ダンテ行方不明 ⑨
「ちっ……追って来やがる」
ダンテは再びハンドガンを抜き、マガジンに残っている銃弾を全て敵に向かって掃射する。
その間に地面へ着地したダンテはすぐさま《加速》を使い、木がより密に生えている方へ逃げる。
敵もダンテが逃げた方向へ向かうが、ダンテは姿を消した。
(さっきはなんで気づかれた。まさか身術士か?)
敵は今の所、《加速》《排他》しか使用していないから刀術士か動術士であることは間違いない。その両方でもあるかもしれない。さらに、どこかチキン野郎を彷彿させる感知能力にダンテは身術士である可能性も考え始めた。現時点で敵の能力について何一つ絞れていない。
ダンテは木の陰からそっと敵を覗き見る。距離は約20m。一気に《加速》すれば気づかぬうちに殺せる位置だが、敵が身術士であり、《知覚》を発動しているのなら、おそらく失敗する。
しかし、ダンテはここで敵を殺害することをあきらめなかった。
地面に落ちている小石をゆっくり拾い上げると、《加速》を使って敵よりも向こう側の木に当たるように投げる。
小石が木に当たった瞬間、ダンテは飛び出した。
敵がふと、音のなった方向を向いた時、すでにダンテは敵の目と鼻の先にいた。
エイロを思い切り振り下ろすダンテ。敵の排他空間が斬撃を防ぐが、不意打ちが効き、敵の《排他》はぐっと削られた。
敵はエイロの刀身が自身に到達する前に、抜刀し、エイロをはじき返した。しかしダンテはその攻撃を予想していたかのように、右足で刀を蹴り上げ、すかさず、空いた腹部へ斬撃を叩きこむが、すぐに《加速》され、斬撃の届かない距離まで後退されてしまった。
「っにゃろ」
ダンテはエイロを構え直し、敵をジロリと睨む。
暗闇の中でもダンテは、敵が表情を変えずにまっすぐこちらをじっと見返していることが判別できた。
「てめえ、身術士か? あ?」
「…………」
敵は一切口を開こうとしない。敵戦闘員と話すことは何もないと言わんばかりに。
「頭のいい野郎だな。次は刀で勝負といこうや……」