・・。

「どうせなら・・・空から女の子が降ってくるアニメがよかったですね・・・」

前世でそういう出会いがあれば――いいえ、もし結婚していたらこんなに落ち着いてはいられないでしょう。

両親を早くに亡くし、独身で家族がいなかったからこそ気楽でいられる。

「女性と出会うにしても・・・普通の出会いがいいですけどね」

今生では出会いとかあるんでしょうかね、と窓から空を見上げると―――。



「ひゃっ、ひゃわわっ!どいてください巫女さま~~~!!」

(空から・・・女の子・・・?)



窓から勢いよく入ってくるあわい光をまとった女性を私は――回避する。

この体にもまだ慣れておらず――慣れていたとしても女性を受け止めるなんて出来ません。

下手に女性の着地点にいれば大事故でしょう。

私の考えは間違っていなかったようで――女性は見事に足から着地し、勢いを殺すためか膝を曲げる。

「は~~~~っ。じーんって・・・じーんってします・・・」

(見事では・・・なかったかも・・・)

しゃがんだ体勢のまま動かない女性。

「大丈夫ですか?」

「無理です巫女さまーー魔法使ってください。回復魔法使ってください」

(魔法・・・?)

「い、痛いの痛いの飛んでいけ~~~?」

女性の足に手をかざして言うと――女性は顔を上げ、心配そうに言います。

「ど、どうしたんです巫女様・・・。巫女様が冗談を言うなんて・・・」

「痛みが引くかと思って言ってみました・・・」

「い、痛み・・・?!痛くないです!痛くなくなりました!!巫女様すごいです」

「効いたのであればよかったです」

どうやらこの世界には魔法があるようですね。

立ち上がった白いローブを着た女性は、きれいな緑色の長い髪に翠眼すいがん。神秘的な美しい顔立ち、けれど幼さが残っており18歳前後の少女に見える。そんな少女の耳は笹穂耳ささほみみ、エルフ―――。

私が女性を観察していると――女性も私をじっと見つめて・・・抱きついてきました。

「なんだか今日の巫女さま優しいです!大好きです!!」

美少女に抱きつかれる――嬉しいことではありますが、今生の私は女性だからか特に何も感じません。前世の私なら・・・、間違いなくパニックでしょうね。セクハラを疑われたらどうしようと・・・。

少女の頭を優しく撫でながら訊ねます。

「どうして窓から入ってきたんですか?」

すると少女は私からパッと離れ、神殿の入口を睨み言いました。

「そ、そうでした!大変なんです!侵入者です!!」

「侵入者?」

私も入口に意識を向けると――遠くから叫ぶ男の声が・・・。

「女王様ーーー!どうか!どうか正しき信仰を!!どうかーーーっ!!!」

「黙りなさいっ!こんなところまで侵入して!!」

入り口から顔だけだして覗いてみると――眼光の鋭いエルフの男が武装したエルフの女性数人に捕らえられ、どこかへ連れて行かれます。

「女王様ーーー!女王様ーーー!」

「あいつはきっと追放処分です。いい気味なのです」

私の隣で隣で憎々しげに言う少女。

(私は巫女らしい。ということは・・・?!)

「君は・・・女王なのですか?」

とてもそうは見えない。

「み、巫女様?なんかさっきから変ですよ?大丈夫ですか?巫女様が女王様ですよ?」

「実はですね―――」

隠したままでは情報も得にくいので――記憶喪失のようです、と嘘をついてみれば―――。

「た、たいへんです!!か、かいふく・・・回復が得意な人連れてきます!!!」

「あまり大事にはしたくないので・・・。貴女が知っていることを教えて下さい。記憶が戻るかもしれません」

「わ、わたしが巫女様に・・・教える。・・・えへへ、いいですよ!教えちゃいます!!」

(大丈夫でしょうか・・・)

少し不安ではありますが、女性兵士に訊ねるのは怖いので、彼女に頼ることにしましょう。




私の名前は、フニャフニャ=ムメ=ヒャワヒャワ。

一体誰が付けたんでしょうね、こんな変な名前・・・。やはり親ですかね。異世界なら文化が違うかも・・・女王であれば即位後に変わるとか・・・巫女が代々引き継ぐ名という可能性も――。

彼女の名前はメーリ、ずいぶんと短い。名前は誰がつけるのか訊ねれば――この世界でも親が決めるのが一般的らしく、けれど家族名などは無いようで、そうなると、長く変な名前は全て親が考えた事に・・・。

(なぜこんな名前に・・・?)

私の両親はすでに天寿を全うしたとのことで――名前の由来は不明ですね。

私が自分の名前を聞いて落ち込んでいると考えたのか――メーリは慌てた様子でパタパタと手を振り、ぐっと握りしめ、言います。

「私はフニャ様の名前大好きですよ!!」

(フニャ様・・・)

まぁ、いいでしょう。



ここはエルフの国、マルファルス聖王国。

そこで私は巫女であり女王、というより――巫女のトップが女王と呼ばれるそうです。

精霊について研究する者が巫女であり――最も結果を出したと認められた女性が女王に選ばれる。

どうやら女王と呼ばれているだけで実権はなく、政治は議会が決めているとのこと。女王を選ぶのも議会、選挙王政のようで女王は精霊教と国家の象徴―――。

ただし、議員も巫女も神官一族から輩出されるそうで――民主主義ではなようです。

そう説明してくれたメーリは巫女見習いけん、私のお世話係。将来は巫女になり、優秀であれば女王に―――。

「必ず女王になって見せるです!!」

(このが・・・女王に・・・?)

女王の選出は、即位している女王が亡くなった後に行うそうなので・・・私には関係ありませんね。



なんの因果か今生でも研究者。

この世界について学びつつ、精霊研究をしてみましょう―――。




'TS転生エルフの精霊研究メモ'



これはあくまで、私の個人的なメモ書きです。

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