テスト本番 対アウラ 前編
フレインの部屋の前。奴が中にいるのは知ってる。俺は例の方法で鍵を開け、中に入る。
「おいフレインいるか?」
割と大きな声で言う。
フレインはいた。床の上で腕立て伏せをしていた。軽快な動きで、何往復も繰り返すその上下運動。フレインは俺に気づき、腕立て伏せをやめ、立ち上がり、俺の方を向いた。
いつもよりフレインの体が大きく? 太く? 厚く? 見える……。気のせいか?
そしてフレインは口を開いた。
「なんだてめえ」
「はっ!!!」
目が覚めた。
「なんだ…………夢か……」
なんだあのごりごりなフレインは……。ぼんやりとしか覚えてないが、目つきも汚物を見るような目つきで、どすの利いた低く、嫌悪に満ちた声だった……。
「変な夢だな……こっちが『えぇ……』って言いたくなっちまう」
『この番組はターゲットに人道的なドッキリを仕掛けて、それを撮影、編集し、非公式電波に乗っけて放送するという形でお送りいたします』
<テスト会場0844時>
今日はテスト当日の日だ。結局誰かとテスト勉強したのはあれ以来なかった。それぞれ任務やらなにやらあったしな。
ちなみに前回、ブーブークッション仕掛けの回は再生回数12再生と、超少なめだった。まあ、需要は……ないわな……。
テスト会場は30人くらいしか入らない小さな部屋だ。戦闘員はまだ俺しかいねえ。他の職員の方が多い。だって、能力戦闘員なんて軍全体で100人くらいしかいないんだぜ?(赤仮面等は除く) 10人も集まったら、戦力の集中になっちまう。集まること自体リスキー以外の何者でもない。
もしかして俺以外、能力戦闘員は来ないんじゃねえのか?
と思ってたが、見覚えのある奴が1人。
アウラ・ピインだ。去年腰を痛めて、ネタにされてる奴。噂によると腰の痛みは治ってないらしく、訓練途中に、ゴキッとやっちまうみてえだ。
「おい、アウラ。腰は良くなったか? あ?」
「お……おはようございます」
「でたよ、敬語。よそよそしいな!」
前にも言ったが、こいつはダンテと同期だ。俺の先輩にもなるわけだ。でもこいつ、ダンテに対しても敬語だからな……。
「テスト勉強はしたか?」
「はい……」
「落ちはしないよな?」
「はい……」
「自信はあるか?」
「はい……」
んだよ、なんかイライラするな……。この話し方……フレインと同じ匂いがする。
その時、部屋の扉が開き、ダンテが入ってきた。
「んだよ、ジュリアも、アウラもいんじゃねえか」