絶対に笑ってはいけない軍 ボタン
<セレジアの部屋、大晦日1200時>
セレジアは任務終わりで、自分の部屋に帰宅した。
部屋に入ると違和感を覚えた。一番の目立つのは、ベドの上にある、小さなボタン。クイズ番組で押す様な形のボタンであった。さらにそこには、「絶対押せ」と書かれていた。
「なんですのこれ?」
セレジアはベッドに近づき、様子をうかがう。
そして、恐る恐るボタンに人さし指を伸ばし、ボタンを押した。
「デデーン。セレジア、アウト」
急に部屋の中に流れる放送。声はジュリアのものだった。
すぐに、部屋のドアが開く。出てきたのはもちろんジュリア・ブールだった。
その格好はいつもの戦闘服ではない戦闘服と、顔を隠した覆面に真っ赤なベレー帽。手には柔らかそうな竹刀の様なチャンバラ棒。
「また、流行りのことを……。その格好もう少しなんとかできなかったですの? 本当の迷彩服ではないのですね」
セレジアは手に持っていた刀を抜く。
「うるせえ! なかったんだよ!! いいからおとなしくケツ出せ! ケツ!!」
「お断り致しますわ」
ジュリアはチャンバラ棒で、セレジアに威嚇攻撃をするが、相手が相手のため、おどおどしながらのぎこちない動きだ。
ジュリアは惜しみもなくすぐに部屋を退散した。
「嫌な予感がしますわ……」
セレジアは自室の部屋の鍵を締めた。
<フレインの新しい部屋、大晦日1242時>
フレインは新しい部屋に荷物をほとんど運び終わったところだった。4階なのは変わらないが、近くであったセレジアの部屋とは少し遠くなった。
最後の荷物を新しい部屋に持ってきたフレインは、ある異物に気がつく。
床に置かれた一つのボタン。
「絶対押すな」と書かれていた。
「えぇ……。あの2人……だよね……」
恐る恐るボタンに近くフレイン。もちろん《排他》を発動させている。
部屋のど真ん中に置かれてるそれは、フレインの引っ越し作業の邪魔でしかなかった。
フレインはゆっくり手を伸ばすと、ボタンを押さないように持ち、場所を移動させようとした。
その時……。
「カチャッ」
「え!?」
ボタンが押ささった音がした。明らかに自動的に押ささる様に細工がされてあった。
「デデーン。フレイン、アウト」
音量の大きい、いきなりの放送にビクッとなるフレイン。
さらに、部屋のドアを開けて出てきたのは、見慣れないアーミー服を着たジュリアだった。
「えぇ…………年末だけどさ……この番組って収録自体は年末前でしょ!?」
「んなの知るかよ!! 視聴者が見るのが年末だ!! 即興だから仕方ねえだろ!!」
ジュリアは、手にもった柔らかそうなチャンバラ棒を振り回して、フレインに威嚇するが、フレインも愛刀「ドツ・ダラ・ヴィーラ」を抜刀し、威嚇し返す。
ジュリアはすぐに部屋を出て行った。
「…………嫌な予感がする……」
フレインは部屋の鍵を締めた。
『この番組はターゲットに人道的なドッキリを仕掛けて、それを撮影、編集し、非公式電波に乗っけて放送するという形でお送りいたします』
 




