114, 5-03 秘書と美脚
前回のあらすじ
なん・・・だと・・・!?
「それはどういうことだ」
俺は立ち止まり、痴女銀狼を問いただす。
「エルフはノリが悪いんだよ。前に来たときは結構長く滞在したけど、どいつもこいつも誘いに乗ってこねぇから適当な男を捕まえてみりゃ性欲があまりないって話だ。そんとき普人との結婚を禁じてるとか言ってたな・・・。アタシにゃ関係ないから聞き流したけど」
「娼館がないというのは本当なのか・・・」
「ああそれな。マジらしいぜ。ビックリだよな」
まさかの情報に動揺する俺。
伝説の娼館者への道は最初の一歩で大きく躓くことになるのか!?
「娼館などに行こうとしていたのか!」
当然のように殴ってくる家出令嬢。
人が落ち込んでいるというのに、血も涙もない女だ。
しかし、痴女銀狼の言うことが真実とは限らない。調査が必要だ。
そのためには家出令嬢と別行動を取る必要がある。
冒険者ギルドで情報収集したら今日はとっとと宿へ行こう。
宿の部屋は別々、バレることはあるまい。
本来ならこんなコソコソする必要はないのだが、殴ってくるからな・・・。
衛兵から聞いた通り道を進むとログハウスっぽい建物が見えてきた。
街では唯一の木造の建物という話なので間違いないだろう。
中に入り受付の様子をうかがう。
カナリッジのような状況にはなっていないようで5人の受付がいた。
だが受付に本はない。まぁ、あれは俺のアイディアで作ったからな。
情報は受付嬢から得よう。
ショートカットで緑髪、キリッとした感じの秘書っぽい女性受付の列に並ぶ。
メガネを掛けていれば完璧だが、この世界にメガネはない。
視力の低下はこの世界では病気という扱いで、魔法で治せる。
メガネを1から作り出すとなれば大金が必要だろうし、ニーズもない。
メガネフェチの異世界転生者限定アイテムだ。
俺はメガネフェチではないのだが、秘書エルフにはメガネを掛けてもらいたい。妄想で補おう。
そして俺の妄想が・・・始まらない。
家出令嬢が妨害してくる!!
「また妄想を―――」
だが、こいつの動きにもそろそろ慣れてきた。
「む、避けるな!」
(いや、避けるだろ・・・)
家出令嬢の拳を、避ける、避ける、避ける。さすが異世界転生者、俺強えぇ!である。
しかし、冒険者ギルドは結構な混み具合で、無理な回避を続けて転ぶ。
ポニテ女と遭遇した時と同じような展開になってしまった。
殴られる前に起き上がろうと手を伸ばすと――なにかスベスベしたものに触れる。
(なんだこれ。スベスベしてる。すごいスベスベしてる)
俺はそのスベスベした感触を楽し―――正体を探るために手を動かす。
「何をやっているのだお前は!!」
(痛い)
家出令嬢に殴られ、仕方なく顔を上げると・・・、俺が触っていたものは脚だった。美脚だ。
冒険者たちの視線も痛い。
起き上がり、美脚の持ち主に素直に謝る。
「すみません。転んでしまって」
美脚の持ち主、綺麗な薄紫のロングヘア、エルフなのでやはり美人だ。困り顔でどことなくエロい。
女性用スーツを着ているのでギルド職員だろう。
そんな美脚エルフの近くには、いつの間にか秘書エルフがいた。
秘書エルフは無表情で言った。
「切り落としますか?」
(切り落とすってなんだ?!)
物騒なことを言い出した秘書エルフ。
美脚エルフは腕を組み、人差し指を口元に当てている。なんかエロい。
「う~~ん。彼らには例の依頼を受けてもらいましょう」
「例の依頼・・・ですか?切り落としたほうがいいのでは?」
「普人なら問題ないでしょう」
「こんなので大丈夫でしょうか?・・・やはり切り落としたほうが―――」
「依頼を受けましょう!」
執拗に切り落とすという秘書エルフから逃れるために依頼を受ける。
どんな依頼かわからないが、切り落とされるよりマシだろう。
報酬無しで働けということなのか、冒険者証を提出せず、ギルドを後にする。
依頼内容は美脚エルフの家でするという。
相当面倒な依頼なのか。
まぁ、失敗しても違約金などは請求されないだろう。
冒険者への依頼というのはそういうものだ。
「腹が減ってきたな~~。そのへんの食堂に入ろうぜジョニー」
痴女銀狼が腕に絡んできながら駄々をこねる。
無視してもいいが、最近は冷たい食事ばかりだったし、エルフの料理がどんな感じなのか興味がある。
夕食には少し早いがどうするか悩んでいると美脚エルフが「うちで食事をお出ししますよ」と言ってくれた。
その言葉で大人しくなった痴女銀狼。
代わりに家出令嬢が近づいてきて言った。
「おいジョニー。どんな依頼なのかわからないのに大丈夫か?」
「大丈夫だ、問題ない」
「そうか・・・。ジョニーがそう言うなら大丈夫だな」
(こいつの中で俺の評価はどうなっているのか・・・)
ぱっと見、左右に分かれて真ん中でくっついているような前世の二世帯住宅っぽい2階建ての家の前で美脚エルフが止まる。
「ここが私の家よ。さぁ、入って」
土足文化のようで靴拭きマットの上で汚れをちょっと落とす演技をする。
ずっと列車移動なので汚れていないのだが、何もせずに入るのはな、という気遣いだ。
美脚エルフの案内で左の廊下を進み部屋に入ると・・・、黒髪ロングでローブを着て魔女帽子の小さきエルフが椅子に座っていた。
魔女帽子は前世でいうところのミニハットという大きさで頭にちょこんと載せている。
そんな小さきエルフは机の上で薬研を使い薬草をすり潰していた。
机の上には空のポーション瓶が数本置かれている。
こちらに気づいた小さきエルフが顔を上げる。
瞳の色は黄金で神々しい雰囲気だ。
(これは・・・まさかあれじゃないか?)
ファンタジー世界なら存在しても不思議ではない。
俺は小さきエルフに聞く。
「お歳はいくつですか?」




