テスト……勉強……? 対フレイン 前編
5分くらい歩いてたら、見覚えがある背中が見えた。
「…………フレインか?」
俺は小さな声でつぶやいた。
明らかにあの後ろ姿、フレイン・イクスクル本人だ。任務中じゃなかったのか?
俺は腰に差してるゲンチアを鞘をつけたまま手に持ち、構える。ここで抜刀しなっかったのは、抜く時の音で、フレインに感づかれる可能性があったからだ。
目標は20mほど前方。俺は恐る恐る近づいた。
(10mまで近づいたら《加速》しよう)
そう思いながら足を進める。
15mまで近づいた。
その時フレインはスッと後ろを振り返った。もちろん俺の姿が奴の目に映る。
「えぇ……何やってるの……」
「あ? これか? ちょっとした素振りだ。素振りは基本って言うだろ?」
「……………………」
俺は少しおどけた感じで言ったが、フレインは俺がガチで襲おうとしたことに感づいていた。
「で? しばらく任務じゃなかったんか?」
「作戦が早めに片付いたから……」
「ほう……。で、何人殺したんだ?」
「殺してないよ!」
「何人傷つけたんだ?」
「……………………5人」
フレインは作戦時に、傷つけてしまった敵兵の数を数える癖がある。それは戦闘の時に声がでるからはっきりわかる。軍の戦闘員なら誰でも知ってる有名なことだ。
「数える癖は治んねえみたいだな」
「うん…………」
「上からは直すように言われてんだろ?」
「そうだけど……」
「別に責めてるわけじゃねえ。直したくねえもんは直すな。そのままでいい」
「…………ありがとう」
「ん? 今ありがとうっつったな? じゃあちょっと勉強に付き合え。セレジアの部屋だ」
「えぇ……。ありがとうにどういう意味があると思ってるの!?」
「どうせお前もテスト受けなきゃいけねえんだろ!!」
「そうだけど……」
「今セレジアの部屋でダンテが飯作ってっから、一緒に食おうぜ!」
「……………………」
懐柔は成功した。
<セレジアの部屋、1410時>
俺とフレインはセレジアの部屋に到着した。
「帰ったぞ。飯4人分で頼む」
「……おじゃまします」
「あ? なんでフレインまでいんだ?」
「『秒で片付けた』だとよ」
「言ってないよ! そんなこと。普通に早く終わっただけ」
フレインはダンテの料理する姿を見るために足を止めた。
俺はすたすたとセレジアの方へ行き、フレインに気づかれないように、さっきのブーブークッションと俺が座っていた座布団をさっと取り、ダンテが座っていたデスクの椅子にクッションを敷き、その上から座布団を乗っけた。
セレジアが俺の方に視線を向ける。「またですの……」って言いたげな眼。まあ、声を出さないあたりは空気を読んでくれてる……というのかな?
俺はさっきの場所にあぐらをかいて座り、勉強の続きをする。もちろん全神経がフレインの挙動に集中してた。
フレインはなかなかこっち側にこなかったが、3分後にやっとこっちに来た。