適性検査⑧
「腰抜けの功名だな」
「えぇ……」
「お、着いたな……」
目の前には一枚の扉。別に大きい扉ではない。でも、その扉の向こう側は…………部屋とは呼べないくらい広いものだ。ちゃんとした体育館くらいの広さ、高さがある。
「で? 誰が開ける?」
ダンテが言う。
「腰抜け開けろよ」
「え……これ……苦手なんだよね……」
フレインがセレジアの方を見る。
「わたくしが開けろとおっしゃいまして?」
「いや……そういうわけじゃないけど……セレジアなら平気そうだなって……」
「わたくしもあの感覚は慣れることができませんの……」
セレジアが嫌がるあの感覚……。ああ、もちろん俺も嫌だ。ダンテも顔をしかめる。
「じゃんけんしかあるまい」
ダンテがいらねえことを言いやがった。強引にフレインに開けさせようとしたが……。このパツキンギャンブラーめ……。
じゃんけん……っしょ
あいこで、しょ
あいこで、しょ
俺とセレジアが抜けた。ダンテVSフレインになる。
じゃんけん……しょ。
ダンテがチョキ、フレインがグー。ダンテの負け。
「言い出しっぺがやられてやんの!」
「黙れ、ジャリガキ。開けたまま閉めねえぞ」
「殺すぞ」
ダンテが扉に手をかける。俺もフレインも、珍しくセレジアも緊張している。
ネタバラシをすると、ここの広いスペースの真ん中にあるのは、『神刀』。文字通り神様が作った刀と言われている。本当かどうかは知らねえ。まあでもこれだけの能力を単体で出せるのは……人間にゃあ不可能かな……。
そしてこの神刀の能力は…………
ダンテが扉を開けた。その瞬間、流れ出てくるのは、大量の…………水だ。
その場の4人全員が、口を手で押さえ、うずくまる。
もちろん俺も例外じゃない。
口や鼻から水が流れ込んでくる感覚……。手で押さえていても無意味だった。
(さっさと閉めろやダンテ!!!!!)
ダンテは顔を真っ赤にしながら、扉に体重を乗せ、ゆっくりと動かす。
そして、長く感じる数秒後、扉は閉じられ、水はせきとめられた。
ぜぇ……ぜぇ……
はぁ…………はぁ…………
4人が息を深く吸い、酸素を肺に入れ込んでいる。
4人を襲った水はもう1滴も見当たらない。体も濡れていない。もちろん、口や鼻から水が落ちてくることもなかった。
神刀の能力は『水』。今、俺たちを襲った水は……幻覚だ。あ? 本当に幻覚なのか? 本当の水が流れてきて、ダンテが扉を閉めた瞬間に消えただけに思える。
でもまあ、息を止めても、手で押さえても気管の中を水が入ってくる感覚があるってことは……幻覚なのかな……。
ダンテ、セレジアを見ると、息をすでに整いかけていた。がしかし、フレインはその場にうずくまり、口を必死に押さえていた。
「嘔吐いてやがる……」




