適性検査⑩
フレインは少しの間だけ動かなかったが、決心がついたように腕に力を入れる。
そして一気に扉を開けた。
…………
…………
フレインはキョトンとしたような顔つきでこっちを見る。どうやらなにも感じないらしい。
「え…………えぇ?」
明らかに戸惑っている。部屋の中身を気にしたり、こっちを見たり、なぜか自分の脈を測ったり、頬をつねったりしてる。
「やったじゃねえかフレイン!! おめえ神刀使いの動術士になれるんじゃねえ!?」
続けてダンテも口を開く。
「神刀使いの動術士……違和感バリバリだな。まあ神刀なら刀術使わなくても、常時発動の刀の能力で相当な戦力にはなりそうだが」
フレインが俺たちの言葉を聞いて、急に顔が青ざめていく。どうやら事の重大さに気づいたらしい。
神刀を使える能力者なんてレア中のレア。そのうえ強力な戦闘要員になる。エイシェとの戦争戦況にも3%くらいは影響を及ぼすかもしれない。戦術が戦略になりうる力。
俺もダンテもセレジアだって、戦況に影響する力なんて持ってない。
「これでフレインもガッツリ戦争に関わることになるな!! お前のその能力が中心に作戦が作られるようになる。護衛も着くぞ!! 赤仮面や青仮面みたいなやつじゃなくて、能力者の護衛だ。お前に命令を出すのもイーロス見てえなやつじゃなくて、もっと上のお偉いさん……参謀直属の隊に異動かもな!!」
「これまでの作戦も十分にやってこれたフレイン・イクスクル中尉のことだ。これからのつらい作戦も乗り切られるぞ。お前の癖の傷つけカウントも、2桁、3桁に増える。それよりも殺傷カウントも別にカウントしたほうがいい」
ダンテも淡々とフレインにアドバイスする。
「いやいや!! ちょっとジュリア達も来てよ!! 何かの間違いだって!」
フレインが珍しく声を荒げてる。見てて滑稽だ。
「ごめんなフレイン、もうすでに熱い。寒いの逆接じゃねえぞ。冷たいの方だ。なあダンテ?」
「俺はまだ平気だ。あと4歩くらいなら近づける。熱いってことは炎の神刀か?」
「セ……セレジアは!!」
セレジアはえらく冷たい顔をしながら、
「ご想像にお任せしますわ」
とだけ言った。
「そんな……」
フレインは膝から崩れそうになっている。こりゃ久しぶりのドッキリ大成功じゃねえか?
●今日のドッキリ
「特殊刀適正検査の神刀に偽物をセットして、フレインが適合したと錯覚させる」