適性検査⑥
フレインと検査場所へ移動中。エレベーターの中。
「ドツ・ダラ・ヴィーラだけでいいのに……」
フレインがぶつぶつと文句を垂れる。
「検査ってのは持つ持たないに関わらずやるんだろ? おめえ動術士なんだから、基本拒絶刀、人刀、神刀しかやらなくていいじゃねえか」
「そうだけど……」
「がたがた言うなや。その何倍もの刀を握っては《理解》する俺たち刀術士の身にもなれや」
「えぇ……」
「ヴィーラだって奪われたり、なくしたりするかもしれねえだろ?」
「いや……紛失はしないよ……。相当怒られそう……」
そんなこんなで検査場に到着。
さっき腹をつついた案内人はビクビクしながら俺のゲンチア、フレインのドツ・ダラ・ヴィーラを受け取った。
「おせえぞジュリア」
「ごきげんよう。フレインさん」
これで、いつもの(?)4人が合流。
次に検査する刀は『拒絶刀』
刀を扱う者を選ぶ刀のことだ。刀に選ばれなければ、《理解》するどころか、触れたり、手を近づけることさえできない。
フレインは刀術士ではないから特刀とかを検査する理由はねえ。でも拒絶刀は移動させるだけでも困難だ。持ち運びができる人がいるだけでもありがたい。触れられないのは敵も同じであるため、刀を奪われるリスクもガクンと減る。
前にエイシェの戦闘員を拉致する任務の時、拒絶刀を初めて戦場で見た。実際に握っているところは見ていないが……。
ダンテが刀の一本に手を伸ばす。だが、刀に30センチの距離を残して手が止まる。
「どうした? あとちょっとだぞ? 気合い見せろよ!!」
「気合いでどうにかなるもんじゃねえよ。てめえがやってみろや」
「どれ!!」
俺はずかずかと刀に近づくと、勢いに任せて右手を伸ばす。
だが、手は刀にすぐ拒絶され、止まる。
ダンテが伸ばせた距離の2倍くらいは離れていた。
「口だけかよ。情けねえ」
「うるせえ! セレジアやってみろ!」
セレジアは黙って、拒絶刀に手を伸ばす。俺よりダンテより手は刀に伸びていき、あと数センチで触れられそうなところで、セレジアの動きは止まった。
「惜しいですわね」
惜しいとは言いつつも別段、悔しそうとは微塵も思ってない表情。
「じゃあ、フレイン! 行け!」
フレインはのそのそと刀へ近づくと、そのまま動かなくなった。
「どうした? ビビってちびっちまったか? おい、替えのパンツと雑巾もってこい!」
「えぇ……そんなわけないでしょ……。手をかざせないだけ……」
フレインと刀とは1mくらい離れていた。4人のうち圧倒的に最下位だった。
「カスじゃねえか」
「そんなこと言わないでよ……」