ダンテ行方不明 ⑥
「なんだよセレジア!! ちまちましてねえでさっさと首でもナニでもハネてやれや!!」
本部からの音声からはジュリアの声が聞こえてくる。2人はジュリアの声を無視した。ジュリアの方も返答を期待したわけではなく、ただの野次を発してるだけだった。
場にはりつめる緊張感は依然重く、揺るがなかった。
敵もセレジアも相手を本気で殺すつもりだ。フレインは殺すつもりはなくとも、絶対に自分と味方であるセレジアと守ることが思考の中心だった。
敵は一瞬だけフレインの方を一瞥した。
その時、敵が一瞬にしてフレインに接近した。さっきまで使っていた《加速》とは比較にならないほどの速さ。フレインは敵の視線を感じた瞬間に警戒していたおかげで、敵の突進を《排他》で防ぐことができた。
しかし、圧倒的に《加速》された突進はフレインを吹き飛ばそうとする勢いだったが、フレインは《固定》と自身の両足でそれを耐えた。
「セレジア!」
フレインが叫ぶ。だがセレジアはすでに動いていた。
あえてかわしたり、いなしたりせず、敵のスピードを殺したフレインの意図にセレジアが気づかないはずがなかった。
動きが止まった敵の背後からセレジアが渾身の斬撃を繰り出す。
敵は右手に持つ刀でセレジアの攻撃を受けるが、力の入った斬撃は敵の排他空間をもエグる威力。
同時にフレインも握った銃を捨てると、ヴィーラを抜刀し、敵に対し居合を放つ。
敵の排他空間はセレジアの攻撃で弱まっており、フレインの全力の《侵食》で敵の体に届くかというところで、ヴィーラの刀身を左手で握られ受け止められる。
「くっ……2……」
フレインは苦しい声を漏らしながら、必死にヴィーラを敵の左手ごとぐっと押し込む。
敵の左手から血が溢れて刀を伝う。刀を握る力は尋常じゃなく強かった。それは敵が身術《強化》により筋力を強化していることを示していた。
2人で敵をはさみ込む形になっているのにもかかわらず、フレインは苦しい表情を見せた。
(あと……少し……なのに!!)
「フレイン!! そのままだ!!」
その声とともにダンテが現れた。