ダンテ行方不明 ③
フレインはエイシェの戦闘員の斬撃や銃撃をかわしながら、反撃のチャンスを伺っていた。
敵の攻撃のしっかり目で捉えるフレイン。表情も行動も冷静で、落ち着いていた。
黒い戦闘服を身にまとった敵兵は男性。刀術と身術を使っていないことから、フレインは動術士であると予想した。
敵の刀は容赦なくフレインを攻撃するが、フレインからしてみれば、細かな隙が散見された。
敵が刀をまっすぐ、フレインの胸部へ突く。攻撃をよく見た後、フレインは体をさっとかわし、《侵食》を発動させ、両手に持った愛刀、ドツ・ダラ・ヴィーラで敵戦闘員の排他空間ごと右手首を切り裂いた。
「……1」
フレインは口にすると、敵兵の持つ刀を、ドツ・ダラ・ヴィーラで打ち付けた。刀はあっさりと地面へ叩きつけたれ、フレインはさらに《加速》を使い、刀を30mほど遠くに飛ばした。
敵兵は、勝機がないのをさとり、《加速》を発動させ、すぐさま姿を消した。
「はあ…………こちらフレイン、敵戦闘員が逃走し戦闘終了。相手の手首を……斬って、刀を奪ったので、戻ってはきません」
「…………本部了解」
聞こえてきた音声はジュリアのものだった。
「……えぇ…………」
フレインは妙なやりづらさを感じた。
セレジアはフレイン同様、エイシェの敵戦闘員とつばぜり合いになっていた。敵は男性、20歳位に見える青年だった。
「こんなところまで!!」
敵は顔をしかめながらセレジアに言った。
セレジアの表情は冷たかった。というより、しらけていた。青年は刀術を使ってため、刀術士と判断したセレジアは、刀を交わしながら、青年の剣術が大したものではないと感じたためだった。
「あなたの手筋、退屈ですわ。わたくしも急いでますので」
そう言った瞬間、セレジアは敵の刀を、刀で下にぐっと押し付け、さらに横へ移動させることで、敵の重心を強制的に崩す。セレジアの容赦ない力に、敵の体はセレジアにいともたやすく操られた。
重心が崩れたところに、セレジアの左足が敵の足を払い、敵は地面へ崩れた。
そして、隙だらけの敵に対してセレジアは鋭い斬撃を真横に放つ。敵戦闘員はまっすぐ鎖骨下を深く切り込まれた。
「ぐっ…………」
敵兵は激痛のあまり、声を出すことができず、その場で動かなくなった。目をカッと開き、意識はまだあるが、湧き出る大量の血が黒い戦闘服を赤に染めていく。
セレジアは傍目に敵が戦闘不能であることを確認し、背を向けた。
「こちらセレジア。敵は戦闘不能。ダンテ少尉の捜索ポイントへ急行します」
「……本部了解」
イヤホンからジュリアの声が聞こえてきた。
「……ジュリアさんですの?」
「ジュリア・ブール大佐と呼べ」
「随分短い期間に昇進しまして……。5階級特進おめでとうございますわ」
「俺が死んだみてえじゃねえか!!」