動く人形 中編8
フレインはアウラの方に視線を移した。
「え!? 私ですか!?」
「おねがい!!」
「わ……わかりました……」
<1時間後、フレインの部屋>
フレインはドア近くに落ちていた人形の首元をそっと摘み、デスク上へ戻す。
その後フレインは戦闘服を着替え、ラフな格好になるとベッドで横になった。
任務の疲れで今にも寝落ちそうだったが、アウラが協力してくれる、「立証」のために、10分間だけ、睡魔を我慢した。
そしてフレインは「人形が気になって寝られない」と言った風に、ベッドから起き上がり、その格好のまま部屋を出て行った。
<何日か前、ジュリアの部屋>
体が重い……。俺は……何かから逃げている……。走っても走っても足はのろのろとしか動かない。
後ろから……二つの物が追いかけてくる……。物? 者? いや……あれは……
人形だ!!
「は!!」
ベッドの上で目をさます。まだ外は薄暗い。
机の上に置いてあるフレイン人形とセレジア人形に目を向ける。二つは俺の方を見つめ、ただじっとそこにあった。
「なんか不気味になってきたな……こいつら」
ん? おっと、ネタが一つ浮かんだぞ?
まあ、言わずともわかるよな?
●今回の作戦
「フレインの部屋にフレイン人形を仕掛け、あたかも人形が勝手に動いてるように見せて、脅かす」
『この番組はターゲットに人道的なドッキリを仕掛けて、それを撮影、編集し、非公式電波に乗っけて放送するという形でお送りいたします』
<フレインが寝たふりをして部屋を出て行ったあと>
「あ? あいつどこ行ったんだ? ま、いっか……人形動かしてくるか」
俺はフレインが部屋から遠ざかったことを確認して、すぐさま直行する。
もう何度も開けた部屋の鍵をたやすく開け、すっと中へ入る。
デスク上にあった人形をすぐ下の床へ落とすと、そのまま部屋を出て、鍵を閉める作業に入った。
「……開けるのは簡単だが……閉めるのはなかなかどうして……」
カチッ
無事に施錠されたのを確認すると、そそくさとその場から消えた。