動く人形 中編9
<同時刻>
兵舎棟の近く、フレインの部屋が窓から見える本部棟の一室にアウラ・ピインはいた。
黒い迷彩柄の双眼鏡を顔の前に構え、じっとフレインがいなくなった部屋を見張る。
「……なんか、イケナイことしてるみたい……」
その時だった。
フレインの部屋のドアが開き、ジュリア・ブールが現れた。
「ビンゴです。先輩がた」
アウラはデスク上の人形を動かすジュリアの行動を双眼鏡の機能で撮影する。静止画で4、5枚記録し、部屋を出て行くジュリアを確認する。
<10分後、アウラの部屋>
「よかった……」
フレインはアウラが撮った画像を確認してつぶやく。
突然、アウラはブルッと身震いをした。
「どうしたの?」
「え……わかりません……なんか寒気が……」
「大丈夫?」
「はい、問題ありません。でも、これからどうするですか?」
「それは…………」
フレインは少しだけ考える表情を見せた。
<同時刻>
俺はそのまままっすぐ自室へ戻ったが、フレインが部屋に戻る気配はなかった。
「またアウラのところか? 今度あいつの部屋にもカメラ仕掛けようかな」
退屈になったからベッドの上でゴロンと寝転がった。
「最近は緊急だったり、重要な任務がねえから暇だな〜」
そうぶつくさ言ってたら、睡魔がやってきたから、そのまま目を閉じた。
<2時間後、昼過ぎごろ、ジュリアの部屋>
うっすらと目を開ける。夢は見てなかった。
最初にフレインの部屋が映るモニターに視線を向ける。鶏野郎の姿はない。人形も俺が動かした時と位置は変わってない。
「んだよ……、はよ戻って……こ……」
おれの部屋の中に違和感を覚える。
デスク上のセレジア人形がいなくなっていた。
「あ? なんであのドリル人形がねえんだ?」
その時、モニターに人影が映った。フレインだった。
「やっときやがった」
モニターに映るフレインはフレイン人形がまた動いたことに気づき、動きを止めた。
俺はベッドから降り、モニターへ近づいた。その時に、床に落ちてるセレジア人形が目に入った。
俺の体が停止する。思考も停止する。
ジュリアの部屋内はモニター内も含め、ピタッと動きを止めた。
「……ダンテの仕業か…………? それともフレインか!? セレジア……はなさそうだが……」
モニターのフレインも明らかに動揺していた。
「まあ、なんかの拍子で落ちたんだろ……。人形が動くわけがねえ!!」
俺はそそくさと部屋を出て行き、ダンテとちょっくら訓練でもしようかと誘いに行った。
あん? 怖がってねえよ!! ダンテが動かした可能性もあるから牽制するためだよ!!
だが……