刀奪い 対セレジア 後編
「てめえ! ばらしやがったな!」
俺は叫んだ。
「いいんだぜ? 今ここで戦闘をおっ始めても。 刀のない術師なんて怖くもなんともねえ」
ダンテが付け加える。
「どうかされました?」
セレジアが風呂場から脱衣所へやってきた。フレインと同様体にバスタオルを巻いてるが、髪が濡れていて、泡がついていた。
「よおセレジア……。刀は預かるぜ? ネタばらしされたんなら、いい顔は撮れねえよなあ……。いっそここで戦闘をしてみるか?」
「またドッキリですの? 懲りませんわね……」
「髪を斬られたくらいでか?」
「髪? あれは首を落としたと解釈してほっしかったですわ」
「介錯だけに……か? ははははは!!! おもしれえジョーク言うじゃねえか!」
セレジアは両肩をすくめた。「話が通じませんわ……」とでも言いたそうな表情だった。
「まあ、刀のない二人に脅威は感じねえよ!」
セレジアはいきなり歩き出した。ロッカーの方、つまり俺たちの方向ではなく、脱衣籠の方へと向かっていった。
「おいおい、この状況でお着替えか?」
俺はセレジアを煽る。
その時、一瞬フレインの表情が変わった。
なんというか、あることを「察した」表情を一瞬だけみてとれた。
「…………」
そしてセレジアが手に取ったのは、「刀の柄」だった。刀を握る部分、刃以外の部分だ。
「どなたが刀が無いなんて言いまして?」
セレジアが右手拳の親指人差し指の方を、左鎖骨付近に当てる。そしてゆっくりと拳を体から離すと、そこから現れたのは一本の刀だった。
「えっ…………」
俺は一瞬頭が真っ白になった。
「は……?」
ダンテも混乱してる様子だった。
セレジアは体内から出現させた刀に、持っていた刀の柄をカチャッとはめ込んだ。桃色に染まっていく刀身。
「この刀、ネリンと言いますの。お二人には初めてお見せしますね」
「聞いてねえぞ! おめえ《内包》もできるのかよ!!」 ※刀術の7種の能力については「ガラス割り2 対セレジア 前編」を参照
「フレインは知ってたな!!」
フレインがフッと視線を逸らす。
俺とダンテはすかさず「ゲンチア」と「エイロ」を抜刀する。
奪ったセレジアの刀はダンテが左手で持ってる。
「行きましてよ、ネリン……」
セレジアはそう言うと、一瞬で俺たちに近づき、戦闘が始まった。
いつもよりセレジアの動きがいいのは気のせいか……。
俺とダンテが、必死にセレジアの斬撃に対処していくが、速さについていけなかった。場所が狭い、ダンテが片手を塞がれてることが災いして、うまく戦闘ができなかった。訓練場で、俺ダンテVSセレジアフレインなら、勝ったのに!
セレジアはダンテが左手で握る刀を掴み上げ、ひねり、グッと引っ張り、奪い返した。
そして、その刀をフレインに投げ渡す。
「フレインさんもお手伝いしてくださる?」
「えぇ…………うん……」
フレインは迷うことなく抜刀した。
「ちっ……2対2かよ! 部が悪い、撤収!!」
俺とダンテは脱衣所から撤収した。
だが、フレインが追っかけてくる。
「待って!! ヴィーラ返して!」
「だから奪いに来いって!」
「じゃあ後で奪いに行く!」
「おう! 待ってるわ!」
俺とダンテは廊下を曲がった。
フレインは数歩廊下を出たが、自分がバスタオル1枚だったことを思い出し、急停止後、脱衣所へ戻った。
<脱衣所内>
「逃しまして?」
「うん……でも、後で二人を襲撃するつもり……。その……」
「いいですわ。お手伝いいたします」
「……ありがとう」
セレジアとフレインの共同戦線ができあがった。
次回、「フレイン、セレジア襲来」