動く人形 中編6
「どうしよう……ちょっとわけがわからなくなってきた」
フレインは人形に近づくことなく、そのまま部屋を出て行った。
<5分後>
フレインはアウラからビデオカメラを借りるとそれをデスク含め、部屋の大部分がカメラに収まるようにキッチン付近にセットし、録画ボタンを押した。データ容量を考えても72時間は取れるようになっている。
「なんか……自分の部屋盗撮してるみたい……。ジュリアにも撮られてるのに……」
そんな苦言を言い、フレインはビデオカメラの小さなモニターを覗き込む。
デスク近くの床に落ちていたはずの人形がもう少し玄関側へ移動してるようだった。
「……………………」
頭が痛くなってくるフレイン。
フレインは頭を抱えながら簡単な荷造りを始める。作戦は2日後だが、今日初蟹基地へ向かうこととなっている。
荷造りを終えたフレインは、ビデオカメラがちゃんと録画されていることを確認して、
「どうか……ジュリアたちの仕掛けでありますように……」
と、一言つぶやいて部屋を出た。
廊下を歩いていると、ジュリアが食堂から出てくるところに遭遇した。ジュリアは爪楊枝で歯をいじりながら歩いていた。もちろん、口元を隠すようなことはしていない。外見だけは可愛い中学生くらいの少女なのに、やることなすことおっさんみたいだなとフレインは思う。
「な? フレインじゃねえか」
「こ……こんにちは」
「なんだ? 任務か?」
「うん」
「身の安全と敵の全滅を祈ってるよ」
「やめてよ……」
フレインはふとあることをひらめいた。それは、人形についてジュリアに嘘を言い、その反応を見るというものだ。
「人形のことだけど……あれから変わった様子もないから引き取ってくれない?」
フレインは悟られないようにジュリアの様子をまじまじと見る。
フレインのセリフを聞いたジュリアは少し、ほんの少しだけホッとしたように肩の力を抜いた。
「そう……か……。じゃあおめえの任務が終わったら取りに行くわ」
意外な反応にフレインは表に出さない拍子抜けした。
「……おねがい」
「んじゃまたな」
ジュリアはフレインと別れた。
「…………ジュリアじゃ……ない……?」
フレインは気持ちがもやもやしたまま任務へ赴くことになった。