132, 0-77 幕間・双子エルフの別離
・イフリンとディーヌの別離
前回のあらすじ
聖者・ジョニー
4人は滑車の魔法具に乗り――チャイムの魔法具を鳴らします。
「はいはい、どなた~」
玄関扉を開けたのは、ソーニャとよく似たエルフの女性。
「聖者様はいらっしゃいますか?」
「聖者様?」
「聖者・ジョニー様です」
「ジョニーさんのお知り合い?」
「はい、ソーニャを送り届けに来たのです」
「じゃあ、あなた達がソーニャの面倒を見てくれていた街エルフね。さぁ、入って」
部屋のソファーには眠るジョニーの姿。
セリーナは近づき――少し大きな声で言います。
「起きろジョニー!」
「あの、ジョニー様はお疲れなのでは?」
「勝手にいなくなって心配させたのだ。一言いってやらねば・・・。ジョニー起きろ!ジョニー!おい起きろジョニー!!」
「うるさい」
「五月蝿いとはなんだっ!!」
セリーナは、わざわざ身体強化の魔法を使い――ジョニーの頭を殴ります。
「セリーナさん、暴力は・・・」
「ジョニーならこれぐらい大丈夫だ!」
ジョニーは迷惑そうに目を開け――シーツがモゾモゾと動き――。
セリーナは、動くシーツとジョニーの顔を交互に見て――勢いよくシーツをめくります。
ジョニーの上には幸せそうに眠るソーニャの姿が―――。
「信じていたぞ!ジョニー!!」
お腹が空いたというヘルガの言葉で――ソーニャの母、ユリヤが朝食をご馳走してくれる事に。
朝食の間――集落に興味があるのか、ジョニーはユリヤに尋ねます。
「集落に壁は作らないんですか?」
「あったほうが安全だけれど、集落はとても広いし・・・集落全体を囲む壁を作ると森の生態に大きく影響を与えてしまうから。エニュモルマルファルス様も森は大事にするように、とおっしゃっていますから、畑や家も森に影響を与えないように考えて作っているのよ」
「苦労が多そうですね、お疲れでは?」
「大丈夫よ、もう慣れたものだわ」
パンを囓るソーシャを――ユリアは、どこか遠くを見るような目で眺め――。
「ソーニャ、ミルクもちゃんと飲みなさい」
「ミルク・・・きらい」
「好き嫌いしないの!ちゃんと飲まないと大きくなれないわよ」
「う~~~~」
コップを持って可愛らしく唸るソーニャを見て、ジョニーは言いました。
「貸してみろ」
「ジョニー、のんでくれる?」
「いや、お菓子を作ってやる」
「お菓子・・・?」
「おっ、アイスか?」
どうやらヘルガは知っている様子。
「なにか果物はありますか?」
「木苺があるわ」
ジョニーは大きな器と砂糖を取り出し――ユリヤから受け取った木苺に砂糖を加えながらフォークで潰す――ソーニャから受け取ったミルクを流し入れ――水差しに入ったミルクも足して――魔法を使いました。
(火の精霊・イフリートン様のお力ですね)
混ぜながら低温で温め――ミルクにとろみが生まれると――別の魔法を使いました。
(水の精霊・ウンディーヌン様のお力です)
そうして冷やされたミルクは――液体から固体に、アイスの完成です。
ソーニャは興味津々な様子でそれを眺め――ジョニーはアイスをすくって小皿に移し、スプーンと一緒に渡します。
「食べてみろ」
あんなに嫌がっていたミルクのはずなのに――ソーニャは期待に満ちた顔をしてアイスを食べて―――。
「つめたい!あまい!おいしい!!」
興奮したソーニャのアイスを食べるペースは速く――ジョニーは「ゆっくり食べなさい」と注意しながら、アイスを皆に配ります。
「やはりアイスは美味しいな」
「不思議なお菓子ね。作り方も簡単だし、家でも定期的に作ろうかしら」
ユリヤの言葉を聞いたソーニャは小皿に向いていた顔を上げ――期待に満ちた目をして言います。
「ミルク、ミルクはずっとアイス!!」
これからミルクを出す時はアイスにして!――そんな思いが伝わってきます。
「ミルクをしっかり飲んだら、アイスを作ってあげるわ」
「う、う~~。アイス・・・ミルク・・・アイス」
ユリヤの厳しい言葉を聞いて――ソーニャは葛藤しながらもアイスを口に運びました。
双子エルフの元にも配られたアイス――木苺の香りでミルク独特の臭みはなくなり、冷たい食感とともにやさしい甘さとほんのりとした酸味が口に広がります。
『力を合わせれば大きな事が出来る』
そんなジョニーの言葉を思い出し――双子エルフは感銘を受けました。
そうして、とうとうやって来たお別れの時―――。
涙を流すソーニャ。
「ジョニー、きえちゃうの?」
「ああ、お別れだ」
「どうしてきえちゃうの?」
「俺にはやらなければならない事があるんだ」
(聖者様には、偉大な使命がおありなのでしょう)
「いっしょに行く」
「家族と一緒にいるのが一番だ」
危険な旅には連れてはいけない――そんなジョニーの想い、けれどソーニャは納得できません。
「ジョニー、かぞくになろう?」
「エルフの国ではエルフと普人の結婚を禁じている。だから家族にはなれないんだ」
「いやーーー!じょにーいかないでーーー!!!」
泣き縋るソーニャに――ユリヤは優しく言います。
「将来大きくなったら普人の国に行けばいいわ。そうしたら結婚できるから、ね?」
「うっ・・・大きくなったら、ジョニーけっこんしてくれる?」
「ああ、ミルクをたくさん飲みなさい」
「・・・がんばる。ばいばい、ジョニー」
「ああ、またな」
なんとかジョニーとの別れも終わり――双子エルフもお別れを言います。
「さよならソーニャ。もう、勝手に街に来てはいけませんよ」
「ばいばい、リンリン」
「お元気でソーニャ。お母様の言うことをよく聞くのですよ」
「ばいばい、ディーディー」
「じゃあ、もう帰るか」
「ヘルガーもばいばい」
「おう、じゃーな」
ヘルガは気軽にお別れをして――セリーナはウルウルとしながらソーニャを抱きしめます。
「強く生きるんだぞーー!」
「やぁーーーーーー!!!」
頬ずりするセリーナと嫌がるソーニャ――結局最後までソーニャはセリーナを拒絶しました。




