動く人形 中編7
「失礼ですが、フレインさんいらっしゃいまして?」
扉の前にいたのはセレジア・アンデルスタだった。
「セ……セレジア先輩! どうも。先輩ならここに……」
視線をフレインへ向けるアウラ。セレジアも部屋にいるフレインを視線に入れる。
「なにかありまして? お邪魔しても?」
「どうぞ、どうぞ」
セレジアがアウラの部屋に入り、フレインの側へやってくる。
「フレインさん? 探しましたわ。……どうかされまして?」
「…………あ……セレジア……」
フレインが虚ろな目をセレジアに向ける。
「それがですね……」
アウラがセレジアの後ろから話しかける。そしてこれまでの経緯を話し始めた。
「だいたい理解できましたわ」
フレインの傍で立っていたセレジアは、フレインの真正面へ座り込む。綺麗な正座だった。
「フレインさん? 聞こえていらして?」
「……………………え? う……ん……」
「これから一つずつ確認していきます。思考を停止せず、冷静になってお答えください」
「はい……」
「ビデオカメラで撮影した映像は途切れていて、その後また録画されてる」
「……うん」
「それは人が録画ボタンを押し直したからに決まっていますわ」
セレジアはさらに続けた。
「フレインさんの部屋に勝手に入れる人なんて決まっていますわ。それにフレインさんが自室で寝ている時、人形が動いたことはないのですよね?」
「え? ……うん」
「でも、部屋を出て戻った時は動いてる」
「……うん」
アウラは2人のやりとりを静かに見守っていた。
「それは人形を動かした犯人が、寝てるフレインさんの近くにいると、目を覚ますことを知っているからですわ」
「最初にジュリアさん、ダンテさんが人形の存在を確認した時、ジュリアさんは一回帰って、戻ってこられたのですよね? 結局人形を引き取ることはなかったのですから、それはフレインさんに『人形が動いた』ってことを暗に伝えるためだったのでは?」
「……………………」
フレインは思考が巡ってきたのか、深く考えるような顔つきになった。
「落ち着いてきまして?」
「うん……。さっきよりは」
「それなら、ジュリアさんが犯人であることの立証方法も自然とわかってきまして?」
「うん、わかる」
「この見返りは、わたくしとの実践練習で良しとしますわ」
「えぇ…………戦闘って……能力戦? 剣術戦?」
「どちらもですわ」
「うぅ……………………わかった……」
「ありがとうございます」
セレジアは至極嬉しそうな顔で笑った。
「あの〜立証ってどうするんですか?」
アウラが2人に聞いた。
「私以外にもう1人いればいいんだけど……」
フレインはじっとセレジアを見つめた。
「わたくしは結構ですわ。興味なんてありません」
「じゃあ……」
フレインはアウラの方に視線を移した。
「え!? 私ですか!?」
「おねがい!!」
「わ……わかりました……」