ダンテ行方不明 ⑤
フレインは山頂付近から銃声がした方向を見た。ぱっと見てもダンテやエイシェ国の兵士は見えなかった。
だが、説明できない緊張感をフレインは感じた。ジュリアは第六感と言っていたが、この感覚が外れた時のことを思い出そうとしてみても、出てこなかったから、案外そうなんだろう……とフレインは思った。
その時、フレインの目に動く人影が映った。
黒い戦闘服に一振りの日本刀。エイシェの戦闘員に間違いなかった。
渋い顔持ちのおじさんのような戦闘員は、100mほど先、高低差は10mほど下にいる。
フレインは愛刀、ドツ・ダラ・ヴィーラを静かに抜刀し、《加速》を発動させて、敵に急接近する。刀身をまっすぐ突き立て攻撃するが、加速に気づかれて、すかさずかわされる。
敵の《加速》も速かった。フレインが目で追えなかった。
フレインは左手で銃を抜き、敵に銃弾を放つが、撃てども、全てをかわされてしまった。
敵はかわしながら速度に乗り、そのままの勢いを保ちながらフレインに向かってくる。
敵の日本刀がフレインを襲うが、ヴィーラで受け止めた。
敵は特に表情を出さずに、ギリギリと強い力で刀をを押し付けてくる。フレインは敵に長い経験を持つことを感じた。
その時、敵の背後に桃色の光が走った。
「!?」
敵は間一髪のところで攻撃をかわし、距離をとった。
「大丈夫でして?」
セレジアが合流した。でもダンテの姿はいまだに見えない。
「ありがとうセレジア」
「どうってことありませんわ」
「敵、速いよ。それに動術のほかに身術もあるかも」
「了解しまして」
セレジアがじわじわと敵の方へ歩いていく。フレインも一度ヴィーラを納刀し、銃を両手に握り敵に向ける。
敵はセレジアの気迫に負けじと、一瞬で《加速》し、《排他》をしながら体を衝突させるが、セレジアも同様に《排他》を発動させ、それに耐える。
セレジアは愛刀ネリンで敵に連続的な斬撃を繰り出す。流れるように力強く予測しづらい攻撃に、敵は刀だけでなく《排他》でも斬撃を受け止めざるをえなかった。
フレインもセレジアの攻撃の間に銃撃を放ち、敵の排他空間を攻撃し、消耗させていた。
敵は瞬間的に《加速》し、セレジア、フレインたちから距離をとる。
「なんだよセレジア!! ちまちましてねえでさっさと首でもナニでもハネてやれや!!」