126, 0-71 幕間・双子エルフの邂逅
・イフリンとディーヌの邂逅
前回のあらすじ
ブヒブヒッ?!
街に住む父に会いに来たと言うソーニャを連れて帰ると――双子エルフの母は驚きます。
「その子はどうしたの?!」
事情を話せば親元へ送り返すために冒険者ギルドへ依頼を出す母。
しかし、誰も受ける様子がありません。
迷子の子供を送り届ける簡単な依頼――けれど、街エルフと森エルフでは信仰が違います。
良識ある人間ならともかく、あまり賢くない冒険者では―――。
依頼は一旦保留にし――他種族の冒険者が街を訪れたら話を持ちかける事にしました。
森を一人で歩いてきたソーニャ。
どうやら身体強化を使えるようです。
(魔法の才能がありますね)
幼いソーニャと過去の自分達の姿を重ね――双子エルフは面倒を見ることにしました。
髪色に合わせた黒い色の魔法使いの帽子を買い、ソーニャの頭に固定します。
ポーションの作り方を教えれば――すぐさま理解する賢いソーニャ。
そんな可愛く賢いソーニャがある日、突然いなくなります。
双子エルフは心配し探しに行きます。
子供が行きそうな場所を探すも見つからず――父親に会いに来たという言葉を思い出し――たどり着いたのは酒場のある通り。
一軒の酒場から少し離れた場所でソーニャが悲しげな顔をしています。
「心配したんですよ」
「さあ、帰りましょう」
双子エルフが声をかけると――ソーニャは言いました。
「おとーさん」
ソーニャの視線の先には酒場の前で酔いつぶれた男の姿――信仰を捨て、街に来た男を見て双子エルフは言います。
「あれはお父様ではありません」
「お父様はもういないのです」
悲しむソーニャの手を引いて家に帰ります。
次の日――朝からせっせと薬草を潰すソーシャ。
(今日はそっとしておきましょう)
一心不乱なその様子に双子エルフは気を遣い――二階でポーションを作ることにしました。
時間が経ち――そろそろ夕食の準備をしなければと手を止めると―――。
「そんなわけあるかっ!」
一階からずいぶんと喧しい女性の声がして階段を降りると――見知らぬ普人の男女と獣人の女性。
普人の男性と獣人の女性は何故か身体強化を維持しています。
「何を騒いでいるのですか?」
イフリンが尋ねると――母が余所行きの声で言います。
「じゃあ自己紹介をしましょう。私の名前はアリサ、冒険者ギルドの職員よ」
普人の男性が一歩前に出て、頭の横に手をかざし言いました。
「夢追い人のジョニーです」
(夢追い人・・・?)
おかしな名乗りをする普人の男性――けれど女性の名乗りで疑問は解消されました。
「私はセリーナ、冒険者だ」
『夢追い人』とは二つ名かなにかでしょう、と納得する双子エルフ。
「アタシはヘルガ。まぁ、冒険者だな」
身体強化を維持しているのも冒険者としての訓練なのでしょう。
「この二人は私の娘で双子なの」
「私の名前はイフリンです」
「私の名前はディーヌです」
「「私達も冒険者です」」
ソーニャは『夢追い人』に興味があるのか、ジョニーの周りをグルゴルと回りながら元気よく名乗ります。
「ソーニャ!わたしはソーニャ!」
「いい名前だな」
そう言ってソーニャの頭を撫でるジョニー。
ソーニャは目を細め、とても嬉しげです。
「なぁ~、飯はいつ食えるんだよー」
「そうだったわね。イフリン、ディーヌ、夕食の準備をお願い」
夕食を作る間に考えるのはソーニャの事。
母がエルフではない冒険者を家に連れてきたのはソーニャを森へ送り届けるためでしょう。
自分たちがソーニャを送ると言った時はひどく反対されたことを思い出します――けれど、会ったばかりの冒険者にソーニャを預けるのは不安です。
「私達も付いていきましょう」
「そうですね。ソーニャはずいぶんとジョニーさんに懐いていましたけど、どのような人物か・・・まだ判りません」
たとえ母に反対されても付いていくと双子エルフは決意します。
「「私達も一緒に行きます!!」」
夕食の席で強い意志を込めたその言葉に――母は笑って答えます。
「そう言うだろうと思っていたから、ジョニーさん達には同意をとっておきましたよ」
ずいぶんとあっさり同行を許され拍子抜けする双子エルフ。
最初から私達に任せてくれれば――そんな事を考えながらソーニャを見ると、ソーシャはジョニーの膝の上に座っていました。
「ジョニー、おイモ」
ジョニーはソーニャの言葉に頷き――お芋をフォークで刺し、チーズを巻きつけます。
(あれは・・・?)
ジョニーは料理の温度を下げるためなのか――冷たい風を魔法で生み出しました。
ずいぶんと繊細な作業にも拘らず――下手なエルフより上手に魔力をコントロールする普人のジョニー。
身体強化を維持する訓練の成果でしょう。
なにより料理を冷ます魔法には風だけでなく水の魔法も使われており、ディーヌは感心します。
(やはり水の精霊・ウンディーヌン様こそ偉大な精霊です)
イフリンとしては面白くありません――けれど美味しそうにお芋を頬張るソーシャを見れば何も言うことは出来ません。
「ごめんなさいねジョニーさん、ソーニャのお世話を・・・」
「ジョニーは子供の世話が得意だからな」
母と自慢げな様子のセリーナが会話をする間もソーニャの面倒を甲斐甲斐しく見ていたジョニーは手を合わせ、何事かを呟き食事をはじめました。
食前の祈りでしょう。
信仰心があるのはいいことです。
客人のための部屋を用意し――ソーニャを連れて挨拶に行きます。
「ジョニー、おやすみ」
「おやすみ」
「「おやすみなさい、ジョニーさん」」
「ああ、おやすみ」
挨拶を終え――今日はずっと薬草を潰してたいたからか、うつらうつらとし始めたソーニャを寝室に連れていきます。
ベッドに寝かせ――頭を撫でながら尋ねます。
「ソーニャはジョニーさんを気に入ったのですね」
「ジョニー、好き」
父親の代わりなのか――初恋なのか――しかし、言わねばなりません。
「けれどジョニーさんとは集落までの関係ですからね」
「ジョニー、きえちゃうの?」
「ただ、お別れするだけですよ。もう眠りなさい」
「ジョニー・・・」
眠ったソーニャが起きないように小声で話す双子エルフ。
「ずっと一緒にいた私達より、会ったばかりのジョニーさんに懐いてしまいましたね」
「少し悲しいですけど・・・ソーニャが喜んでいるのですから」
お別れの時はきっと大変でしょうね、と考えながら双子エルフもそれぞれの自分達の部屋に―――。
翌朝――ソーニャはいなくなってしまいました。




