適性検査④
俺の次はセレジアが握ってみる。
「…………」
セレジアが黙り込む。
「お? 感じるのか? 感じてんのか?」
「静かにしてくださいます?」
セレジアがいつものように、なんとも思ってないような、うわべだけの反論をする。
「この刀……《守護》ですわね?」
「うお、マジで《理解》しやがった」
「正解です」
案内人が言う。
「この刀……おそらく去年にも握りましたわ」
俺は案内人の方に視線を向けた。
「その通りです」
「んだよ、つまんねえ」
俺たちはその部屋にある結構な数の刀を握っては《理解》、握っては《理解》を繰り返した。
まあ……嫌になってくるよ……。なんかゲシュタルト崩壊みたいに頭がクラクラしてくる。だからダンテもセレジアも誘って気を紛らわしたんだよ。
その後、力特刀についても同じような作業を続けた。俺が《理解》できたのは合計で2本。ダンテは6本。セレジアは天性の才能なのか19本だった。
俺含め全員がそれら刀の使用を拒否。理由は簡単。いくら強くても、慣れねえ武器なんか使いたくねえからだ。
俺は自分が打ったゲンチアの《破壊》の能力が気に入ってるし、ダンテもあいつが打ったエイロの《苦》が気に入ってる。セレジアは知らん。あいつの使う刀の能力も知らん。
そして、ようやく大まかな作業が終了。この次に検査するのはは『人刀』だ。
人刀が保管されてる部屋に入る。その部屋には3本しか刀がない。
俺が先行して刀を握るが、なにも感じなかった。
人刀っていうのは刀の中に人の意識が宿っちまった刀のことだ。刀を使用していた刀術士がなんらかの理由で自分の意識を刀へ《入力》しちまった結果、体の方は死亡し、刀だけが残る。
宿った意識の存在を証明できるのは、人刀を《理解》して、宿った意識と会話できる刀術士が、その人しか知らないような内容の質問に回答することで間接的に証明される。
だが、人刀を《理解》し、宿った意識と会話できるやつはごくごくわずかだ。
そしてこれら人刀は会話できる人が見つからない限り、暗闇の中で孤独に無限とも思える時間を過ごし続けることになる。
「おい、そこの案内人。この人刀、《理解》できるやつはいんのか?」
「います。ただ、戦闘ができるわけじゃないので、時々ここへ来てもらってお話してもらってます」
「刀の中は……《理解》できる人がいねえと外の刺激が一切届かないんだろ?」
「そうです」
「なんかかわいそうだな……。俺なら意識が保てなくなっちまうよ」
「なんだジュリア。えらく多感なお年頃じゃねえか」
「うるせえ。おめえも人刀になって、永遠暗闇の中で自分と会話しろよ」