動く人形 中編4
「俺の部屋に人形がなかったから……よ……。やっぱりこいつモノホンのオリジナルだ……」
「……………………えぇ……?」
「わからねえ……やっぱダンテか? この人形もやっぱ仕掛けがあるんじゃねえか?」
「セ……セレジアの人形は?」
「それはあった」
ジュリアの表情はいつもの余裕のあるものではなくなっていた。
「ダンテ自ら企画してお前やセレジアにドッキリなんてしかけるはずねえからなあ……。これはフレインをターゲットに見せかけた、俺への罠か?」
「ぜひ……引き取ってください!」
「やなこった!!」
「誰がやったかわからないの? この部屋……その……盗撮してるんでしょ……?」
「変な言い方すんなよ! 仕掛けとおめえの反応の撮影装置と言え!!」
「結局盗撮じゃん……」
「でも……あの映像は基本2時間経過して時点でデータが消えていく設定だ。だから見れたとしても2時間前の映像が限界だ」
「そう……」
「つうことで、この人形は任せる! じゃあな!!」
「え!? ちょっと!」
ジュリアは颯爽とフレインの部屋から退散した。
「えぇ……どうしよう……」
<フレインの部屋、2233時>
フレインは食事、入浴を済ませベッドへ入るところであった。
しかしながら、気になることが一つ。もちろん人形のことだ。
「…………」
デスク上の人形を横目で見つめ、ベット上ですぐにでも横になれる状態だが、心がぞわぞわして、寝る気になれないフレインだった。
だがフレインはこの人形に「危険」を感じていない。もしも感じているならフレインはここで絶対眠ることはない。
「はあ……」
フレインは一つため息をついて、照明を消し、床へついた。
体が重い……。私は……何かから逃げている……? 走っても走っても足はのろのろとしか動かない。《加速》を発動させようとしてもうまく発動しない……。逆に走る速度は落ちるように感じてしまう。
後ろから……二つの物が追いかけてくる……。物? 者? いや……あれは……
あの人形たちだ!!
一つは……過剰に巻かれた茶髪の髪が目につくセレジアの人形、そしてもう一つは……ニワトリのフードとニワトリの羽を身につけた……鏡の前でよく見る、見慣れた顔の人形……。
「は!!」
フレインはベッドの上で目をさました。まだ外は薄暗い。
「……………………」
フレインは悪い目覚めに嫌気がさした。
「悪い夢でも……こんな夢初めて見たかも……」
フレインは任務での戦闘中に敵を傷つけるたびに心がすり減っていた。たとえ敵兵であっても、味方が攻撃されていても、同じ人間に傷をつけることに罪悪感を大きく感じていた。
フレインはふと人形が置いてあるデスクに視線を向ける…………。